勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

龍央

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第75話 勇者、嫌な予感を感じる

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 さっき初めて知った勇者の設定、ドラゴンが赤子も同然となる……というのと同じで、ドラゴンは勇者を感知する事ができるのかもしれない。
 ……俺の事はすぐに気づかなかったみたいだが……。

「んー……いつじゃったかのう……? 昨日のような気もするし……100年以上前のような気もするんじゃが……人間が勇者になる時は、必ず感知できるんじゃがな……生存本能的な感じで……じゃが……あれは……そうじゃ! 今朝の事じゃ!」
「今朝……?」

 確か今朝は……変な感覚がして目が覚めたんだったな……。
 俺が勇者になったのは、10年以上前の事だから、このドラゴンが言っている事とは違うはずだ。

「今朝勇者になった人間がいるというのか? 何かの間違いじゃないのか?」
「何じゃ? お主は勇者になったばかりじゃないのか? お主が今朝、勇者になった者なのかと思ったぞ?」
「俺はもう、10年以上前から勇者だ。俺がいるのに、他の人間が勇者になれるはずが……」
「勇者は人間の中で、1世代に1人のみ……じゃったか。それならおかしいのう……確かに今朝、勇者になった者を感じ取ったのじゃが……あと、10年かそこらの前に勇者になる者がいた感覚はなかったのじゃ。だから妾も変に思わなかったんじゃぞ?」

 ドラゴンの言う通り、勇者は1世代に1人しかいない。
 理由は知らないが、これが絶対だという事は伝わっている。
 勇者になった人間がなんらかの理由で死んだ後、何を基準にしているのかは知らないが、10歳の儀式で勇者になる事ができるのだ。
 だから、俺という勇者がいる限り、他の人間が勇者になるはずがない……という事だったはずなのだが、ドラゴンの言う事が正しければ、2人目の勇者が現れた……という事だ。

「どういう事だ……俺はまだ生きているぞ……何故他の勇者が?」
「おかしな話じゃのう……まぁ、すぐにわかるじゃろう。その新しい勇者はこの魔王国に向かっておるようじゃぞ?」
「なんだって? ……何故それがわかる?」
「まだ新しい勇者じゃからの。力の使い方を知らんのじゃろう。溢れる力をそのままにしておる……じゃから、妾のシックスセンスにビンビン引っかかるのじゃ」
「難しい言葉が言えて、えらいですねー。よしよしよしよし……」

 シックスセンス……第6感……? 感覚的なものなんだろうが……一応ドラゴンの言う事だからな、信用できる……かも……?
 フランに撫でまわされる姿を見ていると、信じて良いのか悩むが……。

「新しい勇者……何故魔王国に……?」
「そこまでは妾も知らんのじゃ。本人に聞けば良いじゃろ? さすがに、古の予言のため……とは思えんが……」
「古の予言? それはなんだ?」
「妾が生まれるよりも前からある約定じゃ。『魔王、世界を混乱に陥れる時、勇者が現れ、その野望を打ち砕く……』とか言われておったのじゃ。歴代の魔王が国の平静を保つ事以外の事はしていないはずじゃから、その予言が正しいのかどうか、誰にもわからんがな」
「魔王……勇者が……」

 そう言えば、今朝のアルベーリは、勇者を迎え撃つ魔王とか言っていたな……。
 この予言とやらを知っていたから……というのは、アルベーリを買いかぶり過ぎだろう……あれは単なる筋肉バカだ。
 それはともかく、新しい勇者は何故か魔王国に向かっているらしい……何か不穏な事が起こる予感がにわかに湧いて来た。

「今すぐ帰ってアルベーリに報せるべきだな、この事は」
「帰るのじゃ?」
「あぁ、その勇者の事が気にかかる。何も無ければ良いんだが……」

 胸騒ぎを感じて、ドラゴンとの話を打ち切り、王城へと帰るために立ち上がる。

「えぇぇ、もう帰るんですかぁ? もっとこのドラゴンちゃんと戯れましょうよぉ。まだ日が暮れるまで時間もあるんですからぁ」

 なんてフランがのたまった。
 話してる間中、ドラゴンを撫でまわしてるだけでは足りないのか、こいつは……。


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