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第12話
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迷宮で産出される魔石を使って人々が生活しているという性質上、この世界の街は迷宮の近くに作られるのが一般的だ。
そしてより多くの迷宮が密集した場所には、より大きな街が作られる。
王国でも最も多くの迷宮が密集した場所に、王都は建造された。
王都には五つの迷宮が存在する。
下級迷宮が二つ、中級迷宮も二つ、そして上級迷宮が一つである。
マコトが一番最初に探索した迷宮は洞窟型の迷宮で、ゴブリンやコボルト、グレムリンなどの人型の魔物が生成される迷宮であった。
もう一つの下級迷宮は森林型の迷宮で、獣型や虫型の魔物が生成される迷宮であった。
マコトが既に探索し終えた中級迷宮は湿原型の迷宮で、アンデッドとも呼ばれる屍霊型の魔物が生成されていた。
そして、現在マコトが探索している中級迷宮は障害物のような大岩がゴロゴロしている荒野型の迷宮で、獣型や人型の魔物が生成される迷宮である。
王都で一つしかない上級迷宮は、マコトが収集した情報によると、複数の階層によって成り立っている塔型の迷宮で、人型の魔物が生成されるようだ。
上級迷宮は王都の迷宮の中で唯一、未だに攻略されていない迷宮であり、他の四つの迷宮と違い魔物だけでなくアイテムが産出されるらしい。
一刻も早く上級迷宮の探索を始める為に、マコトは今日も探索中の中級迷宮へ来ていた。
「…………む、この反応は……オークか。三体いるな。」
発動中のラウンドサーチに魔物の反応が引っ掛かった。
マコトは息を潜めて魔物の方へ向かう。
転がっていた大岩の影から盗み見ると、二足歩行をする醜い豚のようや魔物が三体、輪になって座り込んでいた。
体長2mを超える筋骨隆々の豚が座っているのを見ると、そこらに転がっている岩と間違えてもおかしくはないな、とマコトは思った。
二体は槍を背の後ろに転がしており、一体は斜めに肩に立て掛けていた。
耳障りな声で人間には理解できない言葉を話しているオーク達が、マコトに気付いた様子は全くない。
マコトは、先手必勝とばかりにサンダーアローを三発放った。
矢の形をとった三つの雷は全て命中し、オーク達は急に身体が麻痺して混乱している様子だ。
素早く走り寄ったマコトは、何の抵抗もできないオーク達の首を撥ね飛ばした。
死体が消え、残った魔石を腰に提げた袋へ入れる。
ちょうど袋が一杯になったのを確認し、マコトはアイテムストレージを発動し、魔石で一杯になった袋を収納して代わりの袋を取り出した。
その袋を腰に下げ、マコトは再び歩き出した。
次に出会ったのはリザードマンであった。
二足歩行する蜥蜴のような魔物で、全身を真っ赤な硬い鱗に覆われている。
サーベルのような片刃の剣を使い、鋭い牙や太い尻尾などで攻撃してくることもある。
体長はオークより少し大きいくらいだが、地を滑るような独特な動きをし、硬い鱗に守られている為、魔法を使わずに倒すなら、基本的には大きな鈍器で潰すか余程切れ味の良い剣で斬るしかない。
しかしこのリザードマン、物理的には強くとも魔法に滅法弱い。
どんな力が働いているのかわからないが、リザードマンの鱗はあらゆる武器から身を守れるほど硬いのに、魔法を食らえば簡単に砕けてしまうのだ。
マコトからすればオークなどより楽な相手だが、一般の探索者からすれば魔法の制限回数を減らされる面倒な相手であった。
マコトが遭遇したのは二体のリザードマンだったが、背後からファイアボール二発で瞬殺した。
次に遭遇したのはレッサーデーモンであった。
下級の魔物であるグレムリンを大きくしたような魔物で、全身に解読不能な刺青が入った青い肌の悪魔である。
にやけた面からギザギザに尖った歯を覗かせており、白目のない不気味な黒い瞳をギョロギョロと動かす醜悪な魔物だ。
レッサーデーモンは個体としての強さは中級の魔物の中でもトップクラスだが、オークやリザードマンのように群れを作らず単独で行動する。
