色欲の王

紳士

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神に造られし隷属の魔

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「あー………」

身勝手な魔神が消えた。
俺と女性を残して。
……どうすれば良いんだよこれ。

彼女を見る。
小さく微笑んで俺を見ている。
口を開く様子はない。
俺から話さなければいけないか。

「えっと……俺はアーシュ。冒険者だ。ついさっき、アスモデウスの使徒になった。」

わたくしはアスモデウス様の眷属、サキュバスでございます。アーシュ様の下僕とならせていただきます。宜しくお願い致します。」

下僕って。

「下僕とかまだよくわかんねぇけど……サキュバスってのが名前なのか?」

アスモデウスの言い方では生物としての名前って感じだったけど。

「サキュバスは魔の神に仕えし性奴隷の呼称でございます。」

「せ、性奴隷ときたか……」

この女はアスモデウスの性処理係って事か……?


「ご安心下さい。私はアスモデウス様に使っていただいた事はございません。アスモデウス様はアーシュ様が処女に拘りを持つ方だった場合を考え、生み出したばかりの私を遣いとされたようです。」

いや、別にそれを聞いたところで安心とかしないけど。
というかあの神、槍とか処女とかよくわかんないところで気を利かせるよな。

「まぁサキュバスってのがどういう存在かはわかったけど……あんたの名前を教えてくれないか?」

「私共に固有の名称はございません。」

「え、まじか。」

あいつ、性奴隷だからって名前もつけてねぇのかよ。

「だったら…何て呼べば良い?」

「何とお呼びいただいても構いません。」

「って言われてもな……何か、適当に名前つけてくんねぇか?あんたをここに放っておくわけにもいかねぇし、どっかに連れて行くなら名前くらいあった方が良いだろ。」

俺がそう言うと、彼女は初めて表情を変えた。
どこか困ったような顔。


「悪い。何か変なこと言ったか?」

「いえ、問題ございません。ですが、名前…ですか。」

「難しいか?」

「そういった事は経験がございません。」

「いや、名付けの経験とかそりゃないかもしれないけど………適当で良いんだぞ?」

「…………」

困り果てた顔。
何か俺が虐めてるような気分になってくる。



「………サキュバスって、普段どんな生活してるんだ?」

何となく気になって問いかける。

「私共は性奴隷でございます。」

「それはわかったけど……ずっとそういう事してるわけじゃねぇだろ?」

「肯定致します。」

「なら、それ以外の時間は何してるんだよ?」

「何も致しておりません。」

「………は?」

「私共は性奴隷でございます。性奴隷としての役目以外は何もございません。故に、何も致しておりません。」

………うわっ、何だよそれ。
本当にただの性奴隷だってのか?
何もない時はどっかで何もせずに待機してるのか?

「食事とかは?」

「私共に人間のような生理的な欲求は存在致しません。また、それらを必要とする体でもございません。半永久的に活動可能でございます。」

つまり、食事やトイレ、睡眠なんかも必要ないって事か?
どうやら俺が思っている以上に、サキュバスってのは人間とかけ離れた存在らしい。



「………ん、でもそれだけ聞くとサキュバスってのはすげぇ無機質な存在のような気がするけど……こうして普通に話したりはできるんだよな?」

「私はアーシュ様の下僕として特別に知恵を与えられております。」

「つまり、あんたはサキュバスの中でも特異な存在だと?」

「肯定致します。」

「うぅむ………」

何となく理解できた。
というかわからない事は理解する必要もないと思った。
他のサキュバスなんて会う事ないだろうし、どうしてるかとか考えるだけ無駄だろう。
いま大事なのは、こいつをどうするかだ。


「やっぱり名前はあった方が良い。どうしても考えられねぇなら、俺が適当に決めても良いぞ?」

「申し訳ございません。謹んでお願い申し上げます。」

「わかった。」

さて、どんな名前が良いか。
これからどんな関係になるかわからんが、適当に捨てられる存在でもない。
一応、あの神にもらったもんだしな。

顎に手を当てて考え込む。
チラッと彼女を見た。
いつの間にか微笑みが戻っている。
その笑顔は、どこかで見たことがあるような優しい笑みだった。

トアのような朗らかで純粋な笑顔ではない。
もっと大人っぽくて、綺麗で、月の光のように優しくて……そして、どこか懐かしい笑顔。

忘れもしない、俺のかつての最愛。



あぁ、そうか。
に似てるんだ。




「………エマ。」

その名前は、自然に出てきた。


「あんたの名前は、エマだ。」

それは、俺にとっての特別だった。
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