『朱里ちゃんの戯言』短編小説集

健野屋文乃(たけのやふみの)

文字の大きさ
156 / 186
17 あいよりあおい章

計算上、そこに誰かいる!

しおりを挟む
夏休みに入った大学は静まり返っていた。

その中でもさらに計算室は静かだった。


「部屋のクーラーが壊れてね、ここで涼んでるの」

ビーチサンダルに短パンTシャツ姿の那由多なゆた女史は言った。

那由多女史の肌は、海に行った形跡など皆無と言う程真っ白だった。


大学の計算室にはわたしの他に、那由多女史が、お弁当を食べていた。

那由多女史が作った梅干し弁当だろう。

ご飯の上に梅干しがずらーっと敷かれ、表面上の見た目は真っ赤なお弁当だ。


最初は何事か?と思うお弁当の色だ。



わたしは自称天才の大学院生だ。

現在、わたしはスーパーコンピューター不可説不可説転を、操作している。


スーパーコンピューター不可説不可説転が熱を帯びているのが解った。

これは素晴らしい機械だ。

3次元空間に生きる人間では、見ることも聞くことも出来ない存在を、計算してくれる。


4次元だって5次元だって、6次元だって・・・・計算上は存在する世界だ。

3次元空間に生きる人間は、その存在を計算上でしか探知できないのだ。


自称天才プログラマーでもあるわたしは、より現実的に計算上は存在する生命体を探知するプログラムの開発に成功したのだ。

それが可能になったのは、スーパーコンピューター不可説不可説転の性能が急速にあがったお蔭でもあるのだが。


計算から3時間ぐらいたったころ、不可説不可説転は、計算結果を算出した。

その結果は、わたしの背後に計算上は存在する生命体が、何かの小さな箱を持って立っている事が解った。


そう!わたしのすぐ後ろだ!


それは計算上しか解らない生命体なので、見えるはずはない事は解っていたが、わたしは振り向いた。


えっ!見えた?


わたしは驚いた。


でも良く見るとそこには、お弁当箱を持った那由多女史が立っていた。


「よっ♪」


那由多女史は声を掛けて来た。

「那由多女史が、計算上は存在する生命体だったとは!」

「ん?計算上?」

那由多女史はとぼけたが、間違いない。



「商店街でアイス買って来るけど、何が良い?フルーツ系なら何でもあるけど」

ビーチサンダルに短パンTシャツ姿の那由多女史は言った。

「蜜柑」

わたしが言うと那由多女史は、

「良いね~わたしも蜜柑にしよう♪」

そう言うと計算室を退出した。


不可説不可説転のモニターを見ると、計算上存在する生命体は居なくなっていた。


どちらのせよ、この事がきっかけで、わたしは那由多女史に興味を持ち、那由多女史に恋をし、那由多女史に告白して結婚に至った事は間違いない事実だった。


しかし、結婚して3年経過したが、まだ那由多女史が、計算上は存在する生命体である確証は得れれていない。



             完
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...