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第一章 幼少期編
16 覚醒
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それはある日の夜の事、そろそろ食事の時間という時間に一人の侍女がアルメリアの部屋の中へと入ってきた。
「姫様、お食事をお持ちいたしました」
そう言いながら、部屋の中へと入ってくるのはこの離宮に配属されたばかりの新人侍女であるリリアだった。
その言葉にアルメリアはいつものテーブルの前に腰掛ける。
「すぐに準備いたしますのでもう少しお待ちください」
そして、リリアはアルメリアの為の食事の準備を始めた。彼女が持ち込んだ籠から食器類を取り出しきれいにテーブルの上へと並べていく。
「リリア、あなたがここに配属されてからどれだけ経ったかしら?」
「二週間でございます」
「そう、ここには慣れたかしら?」
「ええ」
リリアはテキパキと食事の準備を進めていく。そして、食事の準備を終えたリリアはおもむろに一歩だけ後ろへと下がった。
「姫様、お食事の準備が完了しました。どうぞお召し上がりください」
「ありがとう。では、いただきますわ」
そして、アルメリアは最初に用意されたスープを数回程、口に含む。その時、ふと部屋の中に違和感を抱いた。
(……あら?)
普段なら、食事中でも数名の侍女が傍に控えている筈だ。しかし、今日に限っては何故か部屋にいる侍女はリリア一人だけだった。
特に、リリアはまだこの離宮に配属されてからそれほど日が経っていない。だというのに、そんな彼女を一人にするはずがない。
何かが、おかしい。
「リリア、あなた……」
だが、アルメリアがそこまで言うと不意に彼女の全身に強烈な眠気が駆け巡った。その眠気に誘われるまま、アルメリアは地面に倒れこんだ。
薄れゆく意識の中で彼女は何が起こったのかを考えた。恐らく、食事の中に強力な睡眠薬でも混ぜられていたのだろう。 また、彼女の傍に控えるリリアはアルメリアの異常にも全く動じる気配はない。つまり、この異常の原因は間違いなくリリアだろう。
そこまで考えた時、アルメリアはリリアが纏っていた雰囲気の正体が分かった気がした。
(ああ、思い出しましたわ。あの感覚。あれは昔、あの戦地で感じたのと同じ……)
アルメリアはそんな事を思いながら意識を手放した。彼女はそのままドサッという音と共に地面へと倒れ込む。
そんな彼女を無表情で見下ろしながら、リリアは髪飾りの中に隠していたナイフをそっと取り出した。
「姫様、申し訳ありません」
そして、彼女は眠るアルメリアの胸にナイフを突き立てるのだった。
「終わった……。皇族を殺めた私は大罪人。だけどこれで母様を……」
リリアはそう呟くとアルメリアの胸に刺さったナイフを抜き取った。そして、そのナイフでアルメリアの特徴的な白銀の髪をほんの少しだけ切り取った。
「これがあれば、証拠にはなる筈……」
リリアはそう呟くと切り取った髪の束を素早く器用に束ねて、懐へと仕舞う。
そして、一刻も早くこの離宮から離れるべく、部屋の窓から外へと飛び降りようとしたその時だった。
「ふふっ、何処へ行くおつもりなのかしら?」
「っ!!」
自らの後方から聞こえてきたその言葉に彼女は咄嗟に後ろを振り向く。すると、そこには体から闇としか表現出来ない何かを溢れ出しながら、ゆっくりと立ち上がるアルメリアの姿があった。
「どう、して……。確かにあの時に……」
リリアは確かにアルメリアに致命傷を与えた実感があった。だというのに、目の前には殺めた筈のアルメリアが平然と立っている。
しかも、不思議な事に先程の致命傷も既に塞がっているようで、アルメリアの体には傷一つ残っていなかったのだ。
「一体、何がどうなって……」
リリアがアルメリアの様子に動揺するその一方、彼女は自分の中から溢れ出てくるこの力に歓喜していた。
そして、同時にアルメリアは自らの目覚めた力の使い方を本能的に理解できた。
「ああっ、この力、本当に素晴らしいですわね」
アルメリアはそう呟きながら興奮の笑みを浮かべる。その一方で彼女はアルメリアの周囲から溢れ出すその闇に彼女は本能的な恐怖を覚えた。
「この力、まずはあなたで試させてもらいますわ」
アルメリアがそう言いながら前に手をかざすと、彼女から放たれている闇が収束し、一つの形となって具現化する。
「やはり、戦いは得物が無くては始まりませんわよね」
