初めての本気

「初めての本気 リターンズ」

第５話

  俺の子どもを降ろしたと最初、嘘をついていた女子のことがあってから数日後にまた厄介なことが起こってしまった。　
  その日も俺はいつものように学校が終わると理菜と一緒に帰っていた。
  そして、２人で校門を出たところで今度は俺の中でも記憶にある女子とその友達らしき女子が俺達のところにやって来て、声をかけてきた。
  ちなみに２人とも俺と理奈が通っているこの高校からはわりと遠い場所にある女子高の制服を着ていた。
「礼央、久しぶりね。私のこと覚えてる？」
  俺が記憶している方の女子が言った。
  確か名前は里野美和だったはず。
「ああ、高１の時に２ヶ月だけつきあってた里野だよな？」
  俺がそう言うと里野の今まで冷たく感じる表情が少しだけ柔らかくなった気がした。
  でも、俺の方は正直、何で今更、俺のところに来るんだろう。しかも理菜と一緒の時にやめてほしいんだけどとしか思えなかった。
  実はこの里野とは身体の関係ももったから余計に。
「そう。里野よ。礼央が今、本気になってる彼女がいるって噂になってるから、その噂が事実かどうか確かめにきたの」
  里野がそう言った後、
「美和、それってこの子よね？　美和の方が断然美人じゃん」
  と里野の友達らしき女子が言った。
  だから俺はその女子の方を睨んで、
「お前、何てこと言うんだよ。里野には悪いけど俺からしたら理菜の方がよっぽど可愛いし性格も凄くいいんだよ」
  と思わず怒り口調で言ってしまった。
  すると里野もその友達らしき女子も驚いた顔をした。
  だけど、里野はその後すぐにふんっと鼻につくような笑い方をして、
「礼央が自分の彼女のことでそんな風に怒るの初めて見た。それだけこの子のこと本気で好きってことだよね。噂は本当だったってわけだ。でも、礼央、あなたが私に何て言って別れたか覚えてる？　俺、本気で誰も好きになれないみたいなんだ。だから、ごめん別れてほしいって言ったのよ。私は礼央に対して凄く本気だったのに。だから、その子に本気になったなんて私、許せないの」
  そう言った。
  でも、俺はそんな里野に対して、
「それは里野とつきあってた時の話だろ。人は変わっていくものだし、理菜は俺が今まで出会ってきた女の子達とは違ったから本気になったんだよ」
  そう言った。
  だけど、里野は俺の方をキッと睨んで、その後、理菜の方を見て、
「とにかく許さないから。理奈さんだっけ？　こんな奴とつきあってたら、あなた絶対にこれからたくさん嫌がらせされたりして傷つくわよ」
  そう言った。
  そして、それからすぐに一緒に来ていた友達らしき女子の腕を掴んで、２人でこの場から去っていった。
  俺はそんな２人の後姿を少しだけ呆然と眺めた後、はっとして、理菜の方を慌てて見た。
「理菜、ごめんな。また変なとこ見せて」
  俺がそう言うと理奈は優しい笑顔を俺に向けてくれて、その後、左右に首を振った。
  そして、
「大丈夫だよ。礼央くんがどれだけモテてたか、そして、今でもモテるの知ってるし。でも、私は礼央くんのこと信じてるから」
  そう言ってくれた。
  だから俺は堪らなくなって、ここが高校の校門の前だということも忘れて思わず理菜を抱きしめた。
  また、理菜を抱きしめてる間、本当に俺は絶対に何があっても理菜を守ると心の中で強く思っていた。
  だけど、この後、わりとすぐに俺のせいで理菜はまた傷つくことになってしまうんだけど。