マコトが発見したレッサーデーモンも一体だけで徘徊していた為、ビルドアップで強化した身体能力を活かして真正面から叩き斬った。
最後に遭遇したのはガーゴイルであった。
ガーゴイルは体長2mほどで石の身体を持つ有翼の悪魔のような魔物である。
石でできている割には特筆するほど硬くはなく、動きも素早くない上に、腕力も然程ではない。
鋭い爪を持つが、動きが鈍い為に真正面から戦えば避けるのは難しくない。
単純な戦闘力で言えば下級よりはまとも、くらいのものなのだが、一般的にガーゴイルはオークよりも難敵と言われている。
その理由は、ガーゴイルの持つ擬態能力にあった。
ガーゴイルは石の身体と大きな体躯を利用し、身体を丸める事で迷宮内にゴロゴロ転がっている大岩に擬態するのだ。
その擬態精度はなかなかに高く、一流の探索者でも油断していれば気づかない程だ。
そうして無警戒に近付く探索者を、背後から襲うのがガーゴイルの戦い方だ。
だが、マコトはラウンドサーチを常に発動している上に、天眼によってガーゴイルの擬態を無効化していた為、マコトにとってガーゴイルはただの的と化していた。
ガーゴイルに気付かない振りをして近寄り抜剣、ガーゴイルが動く暇も与えずに一閃。
これだけであった。
クレイグ直伝の剛剣を放つマコトの一閃を、リザードマンのような耐久力もないガーゴイルが耐えられるはずもなく。
哀れなガーゴイルは絶命した。
それらの魔物との戦闘を重ねること7時間。
外が暗くなる前に探索を終えたマコトは、二ヶ月前から暮らしている借り家に転移した。
中級迷宮に潜るようになってからかなり収入の増えたマコトは、宿屋を卒業して借り家暮らしにクラスチェンジしていた。
必要最低限の物しか置いていない簡素な家を出てギルドへ向かう。
家からギルドまでは、歩いて10分ほどだった。
毎度お馴染みの受付嬢、レイラに本日の成果である大量の魔石を渡す。
全て売り払い、買い取り金は総計170000セルとなった。
酒場で一杯飲んでから帰ろうかと思案するマコトに、レイラが話しかける。
「マコトさん、今日も一日お疲れ様でした。つかぬことをお聞きしますが、明日も迷宮を探索するんですか?」
「いえ、明日は休もうかと思ってます。最近あまり休んでいませんでしたから。」
するとレイラはぱぁっと表情を明るくした。
「でしたら、私と大商市に行きませんか?」
「大商市……?何ですかそれ?」
「一年に一度、商業区で行われるお祭りのようなものです。色んな商会や露店商が出店するんですよ。ここ最近、数多くの商隊が王都に集まっているんですが、ご存知ないですか?」
「あぁ、そんな事を聞いたような気がします。その大商市の為だったんですね?」
「はい、そうです。かなり大規模なもので、珍しいものや美味しい食べ物なんかも沢山ありますよ!」
「それは面白そうですねぇ。私で良ければご一緒しますよ。」
「ホントですか!やったぁ!!」
ぴょんっと跳ねて大喜びするレイラ。
あまりの喜びようにマコトは気恥ずかしくなり、周囲の探索者達は暖かい目でレイラを見る。
それに気付かないほど興奮した様子のレイラは、受付の机に手を置いて前に身を乗り出す。
「絶対ですよ!後でキャンセルとかされたら私泣いちゃいますからね!?」
興奮しすぎて言葉遣いが丁寧でなくなりつつあるレイラ。
「え、えぇ、大丈夫ですよ。必ず行きますから。」
「良かったぁ……私、好きな人と大商市に行くの、夢だったんです!」
面と向かって好意を伝えられ、思わずほんのり赤面して目を開くマコト。
その様子に首を傾げるレイラだが、周囲の探索者達の野次に気づき、自分が何を言ったのかを自覚した。
マコト以上に顔を赤くしたレイラはすとんっと椅子に座り、俯いた。
「あー………レイラさん、明日楽しみにしてますから。色々教えて下さいね?」
見かねたマコトが口を開くと、レイラは赤い顔を少しだけ上げて潤んだ瞳で上目遣いにマコトを見た。
胸の鼓動が強くなるのを他人事のように感じたマコトがレイラの返事を待っていると、レイラは小さく頷いた。
「ま、舞い上がってしまって、すみませんでした。明日、私も楽しみにしてます。」
消え入りそうな声でそう言い、奥へと消えていった。
