愛結島琉之輔商店 ~パラレルワールドで迷った時は~

健野屋健人(たけのやたけと)

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林檎飴の香りがした

【弐】トウキョウ人専用花粉症対策ゴーグル

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「これから行くトウキョウは、あなたが望んだトウキョウ。覚悟は出来た?」
「そりゃ、上京を決意したのはぼくだし。まあそれなりに」
「何かの縁だし、トウキョウ人専用花粉症対策ゴーグルをあげるね」
「東京人専用!」
「トウキョウは花粉症が凄いからね」

『まもなくトウキョウに到着します』
そのアナウンスに、ぼくはデニムのスーツケースを確認した。

彼女が降りる気配がないので、
「降りないの?」
「うん、わたしはいいの」
「そう、お弁当ありがとう」
「じゃあね」
「じゃあね」
「またね」
「またね?」
「ふふ」

変った子だ。

ぼくはトウキョウ人専用花粉症対策ゴーグルを装着した。
準備万端だ!

駅に降りると人が誰もいなかった。
なんか東京のイメージと違う。
東京と言えば人混み。人混みと言えば東京。

まあイメージとはそんなものだ。

さらに駅舎にも誰もいなかった。
ぼくが住んでいたド田舎の最寄も駅も無人駅だったから、まあ似たようなもんだろう。
そこには改札の機械なんてなかったけど。

ぼくは改札機にきっぷを投入して、駅を出た。
駅の外は凍えていた。
九州では感じた事がないくらいの寒さだ。
空からは大雪が降っていた。

そして駅の外にも誰もいなかった。
大雪だから?

地図を確かめて、地下鉄に乗った。
地下鉄にも誰もいなかった。
災害級の大雪だから?

さすがに人を姿を見たくなったぼくは、地下鉄の先頭車両に向かって歩いた。
運転手ぐらいいるだろう。と思ったのはぼくの見解はすぐに外れだと理解した。
自動運転なのだ。

地下鉄内には、防犯カメラが至る所についていた。
カメラの向こうには人がいるのだろうか?

地下鉄を降りると、無人のコンビニで温かい肉まんを買って食べた。
それにしても人がいない。
見上げるとビルには煌々と明かりが灯っていた。
あの中に入れば、人がいるのか?
でも赤の他人のぼくが入って良いものか?

ぼくは無人バスに乗って、これから住むアパートに着いた。
アパートにも明かりが灯っていた。
ぼくの隣の部屋にも。

都会は人付き合いが薄いって、聞いていたけど、引っ越しの挨拶に。

そう言った理由があるのなら、問題ないだろう。
ぼくは隣の部屋のインターホンを押した。
部屋の中でなるインターホンが聞こえた。
数分くらいぼくは立ち尽くしていた。
だれも出ない。都会とはこういうものなんだろうか?

次の日、ぼくは仕事先に連絡をしてみた。
繋がらない。
携帯の画面だけが、明るく輝いていた。

「どうしよう」



つづく
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