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第52話 勇者、部下の荷物に驚く
しおりを挟む「ふわぁ~……」
欠伸をしながら体を起こす。
ブリザードが出て来る悪夢のせいで、ろくに寝た気がしないな……。
夢見が悪かったおかげで、何となくだるく感じる体を動かし、適当に身支度をして執務室へ向かう。
今日はどんな仕事が来るのか、ちょっとだけ楽しみだな。
なんだかんだ言いつつも、ロラント王国には生息していない魔王国特有の魔物を相手にするのが楽しくなって来てるみたいだ。
……まぁ、ブリザードみたいなのはもう勘弁してほしいが。
「入るぞー」
「おい、ノックくらいしろ」
「あ、忘れてた」
ここ最近、親しく話しているが、相手は一応魔王。
筋肉を鍛えるのが趣味で、今もブーメランパンツで過ごしてるような奴だが、それでも一応ノックをするべきだな。
親しき仲にも礼儀あり、だ。
「まったく、今度お前の部屋にノック無しで突撃するからな……裸で」
「裸は止めろよ! せめて服を着てから来てくれ!」
アルベーリならやりかねないからな、強く言っておかないと……。
「おはようございます、アルベーリ様。カーライル様!」
「おはよう、フラン」
「おう、フランか。……また窓から来るんだな」
元気よく挨拶をしながら、執務室の窓から入って来るフラン。
何故いつも窓からなのか……やっぱりもうちょっと勢いを付けて、窓から叩き落しておいた方が良かったか?
窓にトラウマを植え付けるために……。
「何か不穏な事を考えてる気がします……」
「……そんな事はないぞ? それより、その荷物はどうした?」
「これですか? これは……こうなってます!」
どこぞの泥棒のように、唐草模様の風呂敷を背負っているフラン。
背負ってるフランよりも大きくて重そうだが、そんな物を持って窓から入って来るとか……いつもながらどうやってるんだ……?
「……人間か?」
「そうです、昨日知り合いました。楽しそうなので、無理矢理ここに連れて来たんです!」
「それは拉致と言わないか? しかし人げ……っておい!」
「どうしたんですか、カーライルさん?」
フランが風呂敷から二人の人間を出して、ソファーへと投げ出す。
その人間は気を失っているようだが、俺にはとても見覚えのある二人だった。
「リィムとマイアじゃないか! 何でこんな所に!?」
「え? 知り合いですか? 昨日、カーライルさんに窓から落とされた後に知り合いました。暇だったので、私の家に泊めたんです。……二人共気絶してますねぇ……。風呂敷に包んだ時は元気だったんですけど……?」
「不思議そうにしてんじゃねぇ! 風呂敷に包んで、窓に張り付いたりしてたら気絶もするわ!」
風呂敷の中で体が固められたうえ、窓から執務室に入るために無茶な動きをしたんだろう。
二人共、目をぐるぐるとさせて意識を失っている。
ちなみに執務室は魔王城の5階にあり、魔王がいる部屋に侵入させないためか、外側に足を引っかけるような場所は無い。
そんな場所に、フランがどうやって入って来てるのかは本当に謎だな。
「おい、リィム、マイア、大丈夫か!?」
「知り合いのようだな。人間の女二人か……昨日そなたを訪ねて来た者ではないか?」
「そうなんですか?」
リィムとマイアの二人に近付いて声を掛ける。
アルベーリが言う通り、恐らくこの二人が昨日俺を訪ねて来たんだろう。
まさか、リィムが来るとは思わなかった……親父殿はどうしたんだ?
それにマイア……ルインと一緒になって俺を追放した奴なのに、何故リィムと一緒にいるのか。
「ん……カーライルの声?」
「……聞き覚えのある声がするなのよ」
「気が付いたか!?」
「ふむ……フランに振り回されても、すぐに気が付くか……中々の者のようだ」
「もう少し振り回して持って来れば良かったですかね?」
「それはやめてやれ」
二人が声を漏らしながら、目を開ける。
アルベーリ、もっとフランにきつく言ってくれ……昨日初めて会った人間を気絶するまで振り回すとか、どういう神経してるんだこいつ……?
とにかく、頭のおかしいフランと、筋肉しか興味のないアルベーリは置いておいて、今はこっちの二人だな。
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