『数億光年離れた遠い星の話』

健野屋文乃(たけのやふみの)

文字の大きさ
156 / 263
8章 5000年前からの贈り物

15話 人としての思考と人格形成を失ってしまう事

しおりを挟む
目の前にあるのが、秘密基地のドアだ。


そりゃあ秘密基地だし、本来なら合言葉的な物を言えば良いのだが、ドアの前であゆみは、少し考えた。

「何だっけ?」

とバイカルに聞いても

「合言葉って何だ?」

となるだけだったし。

「まあ、いっか」

とあゆみは、配線穴の奥にある秘密基地のドアをノックした。


「誰だ?」

ドアの向こうからすぐに声がした。

仕方ないので、

「猫だ」

とだけ、するとドアの鍵が開く音がした。


『って大丈夫か、ここのセキュリィティーは』

と白虎バイカルも驚くくらいのセキュリィティーの低さだった。


まあ、機械猫が通れるくらいの小さな横穴だし、人型の治安部隊が突入してくる事はまずない。


ドアを開けると、意外と綺麗な部屋があり、テーブルの上にはネズミが2本足で立っていた。ネズミと言ってももちろん機械だ。そしてもちろん元人間だ。


テーブルの上には、まるでミニチュアドールハウスのようになっていて、多分この機械ネズミの生活圏なのだろう。


こいつは人間の時から、ミニチュアドールハウスに住みたかっのかも知れない。

そう思える程、可愛らしいミニチュアドールハウスだった。



『あいつ名前はなんてったけ?』

『俺が知るかよ』

あゆみは軽快に声を掛けようとしたが、バイカルに聞いても無駄だった。

まあ機械猫なんてそんなもんだ。


どこか思考回路の奥を探せばあるのだろうけど、整理整頓されてない記憶なんて、砂漠の中の宝石だ。


それにしても、機械ネズミは小さい。

元人間が機械猫になるのも問題だが、元人間が機械ネズミになるは、もっと問題が合った。


それは記憶装置の容量の問題だ。

人型のアンドロイドが搭載できる記憶装置に比べて、機械猫はその容量が少なくなってしまう。


それは人としての思考と人格形成に影響する。

それを防ぐために高価格高性能でコンパクトな記憶装置を、機械猫たちは使用している。


人としての思考と人格形成を失ってしまう事。

機械猫になったとはいえ、それは譲れなかった。


機械猫たちでさえ限界を感じているのだが、機械ネズミはその限界を超えているんのだ。思考回路があり得ないくらいの小ささだ。

人類時代の記憶は、別に外部記憶装置にあるのだろうけど。


あゆみとバイカルは、会った事はないのだが、元人間のカブトムシやクワガタなんてのもいるらしい。まあ5000年前に、終わってる生命体だし、仕方ないか。



機械ネズミは軽快にタップダンスのステップを踏むと、

「よう猫、久しぶりだな。あゆみとバイカルだっけ?」

機械ネズミは言った。


あれ?俺らの名前覚えてる?

あれ?俺らより賢い?


あゆみとバイカルは目を合わせた。


『大丈夫だ』

とバイカルは言ったが、何が「大丈夫」なのかは不明だった。

『まあいい』

とあゆみは言ったが、何が「まあいい」のかは不明だった。




つづく




機械の猫たち


【あゆみ】元人間のカラカルの機械猫。自称エースパイロット。

【バイカル】人見知りの激しい虎型アンドロイド。元々は白虎。



機械のネズミ

【アルバム】機械猫より賢そう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

キメラスキルオンライン 【設定集】

百々 五十六
SF
キメラスキルオンラインの設定や、構想などを保存しておくための設定集。 設定を考えたなら、それを保存しておく必要がある。 ここはそういう場だ。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...