そして、彼女の手に現れたのは一振りの剣だった。その剣は彼女が普段の訓練で使用している剣と同じ形状だが、異様なのはその剣の色だった。彼女の持つ剣はまるで闇が形をとったかのような黒に染まっているのだ。まさに、漆黒の剣と表現するのが正しいだろう。
「さぁ、始めましょうか」
「くっ……」
アルメリアは笑みを浮かべながらリリアへと向かっていく。そして、彼女はその勢いのままリリアに黒剣を振るった。
「……っ」
咄嗟にアルメリアの一撃を受け止めたリリアだったが、その重さにリリアの手は痺れ、内心で冷や汗をかく。
箱入りで育てられた皇女とは思えない身体能力だ。というよりも、明らかに人間離れしている。恐らく、アルメリアから放たれる闇が何らかの影響を齎しているのだろう。
また、彼女の剣術の技量もこれまでの修行によってそれこそ本職の騎士に匹敵するほどにまで成長している。
それに比べて今のリリアは本調子とは言い難い。彼女の本来の戦い方は多数の暗器を使ったものだ。しかし、今のリリアはそのようなものは持ち込んでいない。というよりも、この離宮にそんなものを持ち込める筈もない。持ち込めたのは精々髪飾りの中に隠したこのナイフ一本ぐらいだ。
或いは万全の状態であっても苦戦は必至だったかもしれない。しかし、リリアには逃げるという選択肢はなかった。そもそも、そんな選択肢があるのであればアルメリアを暗殺しようとする筈も無い。
「なら、こういうのはどうかしら!?」
その一方でアルメリアの攻撃は手数を意識したものへと変わった。
「くっ、速いっ」
連続して放たれる攻撃にリリアは防戦一方で彼女の攻撃を体を捻りながら上手く躱していく。また、躱せない攻撃にはナイフで逸らす事で何とか防いでいく。しかし、それが精一杯であり、リリアは反撃の糸口すらつかめない。
そして、そんな戦闘も長くは続かなかった。アルメリアの黒剣を数十回ほど防いだその時だった。突如として、リリアの持つナイフが根元からポッキリと折れてしまったのだ。そもそも、このナイフはそれほど剣戟に耐えられるほど丈夫なものではない。そんなものでアルメリアの攻撃を防いでいればこうなるのも当然だろう。
ナイフが折れたと同時にリリアの心もポッキリと折れてしまった。彼女は諦めの表情を浮かべながら、そっと地面に膝をつく。
「さて、これで終わりですわね」
そして、アルメリアは黒剣の切っ先を彼女へと向けた。
(……母様、ごめんなさい)
唯一の武器となるナイフが壊れた以上、今のリリアではアルメリアには敵わないだろう。仮にここから逃げおおせたとしても、皇族の暗殺未遂の実行犯としてリリアは指名手配されてそれこそ地の果てまで追われる事になる。
それに、アルメリアを暗殺できなかった以上、リリアは目的を達する事は出来ない。結局、アルメリアをあの時に殺す事が出来なかった時点で、全てが終わっていたのだ。
そして、それを悟った彼女は全てを諦めてそっと目を閉じた。
「…………………………?」
だが、これから訪れる筈の終わりは一向に訪れなかった。ふと、目を開けるとそこには不敵な笑みを浮かべるアルメリアの姿があった。
「ふふっ、ふふふふっ」
「姫様……?」
「リリア、全てを話しなさいな」
「……それは一体どういう事でしょうか?」
「わたくしの命を狙ったのは何か事情があるのでしょう? そうでなくては、このような事を出来る筈がありませんもの」
アルメリアの言葉にリリアは一瞬だけ躊躇する。しかし、事ここに至ってはもうどうしようもない。生殺与奪の権は全てアルメリアに握られているのだ。今更、口を閉じ続ける事に何の意味もないだろう。
「……分かりました。全てをお話いたします」
そして、彼女は全てを話し出したのだった。
「姫様、お食事をお持ちいたしました」
そう言いながら、部屋の中へと入ってくるのはこの離宮に配属されたばかりの新人侍女であるリリアだった。
その言葉にアルメリアはいつものテーブルの前に腰掛ける。
「すぐに準備いたしますのでもう少しお待ちください」
そして、リリアはアルメリアの為の食事の準備を始めた。彼女が持ち込んだ籠から食器類を取り出しきれいにテーブルの上へと並べていく。
「リリア、あなたがここに配属されてからどれだけ経ったかしら?」
「二週間でございます」
「そう、ここには慣れたかしら?」
「ええ」
リリアはテキパキと食事の準備を進めていく。そして、食事の準備を終えたリリアはおもむろに一歩だけ後ろへと下がった。
「姫様、お食事の準備が完了しました。どうぞお召し上がりください」
「ありがとう。では、いただきますわ」
そして、アルメリアは最初に用意されたスープを数回程、口に含む。その時、ふと部屋の中に違和感を抱いた。
(……あら?)
