2 / 2
予想外の再会
しおりを挟むその日重大事件は起こった。
「ねーねー、あの転校生の子可愛いねー」
「目がぱっちりしててお人形さんみたい!」
朝の会が始まってすぐ先生が転校生が来たぞーと言いながら教室に入ってきた。新しいクラスの一員がどんな人物なのか周りはザワザワしながら期待の眼差しをドアに向けていた。
先生の合図とともに一歩一歩不安を滲ませながら転校生は前に出てきた。
黒板には朝倉弓月と書いてある。
俺もどんな転校生が来るのか気になってはいたが、それを周りには気取られたくはなかったため落ち着いて見えるように振る舞っていた。
「転校してきた朝倉弓月君だ。みんなーこれから仲良くするんだぞー」
だが、またしてもその姿を見たらそんな振る舞いなどどっかへ飛んで行ってしまった。まさかまさかまさか昨日の奴が今日ここへ現れるとは。しかも同じ学校同じクラス。てっきり別の小学校かと思っていたがそうか、この学校に転校してきたのか。
(ってか"君"・・・?)
え、男だったの?俺と同じ?てっきり女子かと思っていた。だって、あんな・・・あんな見た目してるから到底同じ男だとは思えない。だが実際先生が君だと言っているし俺が勝手に女子だと思い込んでいただけだ。
謎にガックリとする心はなんなのか。いや、がっかりなどしていない。男だろうが女だろうが気にしてどうするっていうんだ。
俺は考えないように顔を大きく横に振る。
不安からか下を向いたままだった朝倉は不意に顔を上げた。ちらりと周囲を見た視線がバチっと重なると、何故だか少し驚いたように目を見開いた。その瞬間俺は顔に一気に熱が集まる感じがして、勢いよく明明後日の方角を向いた。なんで俺は今顔を逸らしたんだ、急に顔が言うことを聞かなくなってしまった。
俺が1人でにテンパっていると、朝倉は俺の少し離れた窓際の斜め前の席にすっと座った。早速隣の席の女子に話しかけられているようだけど、緊張しているのかなんなのか返答はしていないようだ。そういえば、昨日人見知りだって言ってたな。
隣の女子は声をかけても返事が全く返ってこないことに気まづくなったのか途中から話しかけるのをやめていた。
(さすがに話しかけられたら返事くらいしろよ・・・そんなことしてたら誰も話しかけてこなくなるぞ・・・)
これは別に心配しているわけではない。観察・・・そう、これは観察だ。新しいクラスメイトがどんな奴かを調べるためのな。
その後なんとはなしに朝倉の様子を見ていたらいつの間にか中休みになっていた。あれ?え、もう中休み?全然授業聞いてなかったんだが・・・。
早すぎる時の流れに自分が授業そっちのけで朝倉を見ていたことを知り驚く。この間から変だぞ俺。なんでこんなに朝倉のことを気にしてるんだ。
もんもんとしながら机で頭を抱えていると、どんどんとクラスメイトが席の周りに集まってくる。
「なーなー太一!グラウンドでサッカーしようぜ」
「えー俺バスケやりたーい!」
「じゃあお前だけ他の奴らとバスケやりに行けばいいじゃん。俺らはサッカーするし」
「太一居ないと楽しくねぇもん!バスケ上手いしさー」
クラスメイト達が俺の席を囲むようにして中休みは何して遊ぶかを話している。まぁバスケもサッカーも俺は上手いからみんながこぞって誘ってくるのもうなづける。人気者なんだ俺は。
「まーまー、じゃあ今日はサッカーやろうぜ。そんで、明日はバスケやろうよ」
「ほら太一もサッカーやりたいってさ」
「んーまぁ太一がそう言うんだったらそーする!」
このままどっちにするか言い争っていても中休みの時間がどんどん短くなるだけのため、早々に提案をし遊ぶ方向を定める。
席を立ち上がると朝倉の姿が見えた。あっちはあっちで別のクラスメイト達に囲まれていた。
みんなは楽しそうに話しかけているが、一方の朝倉は話さないどころか俯いたまま顔を上げようとしていなかった。
「あ、転校生早速囲まれてるなー。俺も今度話しかけてみよっかな」
俺が見ているのがバレたのかと思ってギクリとした。けど、別にバレてはいなくてただ朝倉に話しかけていたうちの1人が、俺の周りにいた奴にぶつかったためきた道を辿った先に朝倉がいただけのようだった。
昨日の挨拶やさっきの時間早送り問題もそうだがなんで俺はこんなにも朝倉を気にしてしまうんだろうか。俺は別に誰かを一方的に気になったりなんてしたことはない。だって、その前にみんなが俺に興味を持って集まってくるから。
俺らしくない行動になんだかもやもやする。
「なぁ、早くグラウンド行こうぜ。サッカーやる時間なくなっちゃうし」
「おうそうだな!今日こそ俺のミサイルバズーカシュートを決めてやるぜ!」
「名前ダッセー」
このよく分からんもやもやを吹っ切るために俺は転校生の話題を打ち切りグラウンドへ行った。
————そんな感じで数日経った中休み。
今日も今日とてクラスメイトに囲まれて人気者ぶりを発揮している俺は、さほど朝倉のことも気にしなくなっていた。
いつものようにみんなでグラウンドへ繰り出そうと席を立つと俺の横を通った奴の話が少しだけ耳に入ってきた。
「なんか、転校生の子全然話してくれないよね」
「ねー私達が話しかけてもずっと無視するし。ひどいよねー」
なんだかこの数日で朝倉の印象は最悪になっているようだ。窓際の席を見ると、数日前までは席の周りに沢山人がいたのに今はもう誰1人として話しかけている人はいなかった。まぁそれもそうだろうな。あんだけ無視を決め込んでいたら誰だって喋りたくなくなるもんだし。
窓際の席で1人ぽつんと座っている背中を見て、俺はそのまま教室を出た。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載
隣の番は、俺だけを見ている
雪兎
BL
Ωである高校生の湊(みなと)は、幼いころから体が弱く、友人も少ない。そんな湊の隣に住んでいるのは、幼馴染で幼少期から湊に執着してきたαの律(りつ)。律は湊の護衛のように常にそばにいて、彼に近づく人間を片っ端から遠ざけてしまう。
ある日、湊は学校で軽い発情期の前触れに襲われ、助けてくれたのもやはり律だった。逃れられない幼馴染との関係に戸惑う湊だが、律は静かに囁く。「もう、俺からは逃げられない」――。
執着愛が静かに絡みつく、オメガバース・あまあま系BL。
【キャラクター設定】
■主人公(受け)
名前:湊(みなと)
属性:Ω(オメガ)
年齢:17歳
性格:引っ込み思案でおとなしいが、内面は芯が強い。幼少期から体が弱く、他人に頼ることが多かったため、律に守られるのが当たり前になっている。
特徴:小柄で華奢。淡い茶髪で色白。表情はおだやかだが、感情が表に出やすい。
■相手(攻め)
名前:律(りつ)
属性:α(アルファ)
年齢:18歳
性格:独占欲が非常に強く、湊に対してのみ甘く、他人には冷たい。基本的に無表情だが、湊のこととなると感情的になる。
特徴:長身で整った顔立ち。黒髪でクールな雰囲気。幼少期に湊を助けたことをきっかけに執着心が芽生え、彼を「俺の番」と心に決めている。
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる