『朱里ちゃんの戯言』短編小説集

健野屋文乃(たけのやふみの)

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17 あいよりあおい章

隣のクラスの天然ちゃんとの旅行記【下】

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「うっ」


次の朝、ぼくは誰かにお腹を蹴られて目を覚ました。

ぼくはすぐに目を覚ますと部屋を見回した。

誰もいない。


でもベットには、あのクレーンを握った熊のぬいぐるみが座っていた。

「・・・」

「・・・」

時計を見ると、まだ5分前だった。


「いいや早めに行こう」

ぼくは着替えると、部屋の外に出た。


どうしよう天然ちゃんと一緒に行くべきか?

と思いながらも、天然ちゃんの部屋の前に来てしまった。

そしてノックをしてみたが返事がない。

まあいいか。と後にしようとした時、誰かがドアのノブを動かした。

多分、熊だ。


そしてドアが開いた。

部屋の中にはまだ人の気配がした。

そして寝息の音も。確実に熟睡している寝息だ。


どうしよう。


考えている間に時間は流れていく。

ギリギリまでぼくは待った。


「仕方ないよね」


部屋に入ると、天然ちゃんがベットで熟睡していた。

Tシャツと短パン姿の天然ちゃん。

おへそが見えてドキドキした。


家から持って来たと思われる可愛い目覚まし時計に手が置かれ、多分、目覚ましを止めてまた眠ってしまったのだろう。



「天然さん、起きて、天然さん」

「う~ん」

「天然さん、起きて、天然さん」

「う~ん」


このままだと、ぼくも遅刻だ。

放置するか?

誰も責めはしないだろう。


はあ。


ぼくは天然ちゃんに服を着せ抱え、チェックアウトをすませ、タクシーを拾った。



       ☆彡



「どーやってここに来たの?あれ、わたし記憶が無い」

大学の前で天然ちゃんは呟いた。


     

       ☆彡



やっと試験が始まった。

今は天然ちゃんの事は忘れて、試験に集中しよう。

としたのだが、右斜め前に天然ちゃんがいるので、気になってしょうがない。


ぼくが、異変を感じたのはその時だ。

問題に迷っている天然ちゃんに、天然ちゃんの熊のぬいぐるみが教えているのだ。

明らかに手がその動きだ。


あっ試験官に気づかれた。

が、試験官は「私、疲れてるのかな」って顔して通り過ぎて行った。


そう熊のぬいぐるみが試験を、教えるはずがないのだ。

常識的に考えて!

でも、ぼくはあの熊のぬいぐるみの異常性を知っている。

まあ試験官が良いのであれば、良いか。


        ☆彡


試験が終わり、ぼくらは駅前でお好み焼きを食べ、新幹線に乗って帰った。

駅に着くと、天然ちゃんのお世話係の友達が待っていた。


天然ちゃんは、友達を見つけると駆け寄って、

「わたし、ちゃんと試験受けれたよ」

って報告した。

「良かった、良かった」

と友達は嬉しそうに、天然ちゃんの頭を撫でていた。


幼馴染に後で聞いた話だが、天然ちゃんもぼくと同じで、後がなかったらしい。

そして、この前の大学受験では、大学に辿り着けなかったらしい。マジか!


「あの親切なお兄さんに、色々助けてもらったんだよ」

と天然ちゃんはぼくを見ながら言った。


あれ?【親切なお兄さん】って、何だろう?

もしかして、ぼくが同じ受験生だと認識してなかったのか?

ニュアンス的に、たまたま通りかかった【親切なお兄さん】だよね。


こうして、ぼくと天然ちゃんの旅は終わった。

       

        

         完
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