何とかなったのかな、とマコトが溜め息をつく。
マコトは近くにいた他の受付嬢に、「明日、昼頃に寮まで迎えに行く、とレイラさんに伝えておいて下さい。」とお願いし、そそくさとギルドを後にした。
そしてより多くの迷宮が密集した場所には、より大きな街が作られる。
王国でも最も多くの迷宮が密集した場所に、王都は建造された。
王都には五つの迷宮が存在する。
下級迷宮が二つ、中級迷宮も二つ、そして上級迷宮が一つである。
マコトが一番最初に探索した迷宮は洞窟型の迷宮で、ゴブリンやコボルト、グレムリンなどの人型の魔物が生成される迷宮であった。
もう一つの下級迷宮は森林型の迷宮で、獣型や虫型の魔物が生成される迷宮であった。
マコトが既に探索し終えた中級迷宮は湿原型の迷宮で、アンデッドとも呼ばれる屍霊型の魔物が生成されていた。
そして、現在マコトが探索している中級迷宮は障害物のような大岩がゴロゴロしている荒野型の迷宮で、獣型や人型の魔物が生成される迷宮である。
王都で一つしかない上級迷宮は、マコトが収集した情報によると、複数の階層によって成り立っている塔型の迷宮で、人型の魔物が生成されるようだ。
上級迷宮は王都の迷宮の中で唯一、未だに攻略されていない迷宮であり、他の四つの迷宮と違い魔物だけでなくアイテムが産出されるらしい。
一刻も早く上級迷宮の探索を始める為に、マコトは今日も探索中の中級迷宮へ来ていた。
「…………む、この反応は……オークか。三体いるな。」
発動中のラウンドサーチに魔物の反応が引っ掛かった。
マコトは息を潜めて魔物の方へ向かう。
転がっていた大岩の影から盗み見ると、二足歩行をする醜い豚のようや魔物が三体、輪になって座り込んでいた。
体長2mを超える筋骨隆々の豚が座っているのを見ると、そこらに転がっている岩と間違えてもおかしくはないな、とマコトは思った。
二体は槍を背の後ろに転がしており、一体は斜めに肩に立て掛けていた。
耳障りな声で人間には理解できない言葉を話しているオーク達が、マコトに気付いた様子は全くない。
マコトは、先手必勝とばかりにサンダーアローを三発放った。
矢の形をとった三つの雷は全て命中し、オーク達は急に身体が麻痺して混乱している様子だ。
素早く走り寄ったマコトは、何の抵抗もできないオーク達の首を撥ね飛ばした。
死体が消え、残った魔石を腰に提げた袋へ入れる。
ちょうど袋が一杯になったのを確認し、マコトはアイテムストレージを発動し、魔石で一杯になった袋を収納して代わりの袋を取り出した。
その袋を腰に下げ、マコトは再び歩き出した。
次に出会ったのはリザードマンであった。
二足歩行する蜥蜴のような魔物で、全身を真っ赤な硬い鱗に覆われている。
サーベルのような片刃の剣を使い、鋭い牙や太い尻尾などで攻撃してくることもある。
体長はオークより少し大きいくらいだが、地を滑るような独特な動きをし、硬い鱗に守られている為、魔法を使わずに倒すなら、基本的には大きな鈍器で潰すか余程切れ味の良い剣で斬るしかない。
しかしこのリザードマン、物理的には強くとも魔法に滅法弱い。
どんな力が働いているのかわからないが、リザードマンの鱗はあらゆる武器から身を守れるほど硬いのに、魔法を食らえば簡単に砕けてしまうのだ。
マコトからすればオークなどより楽な相手だが、一般の探索者からすれば魔法の制限回数を減らされる面倒な相手であった。
マコトが遭遇したのは二体のリザードマンだったが、背後からファイアボール二発で瞬殺した。
次に遭遇したのはレッサーデーモンであった。
下級の魔物であるグレムリンを大きくしたような魔物で、全身に解読不能な刺青が入った青い肌の悪魔である。
にやけた面からギザギザに尖った歯を覗かせており、白目のない不気味な黒い瞳をギョロギョロと動かす醜悪な魔物だ。
レッサーデーモンは個体としての強さは中級の魔物の中でもトップクラスだが、オークやリザードマンのように群れを作らず単独で行動する。
マコトが発見したレッサーデーモンも一体だけで徘徊していた為、ビルドアップで強化した身体能力を活かして真正面から叩き斬った。
最後に遭遇したのはガーゴイルであった。
