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最終篇第五章 “太陽を奪う者”
絶望のドン底
しおりを挟むそして、其の瞬間が訪れてしまった。
「漸くだ…目障りだった其のチカラも…もうテメェに応えてくれる事はねェよ…」
言葉と共にロストの目が開く。
其の視界に映ったモノとは、刀を振り切ろう
としたモノの閃光のチカラの消失にフリーズ
してしまったロードの姿だった。
「…う、ウソ……だろ…?」
ロードはぶらりと腕のチカラが抜けると構え
を解いた刀もまた足元に向けて落ちる。
そして、身体を震わせながら表情を暗くして
ロストを見上げて見るが、其れが精一杯。
「お、お待ちくださいっ!!もう一度……閃光のチカラを……っ!!」
シェリーは同じ様に“付加”を発動する。
しかし、桃色の閃光はロードの身体に纏う事
を許されず直前で弾かれてしまった。
「そ、そんな……」
理由が解らず膝から崩れ落ちるシェリーの姿
を一瞥したロストが口を開く。
「無駄だ…一度奪われたチカラを再度与えようとしても干渉は許されん。また、スタートラインに逆戻りだ…俺に波動の量で打ち勝つしか道はねェって所へな」
ロードとシェリーに現実が突き付けられる。
閃光のチカラで得た神速はあの時点でロスト
の反応速度を明らかに超えていた。
光が見え掛けて居たのだ。
其れが閉ざされたからこその絶望だろう。
「難儀なモンだな」
「……なに?」
「光は見えたろ、さっきはよ。其れが未来とリンクして閉ざされた…そして、激る胸の炎すら今のテメェには感じねェ」
ロストの言葉は皮肉で溢れていた。
未来への希望を閃光のギフトと。
激る胸の炎を業火のギフトと。
ロストが奪い去っていたモノに敢えて掛けて
ロード達に言葉にして伝えたのだ。
ロードとシェリーから何かが欠けて落ちた。
其れは絶対的なロストの強さから来るモノ。
立ち向かって行く闘気と言えば正しいか。
夢に向かって走る原動力と言えば良いか。
正しく表す事は不可能だろう。
其れでも欠けて落ちた何かを感じたロードと
シェリーが共通して得た感情。
其れはーーーー。
『此の男には勝てない、という現実』
唯、其れだけだっただろう。
ロストの大刀が振り上げられる。
大刀が届く距離では無い間合いすら目の前に
感じる程の恐怖と絶望。
其れが大刀を振り下ろすと共に蠢く暗黒色の
闇となって具現化を始めた。
其の闇は、揺蕩うだけでは事知れず。
確かな質量を持って、倒れる気力すら失って
いたロードを天空天守の地へと堕とす。
雪崩れ込む闇にロードが押し潰された。
「ぅあ……ッ……ろ、ロード様ぁぁぁ!!!」
悲痛なシェリーの叫びも届かない。
闇に呑まれたロードは大量の血を流して其の
地に只、倒れ込んでしまっていた。
「総てをへし折った……其の儘、楽に…無へと還れ……運命を背負わされた哀しき王子よ…」
天空天守に冷たく言い放たれたロストの言葉
とシェリーの涙ながらの叫びが響き渡る。
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