先を越されたファーストキス

あおなゆみ

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変化

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 少年のキスを見てから、私は公園に行かなくなってしまった。ラッシーは不満そうだったが、散歩は違うコースを辿るようになった。あの公園が余程好きだったようだし申し訳ない気持ちにはなったけれど、元のコースに戻すことはできなかった。

 そして、それが問題だったかのようなタイミングでラッシーの体調が悪くなった。呼吸が少しずつ荒くなり、食欲もなくなってしまったのだ。獣医さんは歳のせいだと言ったけれど、私にはそうは思えなかった。ラッシーはお気に入りの散歩コースに行けなくなって落ち込んでしまったのだ。望まない変化に参ってしまったのだ。

 まだまだ生きられたはずのラッシーは、あっという間に死んでしまった。あっという間だったけれど、苦しむことなく眠るように……とは言えない最期だった。私のせいでしかない。
違う可能性もあると分かっていても、そうである可能性を消せないのが現実だった。

 両親はしばらくの間、本を読まなくなったし、映画も観なくなった。小説を読もうとしている父親を一度見たけれど、全く集中できなかったようですぐに本を閉じていた。そして自分でも驚きなのだが、そんな落ち込んだ両親を見てどういうわけか、私が読書を始めたのだ。薦められたことのある名作と言われる青春小説から読み始めた。両親に隠れて読み、他の本も読み漁った。隣町にある図書館や古本屋に行き、知らない著者の本を自ら選ぶ事もあった。

 集中力は人生で一番、没頭度も人生で一番。これまで興味がなかった全てに興味が湧くかのようにして、様々な芸術に興味を示した。映画も美術も音楽も、今世紀に生まれたものばかりではなく、何世紀も前に生まれたものまで欲した。両親が家にいない時にだけ映画を観たりしていたのだが、隠れてするとその分読書や映画へ注ぐ時間が削られるのが惜しくなり、堂々と芸術を楽しむようになった。そんな私を見て、両親は元気を取り戻したように思う。私の方から質問することも増え、両親は喜んで答えてくれた。もちろん私には、両親のためという意図などなく、芸術に触れているとラッシーの死の悲しみからある程度逃れられたからだ。告白してくれた彼のことや、少年のキスの場面について考えたくなかったというのもあったかもしれない。読んだ本の冊数が増え、観た映画の本数が増えるたび、自分がマシになっているような気がした。素直になっていくかのような私を、両親は嬉しそうに眺めたりもした。
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