勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

龍央

文字の大きさ
35 / 84

第35話 勇者、危機を回避する

しおりを挟む


「あらあら……。貴方……とっても強そうですのね……」
「いえいえそんなそんな。私ごとき、奥様の足元にも及びませんよ」
「そんなご謙遜を……」

 お互いニコニコしながら話してるが、俺の背中には冷たい物が流れている。
 これはアルベーリの時と同じで、腕試しの流れのように感じる。
 俺の本能が告げている……この人とは絶対に戦うなと!
 命の取り合いとまでなれば勝てるだろうが、腕試し程度でやりあうと、トラウマを植え付けられる事になる予感がする。

「そんなに立派な角を持つ奥様に、一介の人間である私めが敵うわけありません」
「……そう? そうかしら?」

 角を褒めるように言って見れば、嬉しそうな反応をする奥様。
 確かに奥様の角は立派だ。
 二本の角は、ぐるぐると巻貝のようになっていてなお、アルベーリに近い大きさだ。
 魔族の角は強さの証明……アルベーリと同じくらいの大きさを、ぐるぐる巻きで維持しているという事は……実際の大きさはその倍くらいありそうだ。
 そりゃフランも怯えるし、アルベーリも逆らえないわけだよな。
 魔王国の魔王は最強の魔族がなるはずなのに、目の前に魔王より最強の魔族がいるという現実が信じられない。

「……王妃様は、角を小さく見せて力を隠しているんです。今は家の中だから多少は気を抜いてあの大きさですけど、外に出たら私よりも小さくなります」
「……魔族の角って自由に大きさを変えられる物だったのか?」
「どうかされましたか?」
「いえ、王妃様の角を羨ましいと話していただけでザマス」
「あらあら、フランツィツィーちゃんは正直ねぇ……」

 適当なフランの誤魔化しにも嬉しそうな奥様。
 角を褒められる事がツボみたいだな、忘れないようにしよう。
 しかし、魔族の角が大きさを変えられるなんて初めて聞いたぞ?
 もしかしたら、奥様が特別なのかもしれないが……。

「何だか気分が良いですね……あなた、すぐに客間を用意して下さいな」
「わかり申した! 今すぐに!」

 奥様に敬礼して奥へと掛けて行くアルベーリ。
 力関係がはっきりしている夫婦なのは良いが、それで良いのか魔王……。


「ベアトリーセに勝つために、我は訓練を必要としているのだ」

 客間をアルベーリに用意させ、俺達は少しだけ待ってそこへ通される。
 今は奥様が席を外しているため、アルベーリに事情聴取しているところだ。

「それであんなに筋肉にこだわったり、トレーニングをしていたのか……」
「うむ……あ、いや……筋肉は好きだがな?」

 筋肉好きは元からだったらしい。

「目指す筋肉の指標にしようと、入り口に石像を作らせて飾ったのだが、その日のうちに粉になるくらいまで粉砕されてな」
「筋肉の石像なんて、見苦しいだけだからそれは仕方ないだろう」
「私も、家にそんな物が飾られたら破壊しますね」

 俺の言葉にフランが頷いて同意する。
 ちなみに、もう縄を解いて自由にしてある。
 ここまで来たら逃げ出す事は無いだろうからな。
 ……この邸宅……というより、奥様に会う事になるから逃げ出そうとしたんだなぁ。

「むぅ……素晴らしい筋肉だったのだが……」
「お待たせしました。今日は存分に楽しんで帰って下さいね」

 アルベーリが石像を惜しんでるあたりで、奥様が戻って来る。
 瞬間的に椅子に座り直して姿勢を正す俺達……夫であるアルベーリも同様だ。
 奥様が話してすぐに、訓練された兵士のような動きでメイド達が食事を運んで来る。
 メイド達も、奥様の機嫌を損ねないように必死なのかもしれない……楽しめと言われても、こんな雰囲気じゃあな……。


「何か……肩が凝ったな……」
「我が家ながら、疲れる……」
「今度は逃げて見せます……」

 食事も終わり、俺達は邸宅を出て王城へと向かっている。
 全員、疲れからか歩く速度は遅い。
 ……あんなに緊張する食事は初めてだったな。
 空見上げ 凝ってる肩を 揉みながら トボトボ歩く 魔王と勇者
 ……何故か唐突に思い付いたが、季語なんて知らねぇ。


しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

処理中です...