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第5話 勇者、魔王に採用される
しおりを挟む「我の魔法を簡単に消滅させるとは……勇者と言うそなたの言葉は真実なようだな……」
「信じてもらえて何よりですが……ここまでする必要がありましたか?」
「いや、確かめるだけなら簡単なんだがな。何を勘違いしたのか……最近勇者と名乗って我を討伐すると言う人間が増えていてな……」
それであの対応か……しかし、それだと偽勇者は消滅してしまうんじゃないか?
……あの本棚のように。
「しかし、勇者とは魔法が使えないのではなかったか?」
「あぁ、何か俺は特別な勇者らしいですよ? 何でも、万能勇者とか。何でもできる数十人に1人の存在らしいです」
「1世代に1人だけしか存在しない勇者の中で、更に数十人に1人という事か……希少種なのだな」
そんな絶滅種みたいに言わないで欲しい。
10歳の頃、ロラント王国の儀式で勇者の職を授かった時から何でもできたから、こんなものとしか考えてない。
自分に備わっている能力だから、珍しいのかなんてわからないしな。
「そんな勇者を追放か……無能なパーティだったのだな」
「えぇまぁ……勇者の俺を追放して、自分達が勇者パーティだと息巻いてましたよ。ちょっと意味がわかりません」
「まぁ、そのおかげで我が国に勇者が来てくれたのだと考えれば、ありがたいとするべきなのかもしれんな……」
確かに、追放されていなければ、今頃はまだロラント王国で過ごしていただろうな。
魔王国に来ようなんて考える事は無かっただろう。
「ふむ……そうだな、そなたを管理職に採用する事にしよう。どういう事をするかわかるな?」
「いえ、何も知りませんが」
管理職と聞いて想像するのは、何かを運営したり、部下を持って仕事をする事くらいだ。
何をするかなんて、ロラント王国で聞いても誰も知らなかった。
「……あ」
「どうしました?」
何やら唐突に、何かを思い出したようなアルベーリ。
「管理職とだけ言って、仕事内容を詳しく報せるのを忘れてたな。まぁ、それでもしっかり人間が来たんだ、それで良しとしよう。はっはっは!」
「いや、笑い事じゃない気がするんですが……」
こんな感じで魔王国は本当に大丈夫なのだろうか……?
これで200年、王が変わる事無く存続しているのが不思議だ。
「仕方ないな、我自ら仕事内容の説明をしようでは無いか……だが、その前に……」
「その前に?」
「マントを羽織って良いか? それと、服も着たいんだが……寒いから」
「……どうぞ」
寒いんなら何故今までその恰好でいたのか……。
まさか、筋肉トレーニング中に俺が来たからそのまま対応、という事でも無いだろうに。
執務室のようなこの部屋でする事じゃないしな。
「いやー、筋肉トレーニングをしていたら急な来客があったのでな。とりあえずマントを羽織れば良いかと思って机の上でポーズを取ってみたのだ」
「……そんままかよ!」
思わず突っ込んでしまったが、結局俺が考えた事そのままだった……ポーズを取る意味がいまいちわからないが、アルベールはこういう相手だと考えておこう。
俺の中の王というものへのイメージが、音を立てて崩れ去っているのは無視しよう。
「よし……ではまず、そなたの部下となる者を呼ぶとするか」
アルベーリは、ゴソゴソと装飾の派手な服を着て落ち着いたようだ。
指を打ち鳴らし、俺の部下になる人を呼んだ。
管理職と言うからには部下がいるのは当然だな。
指を鳴らした時に魔力を感じたから、何かを報せる魔法……というか合図だと思う。
しかし、どれだけ待っても誰も来ないんだけど……。
「……静かですね」
「……おかしいな……おーい、誰かおらぬかー!」
誰も来ない事に首を傾げながら、アルベーリは入り口の扉を開け、顔だけを外に出して呼びかける。
方法に文句を言いたくはないが、そんな呼び方で良いのか魔王国。
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