思惟ちゃんと式神的な巨大ロボット

健野屋文乃(たけのやふみの)

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2章 分身の術?

11話 この可愛い生き物の意見

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「やっぱり・・・。」

思惟βは、呟いた。


昼過ぎ、『北の島』のメンバーは、

エレベーターがあるであろう壁を、

ドリルで壊そうと試みて見たが、

壁は傷一つ着かなかった。


4人の思惟たちは、失望を隠さなかった。


「さて・・・」


と璃琥(りく)は、口に出してみたものの、

その後を何も思いつかなかった。



代わりに思惟βが口を開いた。

「そもそも私たちって本当に12人なのかな?」


思惟αは、首を傾げた。


「夢・・もしくは幻覚を見てるかも知れないって事?」

女将のあみは、αの代わりに聞いた。


「そう、可能性として・・・

そもそも12人になったと言う説より、

何らかの要因で、幻覚を見ていると言う説が最も現実的だと思うの」


「それは妖精のお姫さまも含めてって話?」


「そう・・精神的に異常をきたした可能性、

もしくは何らかの薬物によって、幻覚を見ている可能性」


「でも私たち、薬何て・・・ここ何年服用なんてしてない」


「キノコなんかの食べ物・・・

もしくは何らかのガス漏れの類いも考えられる」


璃琥は思惟αをつねりながら、

「でもこうすると痛みはあるみたいだし・・」

「私で試さないでよ!」

璃琥は、思惟αの頬が気に入ったみたいで、

離す様子は無かった。


女将のあみも、なんか楽しそうなので、

思惟αの頬を弄り始めた。

「痛みも含めての幻覚だとしたら、確かめようはないよね」


「うん・・それはあるね」

思惟βも、なんか楽しそうなので思惟αを弄り始めた。


「ちょっと、なにこれ?

なんでみんなで私を弄ってるの?おかしでしょう!

耳は止めて、耳は!」


「クローンって可能性はどうだろう?」

思惟βは、思惟αの鼻に指を突っ込みながら言った。

他人の鼻に指を入れるのは躊躇するが、

自分と同じ姿、自分かも知れない存在、自分の延長の存在の様な、

思惟αの鼻の穴に指を突っ込むことには躊躇は無かった。


「鼻もやめて!」


「クローン・・・それは無いわ。

だって12人になる前の記憶は同じな訳だし、あの裸族の子の、

曾おじいちゃんに対する思いは本物みたいだったし、

1人だったのが、12人に分身したってのが、私は納得がいく」


「あっそう言えば・・・」

璃琥は、他の3人の思惟を見つめた。


「何?」3人の思惟は同時に言った。


「ほくろの位置がみんな同じ・・・

ほくろって遺伝子に因らない要素だろ、

クローンでも同じ場所に、ほくろは着かないはず」


「ほう・・・」3人の思惟は同時に感心した。


思惟αは、弄られたまま印を結び唱えた。

「それじゃやっぱ、分身の術みたい」


この可愛い生き物の意見が、

もっとも納得のいくものかも知れない。

思惟βは思った。そして、


「要するに地下にいる妖精は、地上のクローン技術以上の、

複写技術を持っているって事ね」

 

思惟αの意見を補足した。



 「夢・・もしくは幻覚でなければね」


女将のあみちゃんは、思惟βの意見を補足した。



つづく
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