普段なら、食事中でも数名の侍女が傍に控えている筈だ。しかし、今日に限っては何故か部屋にいる侍女はリリア一人だけだった。
特に、リリアはまだこの離宮に配属されてからそれほど日が経っていない。だというのに、そんな彼女を一人にするはずがない。
何かが、おかしい。
「リリア、あなた……」
だが、アルメリアがそこまで言うと不意に彼女の全身に強烈な眠気が駆け巡った。その眠気に誘われるまま、アルメリアは地面に倒れこんだ。
薄れゆく意識の中で彼女は何が起こったのかを考えた。恐らく、食事の中に強力な睡眠薬でも混ぜられていたのだろう。 また、彼女の傍に控えるリリアはアルメリアの異常にも全く動じる気配はない。つまり、この異常の原因は間違いなくリリアだろう。
そこまで考えた時、アルメリアはリリアが纏っていた雰囲気の正体が分かった気がした。
(ああ、思い出しましたわ。あの感覚。あれは昔、あの戦地で感じたのと同じ……)
アルメリアはそんな事を思いながら意識を手放した。彼女はそのままドサッという音と共に地面へと倒れ込む。
そんな彼女を無表情で見下ろしながら、リリアは髪飾りの中に隠していたナイフをそっと取り出した。
「姫様、申し訳ありません」
そして、彼女は眠るアルメリアの胸にナイフを突き立てるのだった。
「終わった……。皇族を殺めた私は大罪人。だけどこれで母様を……」
リリアはそう呟くとアルメリアの胸に刺さったナイフを抜き取った。そして、そのナイフでアルメリアの特徴的な白銀の髪をほんの少しだけ切り取った。
「これがあれば、証拠にはなる筈……」
リリアはそう呟くと切り取った髪の束を素早く器用に束ねて、懐へと仕舞う。
そして、一刻も早くこの離宮から離れるべく、部屋の窓から外へと飛び降りようとしたその時だった。
「ふふっ、何処へ行くおつもりなのかしら?」
「っ!!」
自らの後方から聞こえてきたその言葉に彼女は咄嗟に後ろを振り向く。すると、そこには体から闇としか表現出来ない何かを溢れ出しながら、ゆっくりと立ち上がるアルメリアの姿があった。
「どう、して……。確かにあの時に……」
リリアは確かにアルメリアに致命傷を与えた実感があった。だというのに、目の前には殺めた筈のアルメリアが平然と立っている。
しかも、不思議な事に先程の致命傷も既に塞がっているようで、アルメリアの体には傷一つ残っていなかったのだ。
「一体、何がどうなって……」
リリアがアルメリアの様子に動揺するその一方、彼女は自分の中から溢れ出てくるこの力に歓喜していた。
そして、同時にアルメリアは自らの目覚めた力の使い方を本能的に理解できた。
「ああっ、この力、本当に素晴らしいですわね」
アルメリアはそう呟きながら興奮の笑みを浮かべる。その一方で彼女はアルメリアの周囲から溢れ出すその闇に彼女は本能的な恐怖を覚えた。
「この力、まずはあなたで試させてもらいますわ」
アルメリアがそう言いながら前に手をかざすと、彼女から放たれている闇が収束し、一つの形となって具現化する。
「やはり、戦いは得物が無くては始まりませんわよね」
そして、彼女の手に現れたのは一振りの剣だった。その剣は彼女が普段の訓練で使用している剣と同じ形状だが、異様なのはその剣の色だった。彼女の持つ剣はまるで闇が形をとったかのような黒に染まっているのだ。まさに、漆黒の剣と表現するのが正しいだろう。
「さぁ、始めましょうか」
「くっ……」
