追いかけてくる傘の怨念

暗闇の傘

暗闇に包まれた帰り道。街灯が一つ、また一つと遠ざかっていき、道路は静寂に包まれていました。そんな夜の帰り道で、私は不気味な出来事に遭遇することとなるのです。

ある日、遅い時間に仕事から帰る途中でした。雨が降り出し、冷たい雨粒が私の頬を打つ音が闇夜に響いていました。急いで歩いていた私は、ふと脇目を向いてみると、道路の脇に捨てられた傘が目に飛び込んできました。その傘は、どこかで見たことのあるような、古びた形をしていました。

しかし、私はその傘を気に留めることなく、歩き続けました。だって、ただの捨てられた傘に違いない。と思いたくなる気持ちが、私の判断を支配していました。

しかし、しばらく歩いていると、なぜか後ろから足音が聞こえてきました。振り返ると、何もないはずの道路に、傘が跳ねるようにして近づいてきているのです。私は戸惑い、傘をじっと見つめました。傘は、まるで何かに引っ張られるかのように、私に近づいてきているように見えました。

恐怖が私の背筋を這い上がるような感覚に襲われましたが、私はそのまま立ち止まり、傘が私の前に辿り着くのを待つことにしました。傘は私の足元で揺れ動き、まるで悪戯っぽいように地面をなで回しているかのようでした。

そして、傘の生地が徐々にほころび、細かい糸が風に舞い上がる様子が、不気味な光景となって私の目に焼き付けられました。そして、そのまま傘は地面に倒れ、動かなくなりました。

私は何事もなかったように歩き出し、なんとか自分を落ち着かせようとしました。しかし、心の奥底で、あの不気味な出来事がどうして起こったのかを考えずにはいられませんでした。

家に帰ってからも、あの傘の怪奇的な動きが私の頭から離れませんでした。その夜、私は何度も悪夢にうなされ、傘が後ろをつけてくる姿を見るのです。そのたびに目が覚めると、冷や汗が流れるほど恐怖に襲われました。

そして、数日後、私は新聞の一面で驚愕の事実を知ることになります。あの捨てられた傘が、かつて交通事故で亡くなった人々の霊を集めていたのだというのです。傘はその霊たちの未練や怨念によって動かされており、私がその傘を見かけたことで、その霊たちが私に近づいてきたのだというのです。

恐ろしい出来事の真相を知った私は、もはや夜道を歩くこともできませんでした。傘の怨念に翻弄されることなく、平穏な日々を過ごすことが私の唯一の願いとなったのでした…。