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第二章 学園編
43 第二章エピローグ
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アイシャを配下にしてから数日後の事、アルメリアは父であるガイウスに呼び出され皇宮へと戻ってきていた。
「お父様、お呼びにより参りましたわ」
アルメリアが皇宮に戻ってきたのは父が開く晩餐会に招待された為だ。
今日の彼女は父との晩餐会という事もあり、皇族の権威を示すかのようにあの時の舞踏会の装いに匹敵する豪奢な装いを身に纏っていた。
「うむ、よく来たな。そこに掛けるといい」
「分かりましたわ」
そして、アルメリアはガイウスと向かい合う様に座った。
「あら、今日はわたくし達二人だけですのね」
晩餐会というからには複数人の参加者がいるだろうと思っていたが、部屋にいたのはガイウスただ一人であった。
「ああ、その方が話もしやすいだろうと思ってな」
「ふふっ、ありがとうございますわ」
ガイウスの言葉から、今日の話題は他の誰かには聞かれたくない事なのだろうとアルメリアは推測する。
「では、早速晩餐会を始めるとしようか」
ガイウスがそう告げると、部屋の中に複数人の侍女が入って来た。
そして、彼女達はテキパキと食器類をテーブルの上に並べて行く。
それが終わったかと思うと、今度は料理がテーブルの上に並べられていく。
「では、頂くとしよう」
「ええ」
そして、二人は早速とばかりに用意された料理に手を付け始めた。
アルメリアとしても、突然の晩餐会の招待には驚いた。だからこそ、この晩餐会の目的をガイウスに聞きたかったのだが、今のガイウスは必要最低限の事しか話さない様子だ。恐らくはまずは食事を楽しもうという事なのだろう。
その後、二人は次々と運ばれてくる贅を凝らした宮廷料理の数々を平らげていく。
そして、用意されていた最後のメニューを完食したアルメリアは満足気な表情で口を開いた。
「ふふっ、とても美味でしたわ。この料理を作った者にも素晴らしかったと、そうお伝え下さいな」
「良かろう、料理長にはそう伝えておこう」
その直後、ガイウスは部屋の侍女達に何らか指示を出す。すると、彼女達は二人が使っていた食器類を片付け始めた。
全てが片付くと、侍女達は揃って部屋から退出していく。
そして、部屋にアルメリアとガイウスの二人だけになった直後、彼ははおもむろに口を開いた。
「話は聞き及んでいる。アイシャを配下としたようだな」
「……やはり、お父様はその事をご存じでしたのね」
ガイウスの口から放たれたその第一声にアルメリアは驚きもしない。寧ろ、アルメリアはガイウスがその事を既に知っているだろう、だからこそこのタイミングで晩餐会へ招待したのだろうと予想していた。
「では、この晩餐会もわたくしの口から直接その事を聞く為ですのね?」
「その通りだ」
「そういえば、その件についてお父様にはお礼を言わなくてはなりませんわね。例の書状、助かりましたわ」
アルメリアの言う例の書状、それは彼女達がアイシャの工房を見つけた日の夕刻に部屋に置かれていた書状の事だった。
そこには、学園には魔族が潜んでいる事、その魔族は表向きの隠れ蓑として学園で教師をしている事、その魔族が魔王の後継者を求めている事などが記されていた。
特にその魔族が魔王の後継者となる存在を求めているという部分に関してはアルメリアにとって大いに助けになった。
もし、それが無ければアルメリアは一人であの工房に行かなかったかもしれなかったからだ。
「ふむ、お前の感謝は受け取っておくとしよう。しかし、予想ではもう少し先だと思っていたぞ」
「あら、それに関しては偶然ですわ」
「それについても報告を受けている。なんでも、迷宮にあるあの女の工房を偶然見つけたそうだな」
「その事もご存知ですのね。ええ、その通りですわ」
余談ではあるが、ガイウスの当初の予定ではアルメリアがある程度、学園に慣れた後に彼女に予め用意していた先の書状を渡す予定だった。
そうする事で彼女に学園内で魔族探しをさせる様に誘導しようと思っていたのだが、その前にアルメリアがアイシャの工房を偶然見つけてしまった。
それを知ったガイウスは慌てて用意していた書状をアルメリアへと届ける様に部下に指示を出したのだ。
