勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

龍央

文字の大きさ
34 / 84

第34話 勇者、戦慄する

しおりを挟む


 休日二日目。
 今日は昨日のように訓練をしたりせず、のんびりして休む予定……だった。
 過去形なのは、もちろんのんびり出来ていないからだ。

「……さぁ、ここだ」
「魔王が王城にいなくて良いのか?」
「城の中は息が詰まるからな。だから私は別の場所に家を建てて、そこに住んでいるのだ。もちろん、家族も一緒にな」
「自由だな……」

 俺は今、アルベーリの住んでいると言う家の前にいる。
 一国の王が、城以外の場所に住んでいて良いのか疑問だが、それでこの国は今の所何も無いんだ、細かい事は気にしない事にした。

「また私……こんな扱いで……」
「今回も逃げ出そうとするからだろ? 一応、俺の部下なんだ……一蓮托生と行こうじゃないか。ほらっ」
「きゃん! ……もうちょっと丁寧に扱って下さい。レディに対して失礼ですよ?」

 丁寧に扱うのは、ネジの緩んでないまともなレディが相手の時だけだな。
 フランのように丈夫で、目を離したら何をするかわからないようなレディの扱いは、これで十分だ。
 俺は、フランが縛られている縄の先を引っ張ったまま、アルベーリの邸宅へと入った。

「……予想と違って立派だな」 
「どんな想像をしていたんだ?」
「筋肉だるまの石像が飾られてたりとか?」
「……飾ってあった石像は妻に粉砕された……」

 その時の事を思い出して落ち込むアルベーリ。
 というか、飾ってあったのか……筋肉が好きでもそれは悪趣味過ぎるだろう。

「ようこそいらっしゃいました。夫がいつもお世話になっております……」

 邸宅に入ると、すぐ絶世の美女と言っても過言ではない女性が、丁寧にお辞儀をして出迎えてくれた。
 ……この人がアルベーリの妻だと……?
 世の中が不公平な事を実感した瞬間だった。

「ベアトリーセ、出迎えご苦労」
「王妃様にあたりましては、お日柄も良く、ご機嫌麗しく!」

 アルベーリは普通に話しているが、何故かフランが異常に緊張して何を言ってるのかよくわからない。
 どうしたって言うんだ?

「あらあら、フランツィーツちゃん、可愛い飾りを付けて楽しそうね……」
「いえいえいえいえ! これは飾りでは無く、無実の私を捕らえる邪悪な物なのです。決して楽しい物ではござらんですます!」
「何を言ってるんだお前は……?」

 フランの緊張の仕方が尋常じゃない。
 フランの名前を間違えてるのに、こいつが突っ込みもしないなんて……。
 出迎えてくれた女性の方は、王妃と呼ぶのに相応しく、見目麗しく朗らかな笑顔を浮かべているだけで、別段緊張するところは無いはずだ。
 ……おや、あの角は……?

「ベアトリーセ、客をもてなすのだ」
「あ”?」

 アルベーリが、命令口調で王妃様……奥さんに言った瞬間、周囲の空気が変わった。
 あれ……今日ってこんなに寒かったっけ?

「さっきから偉そうですわねぇ、アルベーリ? どうして貴方が妾に命令出来ると思っているのかしらぁ?」
「す、すまなかった! 我が調子に乗っていた! 久方ぶりに友人を招待したからつい、良い所を見せようと思ってしまったのだ!」

 朗らかにしていた先程とは打って変わり、アルベーリを睨みつけて片手で服を掴んで持ち上げた。
 アルベーリの方は、その手から逃げる事も出来ず謝るばかりだ。
 ちなみにフランの方は、縄に縛られたままブルブル震えながら怯えていた。
 ……フランが緊張していた理由がわかった……これは下手な事を言えないな。

「……おっと。……あらあら、私ったら。失礼しました、お客様の前で……」
「いえ……気にしていません。本日はお招きに預り、ありがとうございます」

 俺の事を思い出した奥様は、アルベーリを放して朗らかな表情に戻る。
 アルベーリとフランを見ていてもそうだったが、魔王国の魔族にまともな者はいないのか?
 決して怖かったわけではない……。


しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

処理中です...