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消えたアヤメ ①
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翌日の夜、俺は平助さんとの約束を守るため、まだ明るいうちに杜人家に出かけた。
杜人家に来たからには、賢人衆を無視するわけにもいかない。賢人衆に挨拶をし、廊下に出ると待ちきれなかったのか、平助さんが部屋の外で俺を待っていた。
「先に部屋に行って、待っていたらよかったのに。」
俺がそう言うと、平助さんは少し顔を赤くしながら「恥ずかしくて、出来ませんよ。」と言った。
俺の中で、平助さんのクールで完璧と言うイメージが少しずつ溶けていく。俺は最初にヴァンパイアポリスで会った時よりすっと彼の事が好きになっていた。
祖母の部屋を、子どものようにキョロキョロと眺めていた平助さんに、俺はアルバムを差し出す。
彼は、アルバムを1頁、1頁、愛おしむように眺めていた。カメラ事情の悪い時代に、しかも夜の屋外で撮られた写真は写りの悪いものが多かったが、彼の脳内の思い出と重なって実際の写真より鮮やかな写真となって彼には見えているのかもしれない。
「あ、これ。安芸さんと海で花火をした時の写真だ。」
彼がそう言って指さした、写真には、白いワンピースを着た祖母と、子どもだった平助さん、宗助所長が笑顔で花火を持って写っていた。
アルバムを見終わった平助さんは、アルバムを閉じて「彼女が生きていたら、どんなに楽しかったでしょうね。」と静かに言った。
平助さんが先に部屋を出る。俺は再びアルバムを開き、さっきの花火の写真をアルバムから抜き取った。
杜人家の玄関まで俺を見送ってくれた平助さんの手にその写真を載せる。
「駄目ですよ。一宇君。こんな大切なものをいただけません。」
そう言いながら、平助さんは写真をまた愛おしい目で眺める。
「いいんです。この写真は平助さんが持っていて、これを見て、時々祖母を思い出してくれた方が祖母も喜ぶと思うんです。」
「ありがとう。大切に、、、いや。秦平助の宝物にして一生大事にするよ!」
彼の口から、そんな子供のようなセリフが出るとは思わなかった。でも、祖母の事を思い出してくれる人が一人でも多く居ることは俺にとっても嬉しい事だ。
俺は、平助さんに挨拶をして杜人家を後にした。
寺に戻ると。俺を見つけた類が、廊下の端から走って来る。
「あれ?一宇、アヤメっちと一緒じゃなかったの?」
「俺は、平助さんに会いに守人家に行ってたんだけど、アヤメどうしたの?」
「アヤメっち、一宇が杜人家に行ったって聞いて、自分も行ってくるって出かけたんだよ。アヤメっち、杜人家に行ってないの?」
「俺、今まで杜人家にいたけど、、。アヤメは見てない。それ何時くらいの話?」
「アヤメっちが出かけてから1時間くらいは経ってると思う。」
類の顔に不安の色が広がる。
「俺、杜人家に行ってくる。類はアヤメが戻って来るかも知れないから、ここで待ってて。」
そう言って俺はベスパで再度、杜人家に向かう。いつ何が起きてもおかしくない今、アヤメが消えたことに不安を感じるのは、俺も一緒だった。
白神の狙いは俺じゃないのか?なんでアヤメがいなくなった?
俺の頭の中は答えの出ない疑問でいっぱいになる。もしかすると、杜人家で、賢人衆に捕まって話でもしているのかもしれない。祖母の部屋にいた俺とすれ違っただけかもしれない。俺は不安で潰れそうになりながら、杜人家へ急いだ。
杜人家に来たからには、賢人衆を無視するわけにもいかない。賢人衆に挨拶をし、廊下に出ると待ちきれなかったのか、平助さんが部屋の外で俺を待っていた。
「先に部屋に行って、待っていたらよかったのに。」
俺がそう言うと、平助さんは少し顔を赤くしながら「恥ずかしくて、出来ませんよ。」と言った。
俺の中で、平助さんのクールで完璧と言うイメージが少しずつ溶けていく。俺は最初にヴァンパイアポリスで会った時よりすっと彼の事が好きになっていた。
祖母の部屋を、子どものようにキョロキョロと眺めていた平助さんに、俺はアルバムを差し出す。
彼は、アルバムを1頁、1頁、愛おしむように眺めていた。カメラ事情の悪い時代に、しかも夜の屋外で撮られた写真は写りの悪いものが多かったが、彼の脳内の思い出と重なって実際の写真より鮮やかな写真となって彼には見えているのかもしれない。
「あ、これ。安芸さんと海で花火をした時の写真だ。」
彼がそう言って指さした、写真には、白いワンピースを着た祖母と、子どもだった平助さん、宗助所長が笑顔で花火を持って写っていた。
アルバムを見終わった平助さんは、アルバムを閉じて「彼女が生きていたら、どんなに楽しかったでしょうね。」と静かに言った。
平助さんが先に部屋を出る。俺は再びアルバムを開き、さっきの花火の写真をアルバムから抜き取った。
杜人家の玄関まで俺を見送ってくれた平助さんの手にその写真を載せる。
「駄目ですよ。一宇君。こんな大切なものをいただけません。」
そう言いながら、平助さんは写真をまた愛おしい目で眺める。
「いいんです。この写真は平助さんが持っていて、これを見て、時々祖母を思い出してくれた方が祖母も喜ぶと思うんです。」
「ありがとう。大切に、、、いや。秦平助の宝物にして一生大事にするよ!」
彼の口から、そんな子供のようなセリフが出るとは思わなかった。でも、祖母の事を思い出してくれる人が一人でも多く居ることは俺にとっても嬉しい事だ。
俺は、平助さんに挨拶をして杜人家を後にした。
寺に戻ると。俺を見つけた類が、廊下の端から走って来る。
「あれ?一宇、アヤメっちと一緒じゃなかったの?」
「俺は、平助さんに会いに守人家に行ってたんだけど、アヤメどうしたの?」
「アヤメっち、一宇が杜人家に行ったって聞いて、自分も行ってくるって出かけたんだよ。アヤメっち、杜人家に行ってないの?」
「俺、今まで杜人家にいたけど、、。アヤメは見てない。それ何時くらいの話?」
「アヤメっちが出かけてから1時間くらいは経ってると思う。」
類の顔に不安の色が広がる。
「俺、杜人家に行ってくる。類はアヤメが戻って来るかも知れないから、ここで待ってて。」
そう言って俺はベスパで再度、杜人家に向かう。いつ何が起きてもおかしくない今、アヤメが消えたことに不安を感じるのは、俺も一緒だった。
白神の狙いは俺じゃないのか?なんでアヤメがいなくなった?
俺の頭の中は答えの出ない疑問でいっぱいになる。もしかすると、杜人家で、賢人衆に捕まって話でもしているのかもしれない。祖母の部屋にいた俺とすれ違っただけかもしれない。俺は不安で潰れそうになりながら、杜人家へ急いだ。
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