涙の跡

あおなゆみ

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Episode19

想い

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 ライブが終わり、吉岡さんや他の知り合いの人に来てくれたお礼を伝えた。
皆んな帰った後、片付けをしていると野島さんが

「この後時間ありますか?良かったらちょっと話しませんか?」

と公園のベンチを指差しながら言う。

「片付け終わったら行きます」

と伝えると、野島さんはベンチに向かって行った。
私は急いで片付けをした。

 ベンチに行くと野島さんはオレンジジュースとりんごジュースを持っていて

「お疲れ様です。どっちがいいですか?」

とジュースを交互に見せた。

「じゃあ、りんごで。ありがとうございます」

「お疲れ様でした」

左手に持っていたりんごジュースを渡される。
二人でほぼ同時に、一口目のジュースを飲んだ。
その間に、何を言おうか考える。
あんなに野島さんへの想いたっぷりの歌を、本人の前で歌った後なのだ。
野島さんが咳払いをしてから、話し始めた。

「曲、全部良かったです。依子さんらしい、この港に合う歌でした。歌声も誰にも似ていない」

野島さんは小さく拍手する。
私は両手を横に振り

「恥ずかしいのでやめて下さい」

と笑いながら言う。

「最後の曲。僕と虹を見た日の歌ですよね?...」

「そうです。なんだか恥ずかしいですけど。でも、写真のあの風景を言葉としても残したくて。その、なんと言うか...」

「嬉しかったです。”虹を見た日は消えないで”のところ好きです」

「ありがとうございます」

少しの沈黙。
りんごジュースを飲む。

「僕も同じ気持ちですよ」

野島さんが言った。

「あの歌詞は僕の気持ちでもあると思いました」

野島さんの方を見る。
野島さんはオレンジジュースを飲む。

「オレンジジュース美味しいな」

小さく呟く姿は子供のようだった。
それから私の方を見た。

「好きです」

「え...」

「依子さんの事が頭から離れません」

嬉しかった。
とてつもなく嬉しかった。

「私は...私も...野島さんが好きです」

二人で笑う。

「恥ずかしいですね」

野島さんは照れた笑顔で、下を向いている。

「私はあの曲を歌ってる時も告白しているような気持ちだったので。今日は2回目です」

「そうだったんだ。ありがとう。あの歌を聴いて、今日気持ちを伝えようと思ったんです。そういえば、曲の名前、言ってなかったですよね?」

「実はなかなか決まらなくて。でも今決めました。”涙のあと”。どうでしょうか?」

「いいですね。とてもいいです。雨上がりの虹を思い出します」

野島さんはそっと私の手を握った。

「本当にありがとう」

冷たい手。
私の手も冷たかった。
二人はしばらく港を眺め、互いの想いを感じ合う。
手は少しだけ温かくなった。
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