RISING 〜夜明けの唄〜

最終篇第七章 “夜明けの唄”

全土に流れる号外

其の号令は、とある街から始まった。

眠りの街ロジカルテスタの本町の支部に滞在
していたとある男がストラーダからディルへ
降りた命を死蜘蛛狂天ソフィアから託されて
其の行動を取り始めた。



「号外ーーーッ！！号外だよーーーッ！！」



眠りの街を起点に全土に散らばり準備をして
いた死蜘蛛狂天の面々ととある新聞社が手を
組んで此の号外をばら撒き始める。

内容は主に五つ。

一つ目は、同盟軍と政府軍の戦争は苛烈な迄
の戦いの末に同盟軍が勝利した事。

二つ目は、ケーニッヒ王家が収める王政から
民が政治に関わる制度への変更。

所謂、王政脱却である。

三つ目は、生まれで決まる位を打破し、国民
一人一人に戸籍を与え市民平等の宣言。

四つ目は、鎖国制度の撤廃を起点に国民個人
に対しての商売の自由を約束。

五つ目は、総てを終えた後での国民投票から
成る人選の末に新たな政治の中枢、“内閣府”
を設立するというお触れ。

此れを以てケーニッヒ王家の統治の中に居た
プレジアは、民政の国へと生まれ変わる。

其の号外がロードとも縁を持ち、死蜘蛛狂天
ソフィアの兄で情報屋の顔も持っていた記者
サバネ・アインプテラの手で国にばら撒かれ
期待と不安を声にして国は沸き立った。



始まりの街コミンチャーレ
長屋町“オーシュウ”



「ロードさんが勝った……やったね、シャーレ兄ちゃん……此れで豪族と呼ばれる奴等の支配に悩む人達が居なくなる…」



海辺の桟橋に座り込む少年ケーシー。

橙色の服を纏い、青龍刀を腰に差した少年は
太陽を見上げて、笑みを浮かべた。



風の街ヴェント
風車の町“ロジャーズグリフ”



「ぐもおおおお、し、心配しておったわ…ようやった、ようやったぞ…ロード君」


「もう、父ちゃん。僕は最初から言ってたじゃん、ロード兄ちゃんが負けるワケないってさ、だってロード兄ちゃんは僕らのヒーローなんだから」



壊れた風車の前で涙を流し肩に掛けた手拭い
で目元を押さえる父ゲイツの肩を叩きながら
決着を知ったロニーは笑う。



砂の街コルドデザート
オアシスの町“ダフマ”



「フィオナ…決着が着いた様です。同盟軍の勝ち、即ちポアラさん達の勝ちですよ」


「ほんとっ！？嘘じゃないよねっ！！やった、やったああ！！ポアラお姉ちゃんってばやっぱりスゴいっ！！また会いたいなあ…」



戦争が始まってからというもの、部屋の中に
閉じこもっていた娘のフィオナに戦争終結と
其の勝ちを知らせた父ラムス。

笑顔のフィオナのお腹の音を聞き、飯を提案
するラムスにも安堵の表情が戻った。

此の様に、死蜘蛛狂天ディルとストラーダの
二人が練っていた策に依り、ケーニッヒ王家
が最後に残す“意志”が力強くプレジア全土へ
広がって行くのだった。

総ての体制が切り替わる。

此れを以て、ストラーダは此処からが大変と
宣言した事を知る事が出来た。