初めての本気

第8話

「へー、そんなことがあったのか」
　俺は休み時間に山内に昨日、有川さんと花蓮さんとあったことを話した。
「うん、だから、俺、絶対にあの２人に有川さんのことを俺は本気だって認めさせてやるんだ」
「でも、どうやって？」
「うーん、そこなんだよな」
　俺は山内が言う通り、本当にどうやって俺が有川さんのことを本気だと解ってもらえればいいのか悩んでいた。
　そんな時……。
「おい、長原、何かお前のことで女子が揉めてるぞ」
　と同じクラスの三山が教室に入ってくるなり、そう言った。
「え？　俺のことで？　何で？」
　俺は何で女子が俺のことで揉めているのか全く身に覚えがなかった。
「何が原因で揉めてるか知らないけど、何か５組の有川って奴が５組の教室の前で何人かの女子に囲まれてて……」
「！」
　俺は“有川”という名前を聞いた途端、席から立ち上がっていた。
　そして、慌てて教室を出て、５組の教室の前まで行った。
　するとそこには本当に有川さんが３人の女子達に囲まれていた。
　その３人のうちの１人は過去に俺がつきあったことのある、下川春香という、綺麗だけど気の強い女子だった。
「長原とつきあってるんでしょ？」
　下川が言う。
「だから、つきあってないです」
　有川さんはおどおどしてそう言っている。
　一体、何で有川さんと俺がつきあってることになってるわけ？
　俺は会話を聞きながらそう思う。
「嘘。昨日、長原と有川さんが抱き合ってるところを見たのよ」
　全然、知らない女子がそう言った。　
　げ。俺が思わず有川さんを抱きしめていたのを見られていたのか。
　などと思ってる場合じゃない！
　それに有川さんをいつも守っているはずの２人の姿は見当たらないし。
　よし！　こうなったら！
　俺は有川さんと女子達の前に立った。
　４人とも俺を見て、凄く驚いた。
「長原……」
　下川が言う。
「俺と有川さんはつきあってないけど、俺は有川さんが好きだよ。もし、有川さんをお前らが苛めてるんだったら、俺はお前らのこと許さないからな！」
　俺がそう言うと、
「へー、カッコいいじゃん。理菜の彼氏として認めてあげようかな」
　そう後ろから聞き覚えのある声がした。