勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

龍央

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第44話 勇者、部下と言い合いをする

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「GUUOOOOOAAAAA!」

 フランの作った焚き火をまき散らして、地面から人の顔が出て来た。
 ……オッサン?

「ああぁぁぁぁ! そいつです! そいつがブリザードです!」
「このオッサン顔がそうなのか?」

 地面から出て来たのは、40~50代のオッサンの顔だ。
 くたびれて見えるその顔は、どこか哀愁を誘う。
 というか、この顔の色……茶色って事は……。

「おい馬鹿フラン! お前が焚き火をしようと掘り当てた地面がブリザードじゃねぇか!」
「そんな事言われてもー! というか何で、氷の魔物なのに茶色いんですかー! そんなのが地面に埋まってたら土と勘違いするじゃねぇですか!?」
「知らねぇよ! 確かめないお前が悪いんだろ!」

 どおりで、フランが簡単に雪を掻き分けただけで地面が出てくるわけだ。
 視界が悪くなる程吹雪いてる山の中で、軽く雪をどけて土の地面が出てくるわけないもんな。
 ブリザードをそのままに、俺とフランは吹雪の中で叫び合う。

「もうお前がブリザードを探せよ! 適当にそこらの雪をどけたら出て来るだろ!」
「嫌ですよ! ブリザードは人を簡単に凍らせるんですよ? そんな相手、カーライルさんがしてくれないと氷の美女という私ができ上がります」
「あのー、もしもし」
「言うに事欠いて誰が氷の美女だ! 氷の馬鹿女の間違いだろ!」
「えーと……すみませーん」
「馬鹿って言ったー! 馬鹿って言った方が馬鹿なんですー!」
「ちょっとー、すみませーん!」
「何だようるせぇな! 今この馬鹿と話してんだ! 誰か知らないが邪魔するな!」
「ひぃ!」

 フランと言い合っていたら、何処からかオッサンの声がしたが、邪魔なので怒鳴って黙らせた。
 これで思う存分フランを言い負かせ……る?

「……誰だ、今誰が喋ったんだ?」
「は? 知りませんよ。とうとう幻聴が聞こえ始めたんですね。かわいそうに……」
「私、私ですよー、今喋ったのー」
「……は?」
「……え?」

 ふと冷静になると、俺とフラン以外の声が聞こえて来る事に気付く。
 こんな場所、俺達以外にいるわけ無いんだが、声をした方を見ると、そこにはさっきと同様ブリザードがいた……。
 え……ブリザードって喋れるの!?

「ようやく気付いてくれましたね……痴話喧嘩は犬も食わないって言いますが、ブリザードも食べませんよ?」
「痴話喧嘩では無いんだが……それより、お前は本当にブリザードなのか?」
「はい、もちろんです。どこからどう見てもブリザードです」
「確かに魔物の情報として聞いていた姿と合っていますが……オッサンですね」
「オッサンとは失礼な。まだ私は生まれて20年も経っていませんよ」

 20年経っていなくても、顔が仕事に疲れたオッサンだからな……そう呼ばれても仕方ないだろう。

「えーと、ブリザード?」
「はい?」
「俺達を襲ったりしないのか?」
「まさか! そんな野蛮な事はしませんよ。我々ブリザードは平和を愛する種族です。人を襲うのは正気を失ったブリザードだけです」
「そ、そうなのか?」
「ではカーライルさん。サクッとブリザードを退治しましょう」
「おいフラン。お前はこの、平和を愛するとか言ってるブリザードを退治できるのか? 襲って来たりしないんだぞ?」
「え? 全然できますけど。……ぴぃっ! ほら。見苦しいオッサンが消えてくれるので、気持ち良いくらいですねこれ」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」

 
 俺がブリザード相手に躊躇っていると、フランが無造作にかかとを、今まで話していたブリザードに叩き込み、粉々に砕け散った。
 断末魔の叫びを上げながら散って行くブリザード……哀愁を誘う、疲れた顔をしたオッサンの末路に、何故か涙が出そうだ……。


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