その為、書状の中には学園にいる魔族が誰なのかは記されていなかった。
だからこそ、アルメリアは工房でアイシャの姿を目にするまで、彼女が魔族だという予想は出来ていても、確信までは持てなかったのだ。
「それにしても、お父様がわたくしに学園に通う様に仰ったのは、アイシャ先生をわたくしの配下にする事が目的でしたの?」
「ああ、それが目的の一つだ」
「一つ、という事はそれ以外もありますのね」
「無論だ。それを今明かすつもりはないがな」
だが、アルメリアはガイウスにこれ以上、それ以外の目的について問いたださなかった。
問うたとしても答えてはくれないだろうという予感があったからだ。
「では、これからについての話を……」
だが、その直後の事だ。彼は突然口元を手で覆い隠したかと思うと、数回程激しく咳き込んだのだ。
そして、咳が止まると自らの手の平に目を向ける。すると、彼の表情に動揺の色が現れた。
しかし、それも一瞬の事。アルメリアですら、見間違いだったのかと疑ってしまう程にガイウスの表情は元に戻っていた。
「済まなかったな。話を再開するとしようか」
そして、二人は話を続けるのだった。
アルメリアとの食事会を終えたガイウスだったが、彼はその後に予定されていた執務や謁見の全てをキャンセルしていた。
その理由、それは寝室にて自身の主治医の診断を受ける為だった。
そして、診察を終えた主治医は諦めた様な表情を浮かべながら首を横に振った。
「例の病ですが、かなり進行しております」
「そう、か……」
主治医のその言葉にガイウスは慌てる事なく、淡々と返事を返した。
「陛下は驚かれないのですね」
「自分の体の事だ。自分が一番良く理解している」
ガイウスのその様子に主治医は思わず息を呑む。その姿は病を前にした者とは思えないほど冷静だったからだ。
だからこそ、主治医もガイウスに対して冷静に医者として応対をする。
「では、いつも通りの薬を処方しておきます故、必ず服用の程、お願い致します」
主治医は最後にそう言うと、ガイウスに頭を下げ、そのまま彼の寝室を後にした。
その後、彼は自身の手の平を見つめる。そこには、既に赤黒く変色してしまった血の痕がハッキリと残っていた。
「……アルメリアの完成を急がねばならぬか」
そして、彼は一人で思案を続けるのだった。
「お父様、お呼びにより参りましたわ」
アルメリアが皇宮に戻ってきたのは父が開く晩餐会に招待された為だ。
今日の彼女は父との晩餐会という事もあり、皇族の権威を示すかのようにあの時の舞踏会の装いに匹敵する豪奢な装いを身に纏っていた。
「うむ、よく来たな。そこに掛けるといい」
「分かりましたわ」
そして、アルメリアはガイウスと向かい合う様に座った。
「あら、今日はわたくし達二人だけですのね」
晩餐会というからには複数人の参加者がいるだろうと思っていたが、部屋にいたのはガイウスただ一人であった。
「ああ、その方が話もしやすいだろうと思ってな」
「ふふっ、ありがとうございますわ」
ガイウスの言葉から、今日の話題は他の誰かには聞かれたくない事なのだろうとアルメリアは推測する。
「では、早速晩餐会を始めるとしようか」
ガイウスがそう告げると、部屋の中に複数人の侍女が入って来た。
そして、彼女達はテキパキと食器類をテーブルの上に並べて行く。
それが終わったかと思うと、今度は料理がテーブルの上に並べられていく。
「では、頂くとしよう」
「ええ」
そして、二人は早速とばかりに用意された料理に手を付け始めた。
アルメリアとしても、突然の晩餐会の招待には驚いた。だからこそ、この晩餐会の目的をガイウスに聞きたかったのだが、今のガイウスは必要最低限の事しか話さない様子だ。恐らくはまずは食事を楽しもうという事なのだろう。
その後、二人は次々と運ばれてくる贅を凝らした宮廷料理の数々を平らげていく。
そして、用意されていた最後のメニューを完食したアルメリアは満足気な表情で口を開いた。
「ふふっ、とても美味でしたわ。この料理を作った者にも素晴らしかったと、そうお伝え下さいな」
「良かろう、料理長にはそう伝えておこう」
その直後、ガイウスは部屋の侍女達に何らか指示を出す。すると、彼女達は二人が使っていた食器類を片付け始めた。
全てが片付くと、侍女達は揃って部屋から退出していく。
そして、部屋にアルメリアとガイウスの二人だけになった直後、彼ははおもむろに口を開いた。