アルメリアは笑みを浮かべながらリリアへと向かっていく。そして、彼女はその勢いのままリリアに黒剣を振るった。
「……っ」
咄嗟にアルメリアの一撃を受け止めたリリアだったが、その重さにリリアの手は痺れ、内心で冷や汗をかく。
箱入りで育てられた皇女とは思えない身体能力だ。というよりも、明らかに人間離れしている。恐らく、アルメリアから放たれる闇が何らかの影響を齎しているのだろう。
また、彼女の剣術の技量もこれまでの修行によってそれこそ本職の騎士に匹敵するほどにまで成長している。
それに比べて今のリリアは本調子とは言い難い。彼女の本来の戦い方は多数の暗器を使ったものだ。しかし、今のリリアはそのようなものは持ち込んでいない。というよりも、この離宮にそんなものを持ち込める筈もない。持ち込めたのは精々髪飾りの中に隠したこのナイフ一本ぐらいだ。
或いは万全の状態であっても苦戦は必至だったかもしれない。しかし、リリアには逃げるという選択肢はなかった。そもそも、そんな選択肢があるのであればアルメリアを暗殺しようとする筈も無い。
「なら、こういうのはどうかしら!?」
その一方でアルメリアの攻撃は手数を意識したものへと変わった。
「くっ、速いっ」
連続して放たれる攻撃にリリアは防戦一方で彼女の攻撃を体を捻りながら上手く躱していく。また、躱せない攻撃にはナイフで逸らす事で何とか防いでいく。しかし、それが精一杯であり、リリアは反撃の糸口すらつかめない。
そして、そんな戦闘も長くは続かなかった。アルメリアの黒剣を数十回ほど防いだその時だった。突如として、リリアの持つナイフが根元からポッキリと折れてしまったのだ。そもそも、このナイフはそれほど剣戟に耐えられるほど丈夫なものではない。そんなものでアルメリアの攻撃を防いでいればこうなるのも当然だろう。
ナイフが折れたと同時にリリアの心もポッキリと折れてしまった。彼女は諦めの表情を浮かべながら、そっと地面に膝をつく。
「さて、これで終わりですわね」
そして、アルメリアは黒剣の切っ先を彼女へと向けた。
(……母様、ごめんなさい)
唯一の武器となるナイフが壊れた以上、今のリリアではアルメリアには敵わないだろう。仮にここから逃げおおせたとしても、皇族の暗殺未遂の実行犯としてリリアは指名手配されてそれこそ地の果てまで追われる事になる。
それに、アルメリアを暗殺できなかった以上、リリアは目的を達する事は出来ない。結局、アルメリアをあの時に殺す事が出来なかった時点で、全てが終わっていたのだ。
そして、それを悟った彼女は全てを諦めてそっと目を閉じた。
「…………………………?」
だが、これから訪れる筈の終わりは一向に訪れなかった。ふと、目を開けるとそこには不敵な笑みを浮かべるアルメリアの姿があった。
「ふふっ、ふふふふっ」
「姫様……?」
「リリア、全てを話しなさいな」
「……それは一体どういう事でしょうか?」
「わたくしの命を狙ったのは何か事情があるのでしょう? そうでなくては、このような事を出来る筈がありませんもの」
アルメリアの言葉にリリアは一瞬だけ躊躇する。しかし、事ここに至ってはもうどうしようもない。生殺与奪の権は全てアルメリアに握られているのだ。今更、口を閉じ続ける事に何の意味もないだろう。
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