ガーゴイルは体長2mほどで石の身体を持つ有翼の悪魔のような魔物である。
石でできている割には特筆するほど硬くはなく、動きも素早くない上に、腕力も然程ではない。
鋭い爪を持つが、動きが鈍い為に真正面から戦えば避けるのは難しくない。
単純な戦闘力で言えば下級よりはまとも、くらいのものなのだが、一般的にガーゴイルはオークよりも難敵と言われている。
その理由は、ガーゴイルの持つ擬態能力にあった。
ガーゴイルは石の身体と大きな体躯を利用し、身体を丸める事で迷宮内にゴロゴロ転がっている大岩に擬態するのだ。
その擬態精度はなかなかに高く、一流の探索者でも油断していれば気づかない程だ。
そうして無警戒に近付く探索者を、背後から襲うのがガーゴイルの戦い方だ。
だが、マコトはラウンドサーチを常に発動している上に、天眼によってガーゴイルの擬態を無効化していた為、マコトにとってガーゴイルはただの的と化していた。
ガーゴイルに気付かない振りをして近寄り抜剣、ガーゴイルが動く暇も与えずに一閃。
これだけであった。
クレイグ直伝の剛剣を放つマコトの一閃を、リザードマンのような耐久力もないガーゴイルが耐えられるはずもなく。
哀れなガーゴイルは絶命した。
それらの魔物との戦闘を重ねること7時間。
外が暗くなる前に探索を終えたマコトは、二ヶ月前から暮らしている借り家に転移した。
中級迷宮に潜るようになってからかなり収入の増えたマコトは、宿屋を卒業して借り家暮らしにクラスチェンジしていた。
必要最低限の物しか置いていない簡素な家を出てギルドへ向かう。
家からギルドまでは、歩いて10分ほどだった。
毎度お馴染みの受付嬢、レイラに本日の成果である大量の魔石を渡す。
全て売り払い、買い取り金は総計170000セルとなった。
酒場で一杯飲んでから帰ろうかと思案するマコトに、レイラが話しかける。
「マコトさん、今日も一日お疲れ様でした。つかぬことをお聞きしますが、明日も迷宮を探索するんですか?」
「いえ、明日は休もうかと思ってます。最近あまり休んでいませんでしたから。」
するとレイラはぱぁっと表情を明るくした。
「でしたら、私と大商市に行きませんか?」
「大商市……?何ですかそれ?」
「一年に一度、商業区で行われるお祭りのようなものです。色んな商会や露店商が出店するんですよ。ここ最近、数多くの商隊が王都に集まっているんですが、ご存知ないですか?」
「あぁ、そんな事を聞いたような気がします。その大商市の為だったんですね?」
「はい、そうです。かなり大規模なもので、珍しいものや美味しい食べ物なんかも沢山ありますよ!」
「それは面白そうですねぇ。私で良ければご一緒しますよ。」
「ホントですか!やったぁ!!」
ぴょんっと跳ねて大喜びするレイラ。
あまりの喜びようにマコトは気恥ずかしくなり、周囲の探索者達は暖かい目でレイラを見る。
それに気付かないほど興奮した様子のレイラは、受付の机に手を置いて前に身を乗り出す。
「絶対ですよ!後でキャンセルとかされたら私泣いちゃいますからね!?」
興奮しすぎて言葉遣いが丁寧でなくなりつつあるレイラ。
「え、えぇ、大丈夫ですよ。必ず行きますから。」
「良かったぁ……私、好きな人と大商市に行くの、夢だったんです!」
面と向かって好意を伝えられ、思わずほんのり赤面して目を開くマコト。
その様子に首を傾げるレイラだが、周囲の探索者達の野次に気づき、自分が何を言ったのかを自覚した。
マコト以上に顔を赤くしたレイラはすとんっと椅子に座り、俯いた。
「あー………レイラさん、明日楽しみにしてますから。色々教えて下さいね?」
見かねたマコトが口を開くと、レイラは赤い顔を少しだけ上げて潤んだ瞳で上目遣いにマコトを見た。
胸の鼓動が強くなるのを他人事のように感じたマコトがレイラの返事を待っていると、レイラは小さく頷いた。
「ま、舞い上がってしまって、すみませんでした。明日、私も楽しみにしてます。」
消え入りそうな声でそう言い、奥へと消えていった。
何とかなったのかな、とマコトが溜め息をつく。
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