『朱里ちゃんの戯言』短編小説集

健野屋文乃(たけのやふみの)

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17 あいよりあおい章

500年前の復讐と美少女と・・・【上】

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新学期が始まったばかりの頃。

高校の混雑した満員の食堂で、
「ジロジロみないで」
と、斜め横に座る、綺麗な顔立ちの少女が俺に言った。


綺麗な顔立ちの少女。

その姿を見れば、誰でもそんな印象を持つだろう。

しかし、俺には大きな長槍を振り回しながら、凶悪に薄ら笑う若武者に見えた。
そう、この少女の前世の姿だ。

遠い昔の戦場で、俺の騎馬隊は、こいつの裏切りで全滅、俺は捕獲され処刑された。
俺は刑場で、怒りと絶望の中、絶命した。
俺は、この強い恨み抱いたまま、生まれ変わった。

その強い恨み故に、この前世の記憶を維持できたと言っていい。
そして、俺はこの裏切り者に会うために、この世に生を受けたと言っても過言ではない。

そう言った経緯故、尋常ではない表情をしていたであろう俺の顔を見て、綺麗な顔立ちの少女の隣のさち薄そうな少女は言った。

「めっちゃ怒ってるよ、この新入生。
相当カツカレー食べたかったんじゃない、愛衣あいのカツカレーが最後だったし」

「えーーーそんな事でーカツカレーが最後だったのは、仕方ないでしょう。
早いもの勝ちだし・・・でも、カツ程度で、この形相?!」

「食べ物の恨みは怖いのよ」
「はあ~いいよ、一切れあげる。入学祝いって事で・・・・はい、入学おめでとう」


愛衣と言う綺麗な顔立ちの少女は言うと、俺のカツの無いカレー皿にとんかつを一切れ載せ、
「もうカツくらいで、怖い顔しちゃダメだよ」
と言って微笑んだ。

前世で裏切られた恨みが在るが・・・・しかし、しかし、しかーし!

その微笑みの可愛らしいさと言ったら、もーーーーー俺はつい微笑んでしまった。


すると愛衣は、ふっと笑い言った。
「変わらず・・・甘ったる、それは死んでも治らなかったらしい」
その言葉が、俺の心にズーンと沈んだ。

さらに愛衣は言葉を続けた

「しかし、乱世の習わしとは言え、その愛すべき甘ったるさを、守れなかったのは、私の弱さ。その件に関しては許して欲しい」

愛衣の隣のさちが薄い子は、
「何言ってるの?」って顔をしていた。



     ☆彡




時刻は24時ちょっと前。

自分の部屋に戻り明かりをつけると、ベットの枕元に誰かいるのに気づいた。
「誰?」

綺麗な顔立ちの少女が座り込んでいた。

颯愛衣いぶきあいそう颯先輩だ!

颯先輩は「何見てるの?変態」的な目で俺を見た。

・・・て言うか、ここ俺の部屋だし・・・

颯先輩の膝の上には、オルゴールと目覚ましのデジタルの時計が置いてあった。


千代吉ちよきち、明日は何の日か解るか?」
「千代吉って!500年ぶりに呼ばれたわ!今は陽翔はるとだし」
「陽翔って顔か!?めっちゃ武者武者してるじゃん、まったく現代の匂いがしない」
「それは理解してる」


現代の匂いがしていない古臭い俺に比べて、颯先輩は、古風な品の良さこそ残してはいるが、とっても現代的な顔出しをしていた。


古臭いと古風。同じ様な意味でも全く印象が異なるのだ。


「で、千代吉、明日は何の日か解るか?」
「何の日だろう?誕生日じゃないし」


颯先輩は、目覚まし用のデジタル時計にちょっとだけ見た後、俺と視線を合わせた。綺麗な顔立ちの女子に見つめれれると、それが颯先輩だとしても、ドキドキした。

「さあ陽翔くん、答えて」
「えー何も思い当たらない」
「もう忘れたか!お前の命日だろうが!」
「むしろ忘れたいわ!」
「ちょっと待ってて」

颯先輩が持っている目覚ましのデジタルの時計が、00:00をお知らせすると。

「命日、おめでとう!」

パーンと夜中にクラッカーを鳴らした。


「先輩、夜中夜中!そして命日おめでとうって、おかしいでしょう!」
「それじゃあプレゼントのオルゴールだ。受け取って欲しい」
「命日にプレゼント貰う風習って、異世界でもないと思うけど」
「【ヴェルディのレクイエム】のオルゴールだ」

颯先輩は、【ヴェルディのレクイエム】のオルゴールを鳴らした。
良い音色ではあるが、

「レクイエム・・・鎮魂歌。
あの~俺、もう生まれ変わったので鎮魂されても困るんですけど、今、めっちゃ生きてる最中なので」


颯先輩は、バックから数珠を取り出した。

「安心してください。成仏もしました」

「はっ!」

「えっ!?颯先輩!マジ驚きですか!」

「良かった・・・成仏出来たんだ。
千代吉は、融通が利かないから、あの戦場で、今も自縛霊してるかも知れないと心配してた」

「いやいやいや、見れば解るでしょう。めっちゃ男子高校生じゃん」

「今時、そんな武者顔の高校生いない。それはそうともう1つある」

「もうひとつ?」


颯先輩は真剣な顔をして、風呂敷に包まれた箱を開けた。

「刀ですか?」

「村正だ」

懐かしい響きだ。
颯先輩は箱から刀を取り出し、鞘から抜いた。
確かに名刀村正の妖しい輝きだ。

村正は照明の光を受けキラリと輝いた。

「この刀こそ、千代吉・・・お前の首を跳ねた刀だ」
「ひぃぃぃぃぃぃ」

俺はあの時の恐怖が甦り、魂の底から震えた。

颯先輩は微笑むと、
「喜んでもらえて嬉しいよ、この刀は手に入れるの苦労したんだよ」
「どー見ても!喜んでないでしょう!」



つづく
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