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出会い
しおりを挟む子供の頃、両親が新築マンションを購入した
入居が開始されると続々と入居者が越して来た
ファミリー向けの間取りが多く、マンションの中だけで小学校の登校班が2つ出来た
慣れない環境に不安でいたとき
登校班で班長を勤めていた年長者の彼女が俺を気にしてくれた
俺は小学4年生、彼女は6年生だった
登校班で彼女に会えるのが嬉しくて、毎日早くに起きるのが苦じゃなくなった
ただ先頭を歩く彼女を眺めて
彼女がいつも「友達できた?」「困ったら何でも話してね」などと声をかけてくれていた
俺は本当にそれが嬉しかったのに「うん」と返事をするだけで、言葉をちゃんと交わしたことなんて無かったと思う
やっと新しい環境に慣れた頃、彼女は卒業してしまった
同じエントランスを出入りするので、たまに中学の制服を着た彼女とすれ違ったが、彼女が声を掛けてくれることはなくなった
その後の小学校生活2年間で、彼女の存在が自分とは関わりが無くなったのだとぼんやり自覚した頃
俺も近所の中学に入学した
最初に学校の中で彼女を見かけたとき、つい先日制服に袖を通したばかりの俺の目には
制服を着て3年目を迎えた彼女は、先に大人になってしまったように見えて妙に悲しかった
…と同時に、なんだか分からない感情に襲われた
きっと、この時から彼女を意識し始めたんだと思う
彼女は「美術部」という意味の分かんない部活をやっていた
せめて運動部のマネージャーとかだったら俺も頑張って同じ部に入ったのに
俺は手先が器用では無く、絵を描く才能も無い
一度「苦手だから克服したい」という理由を付けて入部することを考えた
けど、ただ彼女の視界に入りたいというだけで、本当は美術にカケラも興味が無いのに、そんな自分を見られるのは嫌だなって思って断念した
ヘタクソな画も晒すことになるし…
結局俺は水泳部に入ることにした
小さい頃からスイミングに通っていたのでこれでいっか、という理由で決めた
別にタイムを競うステージに上がりたいという熱は無かった
スイミングスクールでもそうだ、コンマ何秒を競う連中とは別クラスだし、俺は急かされないで気持ち良く泳ぐのが性に合っていた
そんな中、彼女はまた先に中学を卒業していき
俺は2年生になると初めて「彼女」が出来た
女子から呼び出されて告白されるという漫画みたいなシチュエーションだった
同じ学年で別のクラスの、顔も見たことがない女子だった
朝一緒に登校して、昼休みを一緒に過ごして、帰りも時間が合えばお喋りをして一緒に帰った
その子を好きだったかと言われれば正直分からない
ただ思春期の興味でキスの真似事をしたりはした
何の因果か、その子は美術部だった
その子から聞く部活の話に俺は胸がザワザワした
俺が好きな年上の彼女によく面倒を見てもらったと言うので、同じ高校に行くのか?と聞いたことがある
その子は、彼女が進学した高校は学力的に難しいと言った
彼女がどこに進学したかは知っていた
制服ですれ違うから
彼女はチラリとも俺の顔を見てくれなかった
なんなら不細工な男と一緒に歩いてたりして、あんなのと別れろよ!と念を送った
彼女に彼氏らしき男が出来て…俺はこの世の終わりがきたかと思うほど悲しかった
なにもかもがどうでもよく思えて、スイミングで一緒だったお姉さんに誘われるまま、俺は童貞を卒業した
それからは、恋人であったはずの美術部の子とは疎遠になった
相手に合わせてお喋りをして、ままごとみたいなキスをするだけの関係よりも
年上のお姉さんとの、余計な思考がぶっ飛ぶような関係が良くなった
そのお姉さんのことも好きだったかは分からない
ただ気持ちいいことが出来るからしばらく関係を続けただけだった
そのうち、美術部の子から呼び出されて「私たち付き合ってるんだよね?」みたいに詰められた
俺はバカだから「そうだったけど好きな人が出来た」と心無い言葉を投げた
その子は何も言わずに去って行った
今思えば、自分の恋人に向かってそんなことを言うなんて…
きっと男が信用できなくなるような、そんな気持ちにさせてしまったに違いない
でも思春期の男子なんてまだまだ子供で、きっとみんなバカなんだ、ごめん
進路を考えるとき、彼女の通う高校しか思い浮かばなかった
スイミングで仲良くしていた連れは、彼女の通う学校の近所の男子校狙いだと言った
なんでも、その男子校に進学した先輩から「あそこ(彼女の通う学校)の女子は股が緩い」という都市伝説のような話を聞かされていたようだ
そんなバカなとは思ったが、俺も第一志望は彼女の高校、念のため第二志望でその男子校を目指すことになった
その連れと一緒に見事男子校に通うことになった
第一志望は…成績で落ちた…
春の浮かれ気分で、帰りには彼女の学校前をフラフラと偵察に歩いたりした
共学なのに、女子が3分の2を占めるという男子にとっては最高の学校だった
ある時連れとカフェでまったりしていると、彼女の学校の制服を着た女子2人連れが隣の席に座った
「あれ?あんたたちウチの前に来てるよね~?」
そう声を掛けられ、一緒にお喋りをした
その日は連れと俺でその女子を1人づつ連れて別行動することになった
俺についてきた子が「両親とも仕事で帰りが遅いの」というので、そういう誘いなのだと家へお邪魔してセックスして帰った
それを皮切りに、俺は彼女の学校の女子たちと適当に遊ぶようになった
もしかしたら
彼女の順番が回ってくるかもしれないなんて
そんな都合のいい期待もあったのは確かだ
それでも俺がその学校周りをうろついているあいだ、彼女の姿を見かけたことは無かった
彼女の順番どころか、まったくお近づきにもなれないうちに
またしても彼女は高校を卒業してしまった…
ちょうどその頃
彼女が家を出るんだってよ、という母情報がもたらされた
「あんた、あそこのお姉ちゃんと通学班一緒だったんだよ」と
そんなの…昨日のことのように覚えてるよ
俺は、もう自分の目の届かない場所に行ってしまう彼女と
今度こそ本当のお別れなんだという喪失感で泣いた
俺のこの執着は一体何なんだろう
6年も前の、たかだか半年ほどの通学班の、あの時の彼女にいつまでも執着する俺
身近にいる女子には感じないこの気持ちがなんなのか分からなかった…
その後、適当に遊んで、適当に勉強をして、適当な大学に進学した
親にも適当なことを言って4年で卒業することを条件に、通学に便利だからと都心に部屋を借りた
彼女が実家のマンションを出るとき、母が「渋谷の専門学校に行くんだって」と言った
だから俺は最寄り駅が渋谷…いや恵比寿のほうが若干近いけど…
まぁ、その辺りの狭いデザイナーズマンションを見つけた
いつか彼女に会えるんじゃないかという謎の期待
高校に上がった時と同じことの繰り返し
それでも俺は彼女に会えるなら会いたいという気持ちがあった
慣れない土地で生活を始め、彼女に思いを馳せる
もし2年制の専門だったらこの春からどこかで働いているかもしれないし
もし3年制だったらまだ学生でいるのかもしれない…
駅前のショップや飲食店を見て回り
友人とも出来るだけ渋谷で遊ぶようにした
俺はこの街を介して彼女と繋がっていられる気がした…
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