愛してると伝えるから

さいこ

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別れ

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   お年を召された方でも意識して維持している方は美しい
 
 年齢だけで女として男として終わってる、なんていうのは無い
 美しく在ろうと思わなくなった時が終わりだ、それがたとえ20代であっても


   そういう意味で「美しい人」とは、顔が整った人、スタイルのいい人を指す言葉ではない
 
 俺にとっての美しい人は「内面が成熟している人」だ
 顔が美人でなくても、スタイルが良くなくても、内面から溢れ出る「美しさ」がある
 

 
 別に男遊びに興じていたって彼女は美しい 
 
 おそらく旦那だって分かっているんじゃないか?
 構ってあげられないからほら行っておいで…ってなもんだろ
 
 そして、どれだけ外で遊んでも旦那の待つ家に帰るということが全てだ



   「…そういうことだから、あの人は俺のセックスの相手なの」

 お前はいったいどういう答えを求めてんの…

 「なんだ、じゃあさっきのもセクハラじゃなかったんじゃん…」

 そうなるな、お前は俺達の関係を知らないで勝手に気分を悪くしていただけだ


 「さすが大人の女はああいうとこエロいよな」

 「へぇ…そういうの隠さない人が好みなんですか?」

 あんな「いい奥様代表」みたいなツラして、俺とセックスした過ぎて店に見に来ちゃうんだから可愛いだろそりゃ…



 「は?じゃあお前はどんなんが好きなんだよ?」
 
 そうだよ、瀧のタイプとか聞いたことなかったよな

 「俺は…女は性の対象じゃないんで、無いです」

 女は性の対象じゃない…
 居なくはないよな、うちの常連にもいるからゲイの子は

 「じゃあタイプの男はどういうのだよ?」

 それなら答えられるだろ


 「タイプとか…無いですよ、一条さんは好きですけど…」

 はぁ?

 お前は俺のなにを知って好きとか言ってんだ?
 図々しいと思わねぇのかよ

   「それは残念だったなぁ~俺は女が好きだから」


 
   「…でも俺のベロチューでイけたでしょ」


 …こいつ


 てかあのときは、なんでああなったんだって!

 ビックリしただろうがよ…
 こんなに生きててまだビックリすることがあるんだって思ったわ



   「あの時は一条さんが奥のソファで寝ちゃってて…」
 
 瀧が声をかけても俺の返事が無くなったので、バックルームに様子を見に来たとのこと

 それで寝顔が可愛いかったからってチュッチュしてたら
 俺がえっちな声を出して勃起してたから、少しだけと思ってさわさわして…


 「で、もっともっとって言うから…気持ちいいんだと思って…」

 そ、それで俺、出ちゃった…ってこと?
 
 「俺もちょっと火が付いちゃってめちゃめちゃベロチューしてたら…一条さん、イッちゃって…」

 確かにめちゃくちゃ気持ちいい夢だとは思ったけどまさかだよお前かよ


 「いや、まぁあれはもう寝てたからな…どーしようもないわ」

 「シラフで起きてるとき試す?」

 「…は???」



 「それが死ぬほど気持ち良かったら、別に女とのセックスじゃなくても良くなるかもだし」

 そんな…バカな…
 俺にシラフでお前に体を自由にさせろと…

 想像しただけで俺が死ぬ…恥ずか死ぬ!


 「いいよ別に女に困ってねぇし…お前とセックスはなんか違うだろ」

 「そうですか…じゃあ俺とはなんならいいの?」

 お前は…
 今までみたいに一緒に飲んで一緒に遊んで、学生時代の連れみたいな…

 「…そういうのが楽しかったよ、俺は」
 
 お前の気持ちには応えられないけど…


 「じゃあ…そういう事にしようよ」


   なにこいつ?
   本当に俺が言ってる意味分かってるよね?

