先を越されたファーストキス

あおなゆみ

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春の変化

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 春になり、雪で埋もれていた公園が姿を現す。隅にはまだ雪が残っていて、その雪には土が混ざっていた。それは春が来るたび目にする光景だったのに、その年に限って妙に際立って見えた。学校ではクラス替えをして、告白してくれた彼とは離れた。離れてしまった、という表現の方が気持ち的には正しいかもしれない。

 私は変わらずクラスで浮いた存在だったが、前とは違う意味で浮いていた。不満、文句、疑問などを前みたいにストレートに言葉にすることはなくなって、ただの大人しい少女になったのだ。それは自らの意思でそうしていたし、私の精神状態は全てを吐き出すように発散していた時に比べると随分落ち着いていた。言葉がちゃんと自分の中に留まっていて、自分を大切にできている気がした。そして、留めることはストレスを溜める行為ではなく、むしろ自分の大切なものを奪われない感覚にも近かった。
 
 他にも私は、仄かに色の付くリップクリームを塗って通学するようになった。それは、私なりの少年への憧れの象徴だった。少年が初恋の人だけに本当の唇を見せようとしているみたいに、私は沢山の本音を初恋の人に取っておこうと決めていた。そんな私の唇の変化に気付いた物好きな女子から、好きな人が出来たのかとしつこく訊かれた。でも残念ながらまだ私には好きな人がいなかった。多分、告白してくれた彼は「好きな人」ではないはずだった。「好きな人」ではないということにしたかった。本当の恋って何? と検索してしまいそうなほどの迷いようではあった(実際にしなかったのは、完全に消えることのないらしい検索履歴にそのワードが残るのがどうも恥ずかしかったからだ)。

 いつものように、ラッシーの散歩に行ったある日の放課後。日の短い冬とは違い、春の夕方はしばらく続きそうな余裕があった。そんな余裕にかまけながら公園に近づいた時。公園から笑い声が聞こえてきた。私は同年代の騒がしさを感じて、そのまま引き返そうとした。  
でも、そのタイミングでもう一度響いた声を聞いて、その声が男女二人から発せられたものだと分かる。複数人でふざけ合っているものではなく、親密で浮ついた何かがあったのだ。 思春期だから仕方がない、なんて言い訳はおかしいのだが、私はその姿を覗き見たくてどうしようもなかった。ラッシーは人がいても吠えるような犬ではなかったし、私が気配を消して静かに覗けば問題はなかった(覗き見るという行為自体に問題はあるだろうが)。忍び足で近づき、木の影からそっと顔を出した。
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