君の中には僕しかいらない

月見

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予想外の再会

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 その日重大事件は起こった。


 「ねーねー、あの転校生の子可愛いねー」
 「目がぱっちりしててお人形さんみたい!」


 朝の会が始まってすぐ先生が転校生が来たぞーと言いながら教室に入ってきた。新しいクラスの一員がどんな人物なのか周りはザワザワしながら期待の眼差しをドアに向けていた。
 先生の合図とともに一歩一歩不安を滲ませながら転校生は前に出てきた。

 黒板には朝倉弓月と書いてある。
 俺もどんな転校生が来るのか気になってはいたが、それを周りには気取られたくはなかったため落ち着いて見えるように振る舞っていた。


 「転校してきた朝倉弓月君だ。みんなーこれから仲良くするんだぞー」

 だが、またしてもその姿を見たらそんな振る舞いなどどっかへ飛んで行ってしまった。まさかまさかまさか昨日の奴が今日ここへ現れるとは。しかも同じ学校同じクラス。てっきり別の小学校かと思っていたがそうか、この学校に転校してきたのか。

 (ってか"君"・・・?)

 え、男だったの?俺と同じ?てっきり女子かと思っていた。だって、あんな・・・あんな見た目してるから到底同じ男だとは思えない。だが実際先生が君だと言っているし俺が勝手に女子だと思い込んでいただけだ。

 謎にガックリとする心はなんなのか。いや、がっかりなどしていない。男だろうが女だろうが気にしてどうするっていうんだ。
 俺は考えないように顔を大きく横に振る。

 不安からか下を向いたままだった朝倉は不意に顔を上げた。ちらりと周囲を見た視線がバチっと重なると、何故だか少し驚いたように目を見開いた。その瞬間俺は顔に一気に熱が集まる感じがして、勢いよく明明後日の方角を向いた。なんで俺は今顔を逸らしたんだ、急に顔が言うことを聞かなくなってしまった。


 俺が1人でにテンパっていると、朝倉は俺の少し離れた窓際の斜め前の席にすっと座った。早速隣の席の女子に話しかけられているようだけど、緊張しているのかなんなのか返答はしていないようだ。そういえば、昨日人見知りだって言ってたな。
 隣の女子は声をかけても返事が全く返ってこないことに気まづくなったのか途中から話しかけるのをやめていた。

 (さすがに話しかけられたら返事くらいしろよ・・・そんなことしてたら誰も話しかけてこなくなるぞ・・・)


 これは別に心配しているわけではない。観察・・・そう、これは観察だ。新しいクラスメイトがどんな奴かを調べるためのな。


 その後なんとはなしに朝倉の様子を見ていたらいつの間にか中休みになっていた。あれ?え、もう中休み?全然授業聞いてなかったんだが・・・。
 早すぎる時の流れに自分が授業そっちのけで朝倉を見ていたことを知り驚く。この間から変だぞ俺。なんでこんなに朝倉のことを気にしてるんだ。



 もんもんとしながら机で頭を抱えていると、どんどんとクラスメイトが席の周りに集まってくる。


 「なーなー太一!グラウンドでサッカーしようぜ」
 「えー俺バスケやりたーい!」
 「じゃあお前だけ他の奴らとバスケやりに行けばいいじゃん。俺らはサッカーするし」
 「太一居ないと楽しくねぇもん!バスケ上手いしさー」


 クラスメイト達が俺の席を囲むようにして中休みは何して遊ぶかを話している。まぁバスケもサッカーも俺は上手いからみんながこぞって誘ってくるのもうなづける。人気者なんだ俺は。

 「まーまー、じゃあ今日はサッカーやろうぜ。そんで、明日はバスケやろうよ」
 「ほら太一もサッカーやりたいってさ」
 「んーまぁ太一がそう言うんだったらそーする!」


 このままどっちにするか言い争っていても中休みの時間がどんどん短くなるだけのため、早々に提案をし遊ぶ方向を定める。
 席を立ち上がると朝倉の姿が見えた。あっちはあっちで別のクラスメイト達に囲まれていた。

 みんなは楽しそうに話しかけているが、一方の朝倉は話さないどころか俯いたまま顔を上げようとしていなかった。
 

 「あ、転校生早速囲まれてるなー。俺も今度話しかけてみよっかな」


 俺が見ているのがバレたのかと思ってギクリとした。けど、別にバレてはいなくてただ朝倉に話しかけていたうちの1人が、俺の周りにいた奴にぶつかったためきた道を辿った先に朝倉がいただけのようだった。
 昨日の挨拶やさっきの時間早送り問題もそうだがなんで俺はこんなにも朝倉を気にしてしまうんだろうか。俺は別に誰かを一方的に気になったりなんてしたことはない。だって、その前にみんなが俺に興味を持って集まってくるから。
 俺らしくない行動になんだかもやもやする。


 「なぁ、早くグラウンド行こうぜ。サッカーやる時間なくなっちゃうし」
 「おうそうだな!今日こそ俺のミサイルバズーカシュートを決めてやるぜ!」
 「名前ダッセー」
 

 このよく分からんもやもやを吹っ切るために俺は転校生の話題を打ち切りグラウンドへ行った。





 ————そんな感じで数日経った中休み。
 今日も今日とてクラスメイトに囲まれて人気者ぶりを発揮している俺は、さほど朝倉のことも気にしなくなっていた。
 いつものようにみんなでグラウンドへ繰り出そうと席を立つと俺の横を通った奴の話が少しだけ耳に入ってきた。

 「なんか、転校生の子全然話してくれないよね」
 「ねー私達が話しかけてもずっと無視するし。ひどいよねー」



 なんだかこの数日で朝倉の印象は最悪になっているようだ。窓際の席を見ると、数日前までは席の周りに沢山人がいたのに今はもう誰1人として話しかけている人はいなかった。まぁそれもそうだろうな。あんだけ無視を決め込んでいたら誰だって喋りたくなくなるもんだし。
 窓際の席で1人ぽつんと座っている背中を見て、俺はそのまま教室を出た。











 
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