『朱里ちゃんの戯言』短編小説集

健野屋文乃(たけのやふみの)

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16 きんいろのかぎの章

女侍と鏡の世界

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中学2年になると、なると言う中2病に我々は成った。

その日は、とても暑い夏の日の夕方だった。
幼馴染の少年は頑張って自転車を漕いだ。
きっと幼馴染の少女の胸が、背中に当たっているためだ。

「それにしても暑い」
自称女侍のくれないを名乗る拙者と、幼馴染の親友・自称陰陽師の千佳太ちかたくんは、冷房の効いた回転焼き屋に逃げ込んだ。

剣道の竹刀袋をテーブルに立てると、ソーダアイスと回転焼きを頼んだ。

店のお婆さんは、
「もう閉店だから、残りの回転焼き7個も食べていくかい?2個分で良いけど」
と。
「えっいいの?それじゃあ7個下さい」
「でもね、この7個の回転焼きの1つに、外れがあるんのよ」
「ロシアン回転焼きですか?」
「そうだね」
「外れには何が入っているんですか?」
「カスタードクリームだよ」
「それじゃ外れじゃないじゃないですか」
「このクリームを食べるとね、鏡の世界に行ってしまうんだよ」

自称女侍の拙者は、店にある大きな鏡をみた。
全身鏡だ。

「またまた~」
「止めとくかい?」
「いや行きます。拙者は女侍なもんで、千佳太くんもやるよね」

自称陰陽師の千佳太くんは、店を見回した。

そして謎な印を結ぶと、拙者の耳元で囁いた。
「紅ちゃん、あのね、ここは何かあると、ぼくの式神がそう告げてるんだけど」
彼の式神は凡人には見えない設定らしい。
もちろん拙者も見た事はない。

しかし、拙者は女侍だ!
「それならなおさらだ、引けぬ!」

出された7個の回転焼きは、普通に美味しそうな回転焼きだった。
「それじゃあ、拙者からいくね、どれかな~」
拙者は真ん中の回転焼きを手に取って、口の中に押し込んだ。

あっ!クリーム!

そう思った時には、拙者は鏡の中に閉じ込められていた。

しまった!

あの全身鏡の中だ。お婆さんがわたしを見てニヤリと笑った。
さらに衝撃的だったのは、千佳太くんが拙者を助けようともせず、残りの回転焼きを食べている事だった。

おい!

千佳太くんは、回転焼きを食べ終わると、店を出て行ってしまった。

千佳太くん!

何てこった!何てこった!何てこった!

拙者が困惑していると、
「紅ちゃん、だから言ったでしょう」
と千佳太くんの声。

いや違う!これは鏡の中の世界の千佳太くんだ。
鏡の中の千佳太くんは、
「ほら時計の針が反対に回ってるだろう。ここは鏡の世界、そのうち慣れるさ」
と笑った。

驚いたのが、鏡の世界の千佳太くんは、ちゃんと式神四鬼を従えていた。
始めて本物の鬼を見た!
本物感が半端ない!

もしかしてと思い、剣道の竹刀袋を開けると、美しい日本刀が入っていた。
こちらが本物の世界で、あちらが偽物だったのかも知れない。

そして何気に、こちらの千佳太くんは男前だった♪
すべて世はこともなしだ♪
           
          

           完
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