「話は聞き及んでいる。アイシャを配下としたようだな」
「……やはり、お父様はその事をご存じでしたのね」
ガイウスの口から放たれたその第一声にアルメリアは驚きもしない。寧ろ、アルメリアはガイウスがその事を既に知っているだろう、だからこそこのタイミングで晩餐会へ招待したのだろうと予想していた。
「では、この晩餐会もわたくしの口から直接その事を聞く為ですのね?」
「その通りだ」
「そういえば、その件についてお父様にはお礼を言わなくてはなりませんわね。例の書状、助かりましたわ」
アルメリアの言う例の書状、それは彼女達がアイシャの工房を見つけた日の夕刻に部屋に置かれていた書状の事だった。
そこには、学園には魔族が潜んでいる事、その魔族は表向きの隠れ蓑として学園で教師をしている事、その魔族が魔王の後継者を求めている事などが記されていた。
特にその魔族が魔王の後継者となる存在を求めているという部分に関してはアルメリアにとって大いに助けになった。
もし、それが無ければアルメリアは一人であの工房に行かなかったかもしれなかったからだ。
「ふむ、お前の感謝は受け取っておくとしよう。しかし、予想ではもう少し先だと思っていたぞ」
「あら、それに関しては偶然ですわ」
「それについても報告を受けている。なんでも、迷宮にあるあの女の工房を偶然見つけたそうだな」
「その事もご存知ですのね。ええ、その通りですわ」
余談ではあるが、ガイウスの当初の予定ではアルメリアがある程度、学園に慣れた後に彼女に予め用意していた先の書状を渡す予定だった。
そうする事で彼女に学園内で魔族探しをさせる様に誘導しようと思っていたのだが、その前にアルメリアがアイシャの工房を偶然見つけてしまった。
それを知ったガイウスは慌てて用意していた書状をアルメリアへと届ける様に部下に指示を出したのだ。
その為、書状の中には学園にいる魔族が誰なのかは記されていなかった。
だからこそ、アルメリアは工房でアイシャの姿を目にするまで、彼女が魔族だという予想は出来ていても、確信までは持てなかったのだ。
「それにしても、お父様がわたくしに学園に通う様に仰ったのは、アイシャ先生をわたくしの配下にする事が目的でしたの?」
「ああ、それが目的の一つだ」
「一つ、という事はそれ以外もありますのね」
「無論だ。それを今明かすつもりはないがな」
だが、アルメリアはガイウスにこれ以上、それ以外の目的について問いたださなかった。
問うたとしても答えてはくれないだろうという予感があったからだ。
「では、これからについての話を……」
だが、その直後の事だ。彼は突然口元を手で覆い隠したかと思うと、数回程激しく咳き込んだのだ。
そして、咳が止まると自らの手の平に目を向ける。すると、彼の表情に動揺の色が現れた。
しかし、それも一瞬の事。アルメリアですら、見間違いだったのかと疑ってしまう程にガイウスの表情は元に戻っていた。
「済まなかったな。話を再開するとしようか」
そして、二人は話を続けるのだった。
アルメリアとの食事会を終えたガイウスだったが、彼はその後に予定されていた執務や謁見の全てをキャンセルしていた。
その理由、それは寝室にて自身の主治医の診断を受ける為だった。
そして、診察を終えた主治医は諦めた様な表情を浮かべながら首を横に振った。
「例の病ですが、かなり進行しております」
「そう、か……」
主治医のその言葉にガイウスは慌てる事なく、淡々と返事を返した。
「陛下は驚かれないのですね」
「自分の体の事だ。自分が一番良く理解している」
ガイウスのその様子に主治医は思わず息を呑む。その姿は病を前にした者とは思えないほど冷静だったからだ。
だからこそ、主治医もガイウスに対して冷静に医者として応対をする。
「では、いつも通りの薬を処方しておきます故、必ず服用の程、お願い致します」
主治医は最後にそう言うと、ガイウスに頭を下げ、そのまま彼の寝室を後にした。
その後、彼は自身の手の平を見つめる。そこには、既に赤黒く変色してしまった血の痕がハッキリと残っていた。
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そして、彼は一人で思案を続けるのだった。
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