『朱里ちゃんの戯言』短編小説集

健野屋文乃(たけのやふみの)

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16 きんいろのかぎの章

エルフの民族大移動と赤煉瓦のカフェ ~それは苦めのビターチョコレートな出会い~

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ぼくは異世界に来たわけではない。世界がファンタジー化したのだ。


エルフやらドワーフやらが、人間世界に突如やってきたら、そりゃー戦争になるよね。

文明の衝突って奴だ。

エルフやドワーフは、北極圏から南下を始めた。

ゲルマン人の大移動を越える規模だ。


そして魔法対科学の戦いが始まった。


世界は、そんな状況なのだが、ぼくはめっちゃ可愛いエルフに出会ってしまった。

最前線の街で。


         ☆彡



「この人間め!良くもわたしの裸を!」

その声でぼくは目覚めた。

そこには半裸のエルフが弓を引いていた。

エルフは躊躇することなく矢を放った。


それはかなり凶暴な目覚まし時計だ。


放たれた矢をぼくは素手で掴んでしまった。

ぼくにそう言った能力があったとは思えない。


それは1億年に1度起こるかも知れない、奇跡だったのかも知れない。


何故ならぼくは、世界がこんな状況にも関わらず、ゲームに熱中できるレベルのダメ人間なのだ。

そして矢を素手で捕まえる人間に、半裸のエルフは恐怖したと思う。

恐怖、そう吊り橋効果って奴?


ぼくらは恋に落ちた(自称)

現時点では、かなり危険な恋だ(自称)



「なんで半裸なの?」

今のこの空間では、推定猛者のぼくは聞いた。

半裸のエルフは、微かに良い香りを漂わせていた。

「良い部屋だし、お風呂にでも入ろうかなって、そしたら貴殿が」



要するに定住先なのか?

主要幹線道路から外れたこの地域だし、地形的に重要ではないこの辺りは、戦場からかなり外れていた。


そして、ぼくが住んでる家は、元は赤煉瓦のカフェでかなりお洒落だ。

センスの良いエルフなら、気に入りそうな物件ではある。

なのに、その物件に猛者っぽい奴が住んでいる。


エルフは相当邪魔な生き物を見る目で、ぼくを見た。

あれ恋に落ちたはずでは。


さらにぼくの飼い猫の猫は、エルフにすりすりしていた。

エルフの良い香りが気に入ったのだろう。そんな顔だ。


お前!裏切るの早すぎないか?


「貴殿は戦わないの?人類の為に」

「人類の為に?」

「同族の為よ」


ぼくはため息をついて、

「残念ながら、もう人類は、ほとんど残っていないよ。

人類文明を引き継いだのは、アンドロイド。機械だよ。

政府と呼ばれている物も、ほぼアンドロイドが支配していると言っても良い」

「・・・」

エルフは哀しげな顔をしただけで、その件について何も言わなかった。

そしてテーブルに置いてある銀紙に包まれた物を見つけて、

「これは?」

「ビターチョコレート、人間の食べ物だよ」

「食べて良い?」

「ちょっと苦いよ」


「苦いね」

「うん」



こんな感じに、幾つかの人種がエルフと合流したらしい。

      

         

         完 
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