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最終篇第三章 “兄弟が背負う哀しき因縁”
霧が包む世界
しおりを挟む「ヒャハハ……勘違いすんなァ。今のは只の反射だァ…テメェの刃じゃ俺を斬れる事はねェんだよォ!!」
アークの言葉は、一種の煽り。
其れを理解していたノアは更なる速力の向上
を見せながら同じ様にアークの肩付近を狙い
続けるがアークは其処から鎌を振るってノア
の一撃を弾いて行く。
速力はノアが圧倒的なのだが、アークはノア
の狙う箇所が解っている。
だからこそ、視界からノアの姿が途切れる時
に既に鎌を振るい始めるからこそ間に合う。
「だとしたら、此れならどうだ…?」
いつしか、訪れる其のタイミング。
ノアが狙いを変えてアークの背後を取った。
そして薙ぎ払われる刃の行方に飛び散る鮮血
がノアの視界に捉えられた。
其れは、アークの硬力をノアの速力での衝突
のチカラが上回った事を意味していた。
背中を斬られたアークは不敵に笑みを浮かべ
振り返ると共に鎌を強く振り切った。
しかし、完全にヒット&アウェイの戦法での
戦いに徹していたノアは簡単に躱す。
「あァ……ヒャハハ…そうこなくちゃよォ…待ってたぜ……テメェが俺を斬り付ける此の時をよォ……やっと、本気でテメェを殺しに行けるっつう疼きを解放出来る…ッ!!」
斬られたアークの反応は、ノアの想像した物
とは余りにかけ離れた物であった。
「疼き…隠されしチカラの事か……」
「あァ…此れでおさらばだァ…次にテメェが俺を視界に捉える時が……此の戦いの終焉の時だァ……ノア……ッ!!」
其の言葉と共に、アークの姿が消えて行く。
消えて行くという表現よりも正しいのは其の
姿が“霧”に紛れて見えなくなるというモノ。
霧に包まれた世界の中でノアは足を止めた。
そして、左右前後を見回すが、其の行動自体
に意味を為さない事を理解した。
「前後左右、総て霧か……何も見る事が出来ない様だ…」
何も見えない世界に、声が轟く。
「ヒャハハ…あァ…そうだァ……此のチカラは俺の固有特性……“霧隠”よォ……。霧に塗れた世界じゃテメェは俺を見る事すら叶わねェ。だったら意味がねェよなァ……テメェの其のチンケな速力もよォ……ッ!!」
何処から聞こえて来るのかも解らないアーク
の声に、チカラの内容を理解したノア。
其れと同じ瞬間だった。
ノアの背中に突如として痛みが走る。
当て付けの様に斬り裂かれた背中から多量の
血が噴き出すと、其の方向に刀を突き出した
ノアだったが空振りに終わった。
「ヒャハハ……鎌をテメェの身体に密着する様な斬り方はしねェよォ……テメェは此れから味わうんだよォ……何処から斬られたのかどんな攻撃で斬られたのかも解らず斬り殺される死神の恐怖をなァァ!!!!」
ノアは、唇を噛むと現状が余りにも自身には
不都合が多いという事を理解した。
しかし、刀を構えて戦う姿勢を見せる事しか
出来ない事も同時に悟ったのだ。
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