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第64話 勇者、部下に怒られる
しおりを挟む「あ……忘れてた……」
「もしかして、ずっと引き摺って来たのか? ……むごい事を……ナムナム……」
アルベーリがフランを見て、手を合わせながら拝んでる。
……その拝み方、魔王国の宗教かなんかか?
「いや、まだ死んでないだろ」
「何だ。つまらん」
面白いかどうかで人を殺すな。
まぁ、俺の手の先にいるフランは、地面に突っ伏したままピクピクしていて、虫の息っぽいけどな。
「しかし、何故またフランを引き摺っていたのだ? どうせ粗相でもしたんだろうが」
「いや、一刻も早くお前に文句を言うためにだな……」
無駄な仕事をさせられた事に対して、何か文句を言ってやらないと気が済まなかったからな。
アルベーリは粗相をしたと決めつけているようだが、こいつは普段からそんな感じなのか……いやまぁ、これまでの事を考えるとわからなくもないが……。
「虫の息だが……放っておいたら復活するだろ。そんな事よりアルベーリ……」
「酷いですよカーライルさぁぁぁぁぁん!」
「うぉ!」
フランから手を離して、放っておけば良いと、アルベーリに改めて文句を言おうとしたら、急に起き上がったフランが叫んだ。
直前まで虫の息で、意識があるかどうかも怪しい状態だったのに、叫べるなんてな……さすがに驚いたぞ?
というかやっぱり、フランの復活早すぎだろ……どれだけ丈夫なんだこいつは……?
「待ってって言ったのに……待ってって言ったのにぃぃぃぃぃ!」
「そ、そうだったか? すまん、聞こえなかったんだ」
もしかして、城下町で聞こえた空耳の事か?
あの時、フランが声を出していたのかもしれないが、顔を地面に向けていたから、よく聞こえなかったんだろうな。
「アルベーリ様、聞いてくださいよ!」
「う、うむ。何だ?」
フランはアルベーリにぼろぼろの服、ぼろぼろの顔のままで詰め寄る。
アルベーリの方は、その剣幕に引き気味だ。
「カーライルさんったら酷いんですよ! 私が特に何もしていないのに、山からずっと引き摺って……しかも、私が待ってってお願いしているのも聞いてもらえず……ここまで引きずられてたんですから!」
「そ、そうだな。それは酷いな……しかし……ここまで引きずられて来て、よく生きていたな……」
アルベーリが小さく呟くが、俺もそう思う。
引きずって来たのは俺だが、常人なら途中で死んでるだろう。
なにせ、普通の馬よりも速度を出していたからな。
服や顔はぼろぼろになって傷だらけだが、何故それだけで済んでるのか理解できない。
「まったくカーライルさんったら……いつもいつもいつもいつも!」
「わかった、わかったから落ち着け、な?」
アルベーリに延々と愚痴るフランを見ながら、俺はさっきまで文句を言おうとしていた気力がしぼんでいくのを感じた。
でもまぁ、狙ってやったわけじゃ無いが、結局はアルベーリが大変そうだから良いか。
「ふぅ……ようやく一息つけたな」
アルベーリの執務室を出て、うるさいフランをいなして風呂に入り、ようやく部屋に戻って来た。
さすがに復活が早いとはいえ、火山からここまで引きずられたフランは疲れた様子で、自分の家に帰った。
今日は変に絡まれる事が無いから、静かで良いな。
……今度から、フランを疲れさせるために引き摺って移動するか……?
いや、その後のフランがうるさいからダメか……。
「しかし、ルインが捕まった……か」
無駄な事を考えるのを止めて、以前のパーティメンバーの事を考える。
あのずる賢いルインが、まんまと捕まる事になるとは考えて無かった。
「……だが、このまま処刑されるまでのうのうと過ごすとは……思えないよな……」
勇者を騙った詐欺だ、国王の怒りもあって処刑は免れないだろうが……果たしてルインが抵抗もせずに受け入れるだろうか……?
ルインの事だから、大きな問題にでも発展しそうな何かをしそうな気がする……。
何となく、嫌な予感を感じながらベッドに潜り込んだ。
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