愛してると伝えるから

さいこ

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   ぼんやりしたまま店を閉めて部屋へ戻った
   風呂に入ってから珈琲を入れた

   瀧のことは…考えるのはやめた

   「どうして」ばかりで気持ち悪いから

   とにかく寝てしまえば待った無しで明日も仕事だ…



   ーーー



   それから数日、とくに瀧からの連絡も無かった
   俺は毎日店を開けマスターの顔で過ごす

   その日も普通に買い出しに出た

   車を駐車場に停め店に入る
   フルーツとチーズ、生ハム、ナッツ…カゴに必要な物を入れて、珈琲豆の棚へ向かう

   「あ、一条さん!買い出しです?」

   久々に藤原に遭遇した
   だから、買い出し以外になんの用があるってんだ…


   「お前…あの女とセックス出来たの?」

   すっかり忘れてたけど「狙ってます」みたいな顔で女を連れて店に来てたよな、と思い出した

   「あぁ、まぁ漕ぎ着けたまでは良かったんですけどぉ~…」

   おや?なにか揉めてんのか?


   「…付き合えないって話したらグズグズ言われてて…今困ってるとこなんですよ…」

   「ふ~ん、もう結婚しろよ」

   「やだ!それだけは絶対に!!」


   藤原は粘着系の女に酷い目に合わされたことがあって、特定の存在を作ることが嫌になっている

   生涯をかけて遊べるだけ遊ぶと言ってたもんなぁ

   「じゃあな、頑張れよ」

   俺は藤原を置いてレジへと向かった


   
   恋愛やセックスなんて好きにすればいい、と俺は思っている
   なにも「好き」という気持ちが有るか無いかだけの簡単なハナシじゃないのだ
   
   好きな人とのセックスに物足りなさを感じることはあるし
   逆に人としては好きじゃないのにセックスだけはものすごく良いってこともある

   
   また、その時はこの人と決めたってその先の心変わりまでは誰にも止められない

   だから各々好きにやればいい
   良いか悪いかなんて気にしなくていい


   
   開店の準備を終えるとスマホの通知が点灯していた

   瀧からのメッセージ…

ーーー

   触ってごめん
   嫌だった?怒ってる?
   またダーツしようよ
 
ーーー

   …こいつはあれか?
   ダンスの練習中に隣のヤツの股間に手が当たって「あ、悪ぃ」くらいの感覚でいるのか?

   あたし寝込みを襲われてるんですけど?

   正直、怒ってるとかそんな気持ちは無いよ
   あの時ビックリしたってだけだ

   それにダーツは別問題だろ、そっちは完全にただのたかり行為だからな


   …もう1件メッセージが来ている

ーーー

   明日のご予定はいかがでしょう?

ーーー

   洋子さんだ、なんだかなぁ…

   ちょっと……2人ともスルーしとこう
   また次回に回してもらって

   ごめんねぇ…



    俺は一旦全てを置いてカウンターに立つ

   今は1日おきに波多野が出勤するが、おかげで1日おきにやって来る1人の日が異常に寂しく感じる…

   しかも今日は1日雨予報だった
   客足もポツポツだし、もう店閉めちゃおうかな…

   
   俺は店内の客がゼロになったら店を閉めようと決めた

   なんて…そう思ってると微妙に途切れないんだよなぁ~
   ほんと思うようになんて運ばないようになってんだな、笑えるよ…

   
   店内が混み合うことは無く、微妙に数人を抱えて22:00が過ぎ、23:00を過ぎた頃…

   
   カランコロン…

   「いらっしゃいませ」


   …なんでだよ空気読めよ
   
   案内もしていないのに空いているカウンター席のど真ん中に座る瀧だった

   俺は黙って「美味しいハイボール」を作って出した
   もうどこのハイボールも飲めなくなればいい
   
   「…今日空いてるね」

   「雨ですからね」

       

   「あのさ…こないだ…」

   瀧との話はこんなところでしたくなかった
   俺はなにか言いかけた瀧の前から移動する


   カランコロン…

   「いらっしゃいませ」

   ちょうどいいタイミングでお客様だ

   「こちらへ…どうぞ」

   「遅い時間に失礼します、すぐ帰りますから」


   それは洋子さんだった…

   俺は黙ってウイスキーの水割りを出した


   瀧から椅子を2つ空けて洋子さん…
   俺の体を求める男女がこうして並んでいる

   それは不思議な光景だった


   「マスターお体の具合はいかがです?」

   「ええ…ご覧の通り健康です…」

   洋子さんは俺からの返信が無かったから様子を見に来たんだ

   「されるんですもの、お体は大事になさってください」

   「はは、お気遣いありがとうございます」

   
   彼女はゆっくりと水割りに口をつけ、やはり30分くらいで会計をした

   ちょいちょい、と手招きをする洋子さん
   俺は前かがみになり顔を寄せた

   陽子さんは自身の手を俺の耳元に当て

   「あなたにお話があります」

   と小声で言った


   「…後でお返事だけお待ちしてますね」

   と、席を立つと雨の中に帰って行った
   返事ね…明日の予定はどうかの返事のことね
   


   「あの人…なにかあるの?」

   瀧がそう言った
   めんどくせぇなこいつ

 「…あのh」
 
 いっそ体の関係があると教えてやろうと思ったとき、端の席の男が手で合図を寄越した
 お会計だろうと思い伝票を持って席に向かった

   そうして最後の客を送り出し
   店内には瀧だけが残った



   俺はカウンターの中に戻りベストを脱いでネクタイを緩めながら話す

   「いいか、あの人は俺とのセックスを楽しみにしてるの、お前がグズグズ口を挟むことじゃない」

 「枕…営業ってこと…?」

   いやいやいや、ぜんぜん違うね
   俺のほうが金貰ってるから
 
 「違うよ、個人的にそういう関係があるからたまに店にも顔を出してくれんだよ」


 お前との事故とは違う
 
 それに仮に俺が枕してたらなんだって言うんだ
 お前に口を出されることじゃないだろ

   
   それともアレか?
   気持ちもないのにセックスするなんて最低!
   ってことかぁ?

   ガキじゃあるまいし…
   
   
   頭痛のするようなハナシはやめてくれ…


  
 



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