『数億光年離れた遠い星の話』

健野屋文乃(たけのやふみの)

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11章 ファンファーレが鳴る中

17話 ビット数の問題か?

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「情報がないだと!?」

管制室で機械ネズミは焦っていた。

宇宙巡洋艦レギーナに潜む秘密警察が、把握出来ていないからだ。

宇宙巡洋艦クラスなら、秘密警察が数機は乗っているはずだ。


姿を見せない秘密警察と言えば、秘密結社と同類。

同類ゆえに、その危険性は十分認識している。


「誰が?」


          ☆彡



宇宙巡洋艦レギーナは、艦としてはかなり小さい方だが、優秀な艦ではある。

戦場ではコンパクトで使い勝手の良い艦だ。


その艦長アストルガ少佐自身、自分が【堕ちた黒服】と呼ばれている事は知っている。要は左遷組だ。


それだからと言う訳ではないが、

「礼儀としてわたしが先に行くべきだろう?」

と海兵隊より先に、宇宙港に降りても良いかを、副官のミリアム中尉に尋ねた。


ミリアムは、ブリッジに映る宇宙港の様子を眺めた。

宇宙港側に、抵抗の意思は感じられなかった。


「問題ないでしょう」


宇宙巡洋艦レギーナ内での、ミリアムの評判はすこぶる良い。

厄介者と見られがちな艦長【堕ちた黒服】としては、それを利用しない手はない。


アストルガ少佐とミリアム中尉の会話を聞いていた、武骨な海兵隊隊長も何も口を挟まなかった。


アストルガ少佐が何気に微笑を浮かべると、武骨な海兵隊隊長は複雑な表情をした。

それが何を意味するのかは、不明だ。


軍内は色々あるのだ。その色々を処理出来なかったからこそ【堕ちた黒服】と、呼ばれるに至ったのだ。



「その【堕ちた黒服】が人類案件に携われるとはね」

アストルガ少佐は、満更でもない顔で、宇宙港に降り立った。


「少佐の努力の賜物です」

アストルガの側近のミリアム中尉は、アストルガの背中に声を懸けた。


2機が宇宙港に降り立つと、アンドロイドたちの楽団が見え、ファンファーレが鳴り響いた。


「歓迎されてますね」

ミリアムは囁き、アストルガは呟いた。

「捜査に来たのだが」

「捜査対象にこんな歓迎を受けるとはですね」

「しかし音程も少し変だな」

「ビット数の問題では?」

「ビット数?」

「ほら、あのアンドロイドたちは、シュガーコートタイプです」

「シュガーコートタイプ?」


世間知らずのエリートのアストルガ少佐に、ミリアムは


「簡易アンドロイドと言ったところでしょうか」

「あれが簡易アンドロイドか」

「少佐の様なエリートの側には、まずいない安物機種ですから」

「その言い方、気に入らないな」

「すいません」


楽団の背後から、そのシュガーコートタイプのアンドロイドが駆けてきた。

服装から、幹部クラスだろう。

「幹部クラスで、簡易アンドロイドとは」

「予算の関係でしょう。だれも人類の遺跡何て興味ありませんから」




「宇宙巡洋艦レギーナに皆さま、ようこそ超古代遺跡の星へ」

まるで観光地の様なノリで、簡易アンドロイドは言った。


アストルガ少佐は、少し呆れると、

「我々は人類を保護する為に派遣されました。あなた方は人類を匿った疑いがあります」


簡易アンドロイドは、

「人類を匿ってはいけないのでしょうか?」

「・・・」

「・・・」

「ん?匿ってはいけない事は、ないか?」

アストルガはミリアムに視線を送った。

「いけなくはないですね」


世論的には、いけなくはないけど、評議会的に最悪だ。


安っぽい簡易アンドロイドは、

「我々は宇宙港規定に従い通常宇宙港業務を提供しました」

その正論に、ミリアムは、

「しかし、人類はパトロール艇3機を撃墜してる事は理解しているはずでしょう?」

「もちろんです」

簡易アンドロイドは、まったく知性の感じられない目でそう言った。

「だったら、すぐに軍に通報するなり報告があるべきかと?」

「軍に報告?」

簡易アンドロイドは、じっと動きを止めた。

きっと思考しているのだろう。


かなり遅いと感じる時間が流れ、その間、アストルガはミリアムに何度も

『大丈夫かこいつ?』と視線を送った。

『シュガーコートでこの位は、普通です』と視線を返した。


そして、やっと思考が完了したシュガーコートは、

「宇宙港規定には、人類に関する規定はございません」


「「そりゃそうだろう!」」

アストルガとミリアムは、思考回路の中で思った。

人類が来たのは最近だ。

その時間で宇宙港の規定の変更など出来るはずはない。


アストルガとミリアムは、そのポンコツアンドロイドを一瞥した。

「中尉、ビット数の問題か?」

「少佐、ビット数の問題ですね」

「中尉、どうする?」

「とりあえず捜索をしてみては」

「そうだな、管制司令官殿、捜索は構わないか?」


「もちろんです。我々は軍の治安維持活動に協力を惜しみません」

そして、そのシュガーコートが、

「さんはい」

と発音すると、再びファンファーレが鳴り響いた。


シュガーコートの楽団員は、それはそれは楽しそうにファンファーレを鳴らした。

ミリアムが指示を出すと、宇宙巡洋艦レギーナから、海兵隊と憲兵隊が降りてきた。


重武装の海兵隊は、鳴り響くファンファーレに「何事だ?」って表情をしていた。




つづく


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