   「下心」から「友情」にそうシフトできるもんなのかねぇ
   てゆーか男が好きだから俺のナニをお触りしたのかよ…お前の処理に使われてたまるか…


   「だから普通にダーツ付き合ってよ」

   「まぁ飲みたいところだけど、今日は時間ねぇからまた今度な」

   「なにか予定があるんですか?」
 
   「は?さっきの見ただろ?明日はあの人とホテルだよ…」

   瀧と遊びに行くのは悪くない
   でも洋子さんのことはまた別の話なんだ   

   話があるというのも気になるし…

   「じゃあ俺も帰るから、お前も…またな」

   今回は瀧の誘いを断った


   
   店の戸締りをして瀧を見送り、それから部屋に帰った
    
   風呂からあがると洋子さんに返信をした
   明日13:00にホテルで会う



   耳元で愛を囁いてゆっくり時間をかけて焦らされるのが好きな人
   セックスは1回で良くて、その後2人で裸のままベッドでお喋りをする(喫煙OK)
    
   俺は彼女を抱きしめて肌を撫でながら時折キスをして、最近面白かったことを話して聞かせる
   彼女はそうやって身を寄せて体温を感じる時間が好きだ


   …きっと本当は大切な人にそうして欲しいんだと思う
    
   ところがそうはならないから外で誰かと真似事をして帰るんだろう、人は皆思うように全ては手に入れられないものだ
   そんな寂しい気持ちが分かってしまう

   俺はひとときの恋人として、その時間あの人の心を満たすことが出来たらそれでいい…



   ーーー翌日


   俺は約束の時間を過ぎてから到着する
   先に部屋にいる彼女を訪ねた


   「待たせちゃった?」

    部屋に招き入れてくれた彼女にそう言った

   「いいえ、あなたを待つ時間は好きなの、だって色々想像して楽しいから…」

   そんな可愛いことを言わせる

 
   俺はソファーに腰を下ろし隣に座る彼女の肩を抱いて煙草に火をつけた

   「…その煙草の香り嫌いじゃなかった」

   なかった…って、過去形?

   「どうして?…若い男にお熱になっちゃったの?」

   俺は違和感を感じ彼女の太腿に指を伸ばす
  
  
   「私…もうここへ来られなくなります…」

   今までこんな話を聞かされたことは無い
   俺は本当に会えなくなるのだと理解した

   タバコの火を消して彼女に向き合う

   「今日が最後…?」

   彼女は悲しみをたたえた目で俺を見つめた…


   ご主人が拠点を海外に移すとのことだった
   彼女は遠く離れた知らない土地へ行ってしまう


   …若いのに取って代わられるよりはマシだが、この先この人を癒してくれる男は現れるのか

   まぁでも現地の男性が相手なら、立派なイチモツで彼女の心の穴も一気に塞がるのかもしれないが…(最低)
    
    

 俺は最後だと知っても何もできることは無い
   いつもと同じように彼女を恋人と思って肌に触れ合うだけ…

   綺麗な彼女の体が大きく跳ねるのを見届けると俺も果てた


   それから裸のまま、ベッドで俺の体を狙う大柄な男の話をした

   「昨日あなたが来た時に座ってた男だよ?」

   「えぇ…?それはこの先が気になって…」

   彼女はそこで黙ってしまった
    

   俺には声にならない、その続きが聞こえた
   この先が気になるけどそれを見届けることは自分には叶わない、そんなところだろう

  
   「私、ほんの火遊びと思って本当に馬鹿なことをしたわ…どうか私を嫌いになってね…」

   「ははっ…ただの火遊びでしょ、最初から嫌いだから…大丈夫だよ…」

 俺は彼女の髪を撫で、抱く腕に力を込めた



   そうして彼女は現金の封筒を置いて、先に部屋から出て行った
   最後の後ろ姿を見送り不思議な気持ちになった


    
   俺は一服して時間をずらし封筒をバッグに押し込むとホテルを出た
    


 





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