聖女召喚に巻き込まれて、異世界にきたオレは追放されて聖人になる

坂道冬秋

文字の大きさ
32 / 45

ACT31〜北の村の攻防〜

しおりを挟む
「ギャフ!」

オレの目の前で魔物がチリになった。通常の魔物を、通常の武器で斬った場合、魔物の死体が残る。

動物を刃物で殺傷するのと変わらない。ただ、どういう理由かはわからないが、邪気をまとった魔物が死んだ場合、チリになって消えていく。

特に、浄化の力を付与した武器で攻撃した場合、それは顕著に現れる。

「マサノリ!右側から魔物がさらに来るわ!」

ニナが、オレの右側の奥の茂みを見ながら、叫んでいた。

「わかった!まかせろ!」

「私も援護します!」

リーシオがオレと一緒に魔物を迎え撃つ。

「ナミナ!左側を頼む!」

「はい!任せて下さい!」

オレとリーシオは、左側の魔物をナミナに任せて、右側の魔物へと向かった。

ナミナの援護はニナが行う。距離としては、オレとリーシオの援護もできる距離だ。

ホーリーロッドという術によって、魔術道具に浄化の力を付与する事ができた事で、ニナの魔術は援護だけでなく、直接魔物を倒す事ができるようになっている。

「くらいなさい!」

ニナは、そう言って魔物に氷の魔術を打ち出し、仕留めていた。

「一気に決めるぞ!」

オレが、そう言ったのに合わせて、リーシオとナミナがオレの援護にまわる。

ニナは、オレ達三人の後ろで、魔術を打ち出しながら、魔物達の動きを誘導して、一箇所に集めるようにする。

「ホーリーウェーブ!」

オレは、浄化の力を持った、白い光の波を打ち出した。

「ギャファ!」

魔物達は、残っていた複数の魔物は、一気にチリに変わっていた。

「みんな!大丈夫?」

ニナが、オレ達前衛に声をかける。もちろん、オレ達は無傷だった。

「今回の魔物は、そこそこ数が集まっていたな!」

「そうですね!でも、これくらいの討伐なら難しくはありませんね」

オレが言ったのに、ナミナが答えた。オレは、全員がたいしたダメージを負ってない事を確認した後、村人達の方に近づいて行った。

「この村の責任者の方はおられますか?」

オレは、村人の一人に声をかけた。今オレ達は、北の村に来ていた。

ゲランさんが紹介してくれた、オレ達をかくまってくれるという村だ。

オレ達が村に到着すると、そこは戦場だった。邪気をまとった魔物が、村人を襲っていたのだ。

オレ達は、すぐに戦闘態勢に入り、村を襲う魔物達を討伐した。

「私が、この村の村長です」

オレが声をかけた村人は、すぐに村長を呼んで来てくれた。

「私達は、ゲランさんからご紹介をいただいて、この村に来ました」

「ゲランの紹介?」

どうやら、村長はゲランさんを知っているようだった。

「とりあえず、色々お話しはあるのですが、怪我人の所に連れていって貰えますか」

オレは、村長にそうつげた。



「大丈夫!今、回復魔術をかけますから!」

そう言いながら、おれは目の前の女性に回復魔術をかけた。

そうすると、女性の重傷だったケガは、みるみる治っていく。

通常、この世界ではケガなどの回復は、ポーションという薬を使うらしい。

しかし、重傷のケガを治すポーションは高価な上、完全に治癒できるとは限らないようだ。

「奇跡だ!」

周りにいた村人達は、その光景を見て口々にそんな事を言っていた。

オレ達は、村長に案内されて、村の集会所に集められていた怪我人のもとにきていた。

魔物に襲われた村人は、ほとんどここに集められている。

「次の重傷者は?」

そう言いながら、オレは怪我人の間を移動していった。オレとニナ、ナミナとリーシオの4人は、現在、王国の北側の村に来ている。

まだ、詳しくは聞いていないが、近くに穢れの地があるらしく、魔物が村を襲っていた。

オレ達が村に到着した時、ちょうど魔物が襲撃している最中だったが、何度か魔物の襲撃があったらしい。

オレ達は、その魔物を撃退した後、村人の治療にあたっている。

「あらかた治療は終わったみたいだな」

「ええ、重傷者はこれで全部よ!」

ニナが、オレに答えた。

「じゃあ!ヒールフィールド!」

オレは、そう言いながら広範囲に回復効果を持つ魔術を発動させた。

最近覚えた聖属性魔術だ。この魔術によって、周りにいる軽傷者の傷も治っていく。

「ふぅー!」

オレが、一息つくように息をはく。

「お疲れ様!」

ニナが優しく声をかけてくれた。

「ありがとうございます!本当にありがとうございます!」

村長に感謝されて、オレは少し照れてしまっていた。



「そうですか!先程、少しお話ししてましたが、近くに穢れの地があるんですね?」

「穢れの地?それは、魔物が集まっている黒い沼のような物の事でしょうか?」

オレの言葉に、村長が聞き返していた。今、オレ達は村長の家にいる。

他の村人の家よりは、少し大きな家ではあるが、それ程の差はない。

オレ達は、現在の村の現状と魔物について聞いていた。

「ええ、王国では穢れの地と呼んでいるようです」

