その心を愛するために

あおなゆみ

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第1話

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「申し訳ないけど君はあまりにも綺麗だから、付き合ったりはできないと思う。ごめん」

 凛花という女を振った時、僕は本気だった。
一つも嘘をつかずに、正しい理由で振ったのだ。

「褒めながら振ってくれる優しいところも好きなんだけどな……」

 そう言いながら凛花は自分の美しさを疑わなかったはずだ。
振られてもそんなことを言えるのは、自分に自信のある証拠だと思う。
もしくは僕なんかには理解できないくらいに、僕なんかは経験したことがないくらいに、人を(つまりは僕を)愛しているのだろうか。

「そう言われても本当にごめん。好きになることはないと思う」

「思う? 断言はしないんだね」

「ああ、断言はちょっと。あんまり得意じゃなくて」

「そういうところも好きなんだけどね」

「ごめん」

「謝らないで。分かったから。で、好きな人いるの? もしかして、私が知らないだけで彼女がいるとか?」

「好きな人も彼女も今はいない」

「今は? なんか、発言にちょっとずつ罠を作られてるような気がするんだけど」

「そんなつもりはないよ」

「そう? 私が片想いしてるから勝手にそう捉えちゃうだけなのかな」

「そうだよ。多分」

「もう。本当に断言しない男だね」

「ごめん。悪いところだとは分かってるんだけど。なかなか変われなくて」

「変わらなくていいよ。その代わりに、私もすぐには変われないから。振られたからってすぐに気持ちは変わらない。許して」


 愚かな二十代が終わろうとしていた季節には当然、凛花が大抵の男にとっていい女だということを僕は分かっていた。
抜群に美しい見た目(顔だけじゃなくてスタイルまでいい)に適度な共感力、積極的な性格の割に繊細な優しさ、平均的なボディタッチ。
何がなんでも口数の少ない女じゃないと無理だという主義がない限り、男たちは凛花からの告白に即オーケーするだろう。
正直、僕もそうしたい気持ちが大きかった。
凛花といれば話が尽きないし(彼女が適度な共感力で会話を回してくれていたが)、こんな僕のそれこそハッキリとしない話し方さえも可愛がってくれた(美しい女から可愛がられるなんて最高だった)。
かつての恋人たちが嫌ったその欠点さえも、凛花の前では低く見積もっても長所になったし、美点という「美」のつく表現はできないにしても、長所になるのは非常に素晴らしいことだった。
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