勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

龍央

文字の大きさ
48 / 84

第48話 勇者、部下を引きずる

しおりを挟む


「魔法を掛けたんだよ、馬にアルベーリが魔法を掛けたようにな。俺のは人相手だがな」
「それは人に掛けて良いぃぃぃぃ! 魔法なんですかぁぁぁぁぁ!? ……ひぐっ!」

 あ、舌噛んだ。
 言わんこっちゃない……あ、考えただけで言ってなかったか。

「いらいれふぅぅぅぅぅ!」
「まぁ、無理して喋らずとにかく走れ。これなら王城まですぐに着くぞ」

 強制的に走らされてるフランは、実はアルベーリの魔法が掛かった馬よりも早い。
 この分なら、夜になる前に帰る事ができそうだな。
 ……魔法が解けた時の反動は……まぁ、今は考えないでおこう。

「ぐふっ! ……」
「あー……止まる方法も考えて無かったか……そう言えば」

 王城が近づき、城下町を囲んでいる城壁に頭から突っ込むフラン。
 前も同じような場面を見たが……こんなに簡単に人って石壁に突き刺さるんだなぁ……。

「よっこい……せ!」
「ぶはぁ! 酷いですよカーライルさん! なんて魔法を使うんですか! あれは人に使っちゃいけない魔法です! まったくこれだから常識を知らない勇者は………ん? あれ?」

 足を引っ張って城壁から抜いてやると、すぐに叫び出すフラン。
 元気だな……しかし一番常識の無いお前に、常識を知らないとか言われたくないぞ。
 お、叫んでる途中で異変に気付いた……もう来たか……予想以上に早かったな。
 
「ひぁぁぁぁぁ! 痛い痛い痛い! 足がぁぁぁ! 体がぁぁぁ! 何ですかこれぇぇぇぇ!」

 悲鳴を上げて地面をのたうち回るフラン。

「あー……魔法の反動だ」
「痛いですよぉぉぉ……反動って何ですか!? ひぃぃぃぃ!」

 涙目になりながら、痛みを堪えて聞いて来る。

「あれだけの速度で走ったからな。俺は大丈夫なんだが……慣れて無いフランだとこうなる。……つまり……筋肉が悲鳴を上げて痛みが出てるわけだな。人は限界を越えて活動してはいけないと言う、戒めだな、うむ」
「何が戒めですかあぁぁ! 痛い痛い! 変な魔法を掛けるからぁ! あぁぁぁ痛いですぅぅぅぅ!」
「だが、おかげで早く帰れただろ?」
「こんな痛みがあるなら早く帰れなくても良かったですよぉぉぉぉ!」

 むぅ、不評だったか……。
 まぁこんな状態になるのなら、それも当然か。

「さて、アルベーリの所へ報告に行くか」
「うぁぁぁ、待って下さいよぅ、置いて行かないで下さいうよぅ……」
「仕方ないな……」

 痛みに耐えながらも、俺に置いて行かれないように動き出すフランだが、その足取りは当然遅い。
 痛みがある筋肉を使わないようにしても、足全体が痛いから何をしても同じなんだろう。
 置いて行っても良かったが、後でうるさそうだから、腕を掴んで引きずって行く事にした。

「ひぁぁぁ! 体の内側も外側も痛いですぅぅぅぅ!」
「うるさい奴だなぁ……」

 城下町にフランの悲鳴がこだました。
 悲鳴を上げるフランを引きずって歩いていても、動揺しない城下町の魔族達は凄いな。

「ふっ……ほっ……はっ……ん?……ふっ……はっ……おぉカーライル……ふっ……ふんっ……戻って来たか……はいっ……ほいっ……」
「……何してんだ?」
「見てのっ……通りっ……トレーニングっ……だっ」

 フランを引きづったまま、アルベーリの執務室に入ると、ブーメランパンツのみで筋肉トレーニングをしている魔王がいた。
 確か、奥様に負けないように鍛えてるとか言ったか……筋肉を鍛えるだけで勝てるのか?
 あの奥様に勝とうとしたら、筋肉以外の何かでないといけない気がするが、アルベーリには教えないでおこう……面倒だから。

「それにして……もっ……どうしたっ……んだっ……フランはっ」
「話しづらいから、トレーニング止めろよ」
「おぉ、そうだったなっ……っと。つい楽しくなって、やめ時を失っていた」
「トレーニングが楽しいもんか?」
「段々と鍛えられてるとわかるのは楽しいぞ。筋肉は嘘をつかないからな。そなたもやってみるか?」
「……遠慮しておく」

 むさ苦しいオッサンと一緒に体を鍛える趣味は無いので、お断りしておいた。


しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...