オレは、村長の疑問に答えていた。なんでも、村人の一人が森に入った時に、偶然みつけたそうだ。

幸いにも、周りに魔物が少なかったため、見つからずに戻ってこれたみたいだ。

「今回の魔物の数はそれ程多くなかったようですが、その黒い沼は小さなものだったのですか?」

村長は、黒い沼を直接見た村人を呼んでくれた。その男の話では、大きな規模の沼が存在しているようだった。

「この近くには、この村以外にいくつかの村があります」

村長が、現状を説明しはじめた。

「他の村も、同じように魔物の襲撃を受けているようなんです」

村長の話から察するに、穢れの地の規模は大きいようだ。

ただ、この付近には複数の村が点在している事から、魔物が分散して襲っているようであった。

「魔物が、分散して村を襲っているから、一つの村の魔物の数は多くないって事か」

「付近の村の数を考えると、相当の規模の沼があるんじゃないかしら」

オレの後にニナが言った。

「オレ達だけで討伐できると思うか?」

村の防衛などの事を考えれば、村から戦力を借りる事は難しい。

「厳しいと思います」

リーシオが、オレの質問に答えた。

「やっぱりそうだよな!でも、このままって訳にもいかないしな」

「もし、この四人で討伐に行くのなら、破邪の秘術がカギになると思います」

リーシオが答える。

「何か作戦があるの?」

「けっこう無茶な作戦ですが、可能性はあります。逆に少人数の私達ならできるかもしれません」

ニナにリーシオが答えた。

「わかった!その方法しかないなら、やるしかないな!」

オレの決意を理解したように、ナミナが頷いた。ニナとリーシオも決意の目を向けていた。

「明日、魔物の討伐に行きます!」

オレは、隣でオレ達の話を聞いている村長にそう言った。

「私共を助けていただけるのですか?」

「当たり前じゃないですか!」

村長の言葉にオレがそう答えた。

「ありがとうございます!聖人様!」

「聖人?」

オレが聞き慣れない言葉に聞き返す。

「はい!聖女様に成り代わり、聖人様が魔物の討伐をして回っていると噂になっております」

ニナが静かに頷いていた。

「オレが聖人と呼ばれてるの、知ってたの?」

「ええ、そんな噂があるのは、小耳にはさんだわね」

オレは、自分がそんな風に呼ばれている事をはじめて知った。

「だから、暗殺者はオレを狙ったのか!」

「たぶんそうだと思います!アルティア正教にとっては、聖人の噂は許される事ではないですから」

リーシオがオレの言葉に答えた。

「ふぅー、なんかややこしい事になってるな~!ただ、魔物を討伐しているだけなのに」

「マサノリ殿は、それで良いと思います!」

自身満々にナミナが言った。

「確かにな!オレは自分にできる事をするしかないしな」

オレは、そう言って決意を改める。そう、オレ達は、こうやって村々を渡り歩き戦ってきた。

そして、これからも魔物を討伐し続けるのだろう。オレは聖女ではない。

ただの異世界の男だ。でも、こんなオレにもできる事があるみたいだ。

「聖人だとか、そんなだいそれた者ではないよ」

「周りは、そうは思ってくれないでしょうね」

ニナが少し悪戯ぽく言った。

「魔物討伐も、できる限りやるつもりだけど、オレは聖人とかになるつもりはないよ。まして、オレは聖女じゃない!」

そう、これはオレの決意だった。聖人とか聖女だとかは関係ない。

オレは、その思いを胸にそう呟いた。










坂道です。申し訳ありません。6月28日の21時に「聖女召喚に巻き込まれて、異世界にきたオレは追放されて聖人になる」の新しいエピソードを掲載する予定でしたが、急遽、体調を崩してしまい掲載をする余裕がありませんでした。

前にも連絡いたしましたが、書き溜めてあるエピソードを、一度全て放出する予定ですので、順次掲載していきます。大変ご迷惑をおかけいたしておりますが、よろしくお願いいたします。






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

辺境薬術師のポーションは至高 騎士団を追放されても、魔法薬がすべてを解決する

鶴井こう
ファンタジー
【書籍化しました】 余分にポーションを作らせ、横流しして金を稼いでいた王国騎士団第15番隊は、俺を追放した。 いきなり仕事を首にされ、隊を後にする俺。ひょんなことから、辺境伯の娘の怪我を助けたことから、辺境の村に招待されることに。 一方、モンスターたちのスタンピードを抑え込もうとしていた第15番隊。 しかしポーションの数が圧倒的に足りず、品質が低いポーションで回復もままならず、第15番隊の守備していた拠点から陥落し、王都は徐々にモンスターに侵略されていく。 俺はもふもふを拾ったり農地改革したり辺境の村でのんびりと過ごしていたが、徐々にその腕を買われて頼りにされることに。功績もステータスに表示されてしまい隠せないので、褒賞は甘んじて受けることにしようと思う。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...