29 / 85
2章 分身の術?
12話 誰か来て!
しおりを挟む
「誰か来て!」
聞きなれない人の声が、女将の間の物置部屋からする・・・・
まだ頭が眠っている思惟αが、そう思ったのも仕方がない。
23時に起きる予定の【北の島】の、思惟αが、その声を聞いたのは、22時30分ぐらいだったと思う。
自分の声を聞きなれている訳ではないので、それが自分の声だとは気付かなかった。
「誰か来て!」
2度目のその声に、思惟αは、思考回路の中で、色々な記憶を繋げた。
「あれっ?これ・・・やばいんじゃない?」と、睡魔の中で思惟αが思ったときには、璃琥(りく)が、オプションで強力なバネが入っているんじゃないかと思うほどの、俊敏さで飛び起き、物置小屋に急行していた。
璃琥の浴衣は、マントの様に舞い、戦場を駆けぬける戦士の様に勇ましかった。
思惟αも、慌てて璃琥の後に続いた。
橙色の20ワットの照明に照らされた物置部屋には、さっきまで、誰かがいた気配が残っていた。
それを示すかのように、浴衣の帯が一つだけ残されていた。
「誰も居ない・・・。」
璃琥の浴衣は肌蹴、ブラとパンツが丸見えだった。
それも思惟が持ってる中で、可愛い系に分類されるピンクのブラとパンツだ。
「璃琥も女の子なんだ・・」思惟αは思いつつ
「西の島さんたちは、食料の調達に行ってる時間だから、あの声は、南の島さんたちかな?」
「・・だね」
「どうしたの?」
女将のあみちゃんが、顔にパックしたままの状態で、物置部屋に入ってきた。
継母がしているのと同じパックだ。
かなり高い奴・・・
12人になってまだ一晩しか経ってないのに、女将のあみちゃんは、継母と親密になって、高価なパックを貰ったとでも言うの?
切羽詰まった表情の璃琥とは対照的に、女将のあみちゃんは、落ち着いていた。
「南の島の子の、『誰か来て!』って、声がしたから来てみたら・・誰も・・・」
璃琥は、落ちている浴衣の帯の匂いを嗅いだ。
「これは・・・デジカメを持ってる子の物だ。微かにデジカメの匂いがする。」
「マジかよ」って目で、αとあみは、璃琥を見た。
璃琥は解って当然な顔をしていたから、マジなんだろう。
これ以上は触れずにおこう・・・
3人の思惟は、エレベーターがあるであろう場所を見た。
その存在は、3人の思惟の心に重くのしかかった。
「みんなそんな顔しないの、きっと大丈夫だって」
女将のあみちゃんの、優しく落ち着いた声で、3人の思惟たちの心は少しだけ軽くなった。
物置部屋から女将の間の外に出るには、【北の島】が寝ている居間を通らないと出れない。
ただ2階だから、屋根伝いに降りられない事はない。子どもの頃は良く屋根伝いに降りていた。
「あの子たち、勝手にコンビニでも行ったんじゃない。そう言えば、あの賢い子は?」
女将のあみは、思惟αに聞いた。賢い子・・・βの事だ。
顔だけでは区別できないはずなのに、思惟αが、思惟βじゃない事を見抜いたって事は、思惟αが、賢くない顔をしていたって事なのだろうか?
そんな事をふと思った思惟αは、
「まだ寝てるのかも・・・私、起こしてくる」
居間に戻る途中、姿見でチラッと自分を確認した。
「まあ、賢くは見えないよね」思惟αは自覚した。
つづく
聞きなれない人の声が、女将の間の物置部屋からする・・・・
まだ頭が眠っている思惟αが、そう思ったのも仕方がない。
23時に起きる予定の【北の島】の、思惟αが、その声を聞いたのは、22時30分ぐらいだったと思う。
自分の声を聞きなれている訳ではないので、それが自分の声だとは気付かなかった。
「誰か来て!」
2度目のその声に、思惟αは、思考回路の中で、色々な記憶を繋げた。
「あれっ?これ・・・やばいんじゃない?」と、睡魔の中で思惟αが思ったときには、璃琥(りく)が、オプションで強力なバネが入っているんじゃないかと思うほどの、俊敏さで飛び起き、物置小屋に急行していた。
璃琥の浴衣は、マントの様に舞い、戦場を駆けぬける戦士の様に勇ましかった。
思惟αも、慌てて璃琥の後に続いた。
橙色の20ワットの照明に照らされた物置部屋には、さっきまで、誰かがいた気配が残っていた。
それを示すかのように、浴衣の帯が一つだけ残されていた。
「誰も居ない・・・。」
璃琥の浴衣は肌蹴、ブラとパンツが丸見えだった。
それも思惟が持ってる中で、可愛い系に分類されるピンクのブラとパンツだ。
「璃琥も女の子なんだ・・」思惟αは思いつつ
「西の島さんたちは、食料の調達に行ってる時間だから、あの声は、南の島さんたちかな?」
「・・だね」
「どうしたの?」
女将のあみちゃんが、顔にパックしたままの状態で、物置部屋に入ってきた。
継母がしているのと同じパックだ。
かなり高い奴・・・
12人になってまだ一晩しか経ってないのに、女将のあみちゃんは、継母と親密になって、高価なパックを貰ったとでも言うの?
切羽詰まった表情の璃琥とは対照的に、女将のあみちゃんは、落ち着いていた。
「南の島の子の、『誰か来て!』って、声がしたから来てみたら・・誰も・・・」
璃琥は、落ちている浴衣の帯の匂いを嗅いだ。
「これは・・・デジカメを持ってる子の物だ。微かにデジカメの匂いがする。」
「マジかよ」って目で、αとあみは、璃琥を見た。
璃琥は解って当然な顔をしていたから、マジなんだろう。
これ以上は触れずにおこう・・・
3人の思惟は、エレベーターがあるであろう場所を見た。
その存在は、3人の思惟の心に重くのしかかった。
「みんなそんな顔しないの、きっと大丈夫だって」
女将のあみちゃんの、優しく落ち着いた声で、3人の思惟たちの心は少しだけ軽くなった。
物置部屋から女将の間の外に出るには、【北の島】が寝ている居間を通らないと出れない。
ただ2階だから、屋根伝いに降りられない事はない。子どもの頃は良く屋根伝いに降りていた。
「あの子たち、勝手にコンビニでも行ったんじゃない。そう言えば、あの賢い子は?」
女将のあみは、思惟αに聞いた。賢い子・・・βの事だ。
顔だけでは区別できないはずなのに、思惟αが、思惟βじゃない事を見抜いたって事は、思惟αが、賢くない顔をしていたって事なのだろうか?
そんな事をふと思った思惟αは、
「まだ寝てるのかも・・・私、起こしてくる」
居間に戻る途中、姿見でチラッと自分を確認した。
「まあ、賢くは見えないよね」思惟αは自覚した。
つづく
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる