「もう1度、澄んだ青空を見るために」

愛理

文字の大きさ
7 / 35
第1章「異変」

第7話「最後の1人の手がかり」

しおりを挟む
    勇気と心が家の中に入ると神天功はすぐに、
「俺のことは攻って呼んでくれ。で、お前ら、この異常事態が何なのか知ってるんだよな? それを早く教えてくれ」
 そう早口で言った。
 そんな功を見て、勇気は神天攻っていう奴はせっかちな性格なのかもしれないと思った。
 そして、心が勇気に伝えたものと同じことを攻に話して聞かせた。
 功は勇気と違って、その話をあっさりと信じたようだった。
「そっか。それなら早くその神川守って奴も探し出さないとな」
 心の話が終わるとすぐに功はそう言った。
「こういった話をすぐに信じれるんだ?」
 功が心の話を全く疑わずにいたことを不思議に思って、勇気は言った。
「うん、だって、今のこの世界が異常なのは確かだろ? だったら、今、心が言ったことを信じるしかないじゃん。それに実はこの家、俺の家じゃなくて誰もいなかったから、借りてる家なんだけど……」
「えっ? そうなんだ?」
 功がまだ何かを話そうとしていたのを遮って、勇気が驚きを隠せないような口調で言った。
 だけど、心はそんな勇気とは対照的にここが功の家じゃないと解っても全然、驚いた様子はなかった。
「うん、悪いと思ったんだけど、家から逃げてきてさ、で、ずっと歩いてるのも疲れちゃったし、この家、何となく人の気配が感じられなかったから、ちょっと庭の塀から中を覗かしてもらったら、案の定誰もいなくてさ。で、玄関に回ってみたら鍵がかかってなかったから……後、これも何となくなんだけど、この家、何か安全なような気もしたから」
 功がそう言うと心はいきなり目を綴じた。
 勇気と功はそんな心を少し不思議そうに見る。
 そして、少しして心は目を開いて、
「そうですね。確かにこの家からは聖なるものを感じます」
 そう言った。
「そうなんだ?」
 勇気はそう言い、その後、俺は何も感じないけどなと思った。
 そして、自分もこの2人の仲間なら、本当はそんな風に感じなければいけないんじゃないのかとも思った。
 それを口に出しては言わなかったけれど。
「はい。そう思います。後、功さんはどうして、ご自分の家から逃げてこれたのですか?」
 心がそう言うと功は訝しげな顔をして、
「実は今日の朝、俺、両親に殺されそうになったんだよ。親父も母さんも俺の首を絞めてきてさ。それが親父はともかく母さんまで凄い力で……化けもんだと思って、何とか突き飛ばして、慌てて家を出たんだ」
 そう言った。
 両親に殺されかけた? 何それ、凄い怖いんだけど。
 勇気は功の話を聞いてそう思った。
 だけど、やはり心は冷静で、
「そうなんですね。それは大変でしたね。でも、ご無事で良かったです」
 そう言った。
 勇気はそんな心を見て、凄いなと思いながら、そういえばと思い、
「ところでさ心の両親はどうしたわけ? 俺はさっき言ったとおり、母さんが変になって、父さんは多分、いつもかなり早く仕事に出かけるから今日もそうだと思うから、今、どうなってるか解らないんだけどさ。心の家には心以外いなかったよな?」
 そう聞いた。
 すると心は、
「はい。実は私の両親は何処かに消えました」
 そう言った。
「えっ? 消えた?」
 勇気も功も驚いた。
「はい。でも、多分ですがこの世界が元に戻れば、あるいはそれまでの過程で会えるような気はします」
 心がそう言うとすぐに功が、
「解った! じゃあ、とにかく最後の仲間を探そうぜ。あっ! そういえば俺、思い出したんだけど、今日、ここに来る途中にさ、他の変になった奴とは違う感じがする奴を見たんだった」
 そう言ったので、
「どういう風に違ったんだ?」
と勇気が聞いた。
「うん、何か全身が光ってる感じに見えたというか……ただ、あんまり近くで見なかったから、自信はないけど。でも、確かそいつさ俺らくらいの年齢だったと思うんだ」
「それはもの凄く有難い情報ですね。もしかすると、その人が私達が探している神川守さんかもしれません。何処で会ったのか解りますか?」
 心が言った。
「ああ、この家からはそんなに遠くなくて、確か空き地にいたような……空き地に人がいたから、あれ? と思って見たような気がする」
 功が思い出しながら話している感じで言った。
「じゃあ、とりあえずその場所に行ってみましょう。例え会えなかったとしても何か手がかりが掴めるかもしれませんし」
 心がそう言った後、勇気と功は同時に大きく頷き、そして、3人は神川守を探しに出かけた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...