神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

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それぞれの想い~モニカ編~

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 踊る獅子亭は本当に戦をしているような忙しさだったの。
 そんなある日、母さんが決心して人を雇う事を決めたみたい。
 私のために人を雇わなかったみたいだけど、もう私子供じゃないんだけどな……。


 募集を出してすぐ働きたいと言って来る人がいた。
 こんなにすぐ来るものなのかな?
 リクと名乗ったその人は不思議な雰囲気を持った人だったわ。
 歳は私と同じくらいだけど、少しだけ大人びて見えた。
 後で聞くと、その時は本当にお金も無くて途方に暮れてたみたい。
 お金も無く持ち物も無くこの街に来てさまようってどういう事なのかしら?
 その人はすぐに獅子亭に馴染んだわ。
 父さんも母さんもリクさんをすぐに気に入ったみたい。


 リクさんが働き始めて1カ月、リクさんに初めての給料が出たわ。
 ヘルサルの街を案内して買い物だなんて、デートみたいじゃない?
 そんな……私は浮かれてないわよ。
 その日はちょっとだけ、いつもより出かける準備を入念にしたけどさ……。


 リクさんが髪飾りを買ってくれた!
 私が一目見て気に入った髪飾り、ちょっと派手で私に似合うか悩んでたんだけど、私の髪に付けてくれて似合うって言ってくれた!
 でも、その後父さんや母さんにも何か買うって言ってたから多分お世話になったお礼のつもりなんだと思う。
 少しだけがっかり……。
 でもその日から私の寝る前の日課に髪飾りを眺めて寝る事が追加された。


 リクさんが隣街のセンテに行っちゃった。
 父さんがミスをしたからだけど……そのフォローを新人のリクさんに任せるなんてどういう事かしら。
 とりあえず、しばらく父さんにはお酒禁止と言っておいた。


 リクさんが帰って来ない……。
 センテの街とこの街の往復で何かあるような事は無いはずなんだけど。
 馬車に乗って街道を進むだけで危ない事なんてないはず、街道には魔物はほとんど出ないし……。
 そういえば最近野盗が出るって父さんも言ってたっけ。
 まさかリクさんが野盗に襲われたり……でも馬車が襲われたって話は聞かなかった。
 もしかしてリクさん、馬車に乗らずに帰って来てるんじゃ……まさかね。
 リクさんがどこかへ行って帰って来ない夢を見た。
 遠くに行ってしまうリクさんを追いかけるけれど、絶対に追いつけない、そんな夢……。
 起きた時、私は少しだけ泣いていた。


 リクさんが帰って来た!
 心配されてた事にすごく申し訳なさそうに謝っていたけど、無事で帰って来てくれたならそれでいいんだよ。
 でも、その頭の犬は何かしら?
 ちょっと普通の犬とは違う雰囲気で圧倒されるような気配があって怖いんだけど……。
 白い毛の犬なんていたかしら?


 犬はドラゴンだった。
 母さんから聞いたおとぎ話で出て来るドラゴンだ!
 こんなにモフモフで可愛いだなんて知らなかった。
 暇があればモフモフを撫でていた。


 リクさんの魔法、凄すぎて何も言えない。
 理解できないの方が正しいかしら?
 何なんだろう、あの魔法……リクさんって凄い人なんだなぁ。 
 あと、ちょっと寒いわ……。


 リクさんと一緒に冒険者になる決心をした。
 このままリクさんが獅子亭で働いてくれるのが一番だけど、リクさんの力はそれだけで済むとは思えない。
 もし冒険者になって遠くへ行ってしまったら私はここで取り残される……そんな想像をして怖くなった私は一緒に冒険者になる事を決めた。


 父さんと母さんの特訓は辛かった。
 獅子亭の仕事もしながらだから、お客さんの対応で店の中を動くのが辛かった。
 朝起きる時、起き上がるのが辛い時もあった。
 けど、冒険者になるためだから頑張る!


 冒険者登録試験が終わった。
 私はDランクになるみたい。
 初期でDランクは珍しいみたいだけど、驚きは少なかったわ。
 なんせリクさんが前例の無いCランクスタートだから、私がDランクなんて霞むよね。
 さすがリクさん。
 でも、副ギルドマスターのヤンさんを吹っ飛ばした時はちょっと溜め息が出た。
 父さんにあれだけ言われてたのに……。


 リクさんと初めての冒険者の仕事依頼。
 魔物調査をしてる時に見つけたゴブリン達の群れに槍を使って切り込む。
 父さんの特訓と比べるとゴブリンなんて楽な方だったわ。
 特にリクさんの魔法が先制で放たれたからさらに楽になった。
 しかも一番強そうなゴブリンジェネラルはリクさんが簡単に倒してしまった。
 こんなに簡単に討伐を終わらせていいのかしら?
 でも、問題はその後発覚した。
 ゴブリンジェネラルがいた事でゴブリン達が軍を率いてやってくるらしいから。


 それからはヘルサルの街を防衛するための準備で忙しかったわ。
 センテの街へリクさんと一緒に行った時、Cランクの女性冒険者のソフィーさんと知り合った。
 リクさんに話しかける時、嬉しそうな顔をする女性だったわ。
 綺麗な人で、大人の魅力が溢れる彼女を見ていると何だか面白くない、せっかくリクさんと二人で来たのに……。
 リクさん……センテの街に来た時にこんな人と出会ってたなんて……。
 ソフィーさんはエルサちゃんに夢中だった。
 何か壊れ始めた時は驚いたけど、エルサちゃんの可愛さは私にもわかる、うん、あれは夢中になるよね。
 しかもソフィーさんは獅子亭の料理が素晴らしいとべた褒めだった、父さんの料理を褒められると悪い気はしないなぁ。
 ソフィーさんは悪い人ではないみたいね、なんだか仲良くなれそう。


 防衛に参加するまで父さんの特訓を受けて毎日くたくただった。
 けど、リクさんのお茶を飲んで、エルサちゃんのモフモフを撫でてると疲れもすぐに忘れられた。
 リクさんは私よりも色々な事をやってたからもっと疲れてるはず、私も頑張らないと!


 ゴブリン達がやって来た。
 予想より多い数みたい。
 私は周りを見る余裕なんて無かった。
 必死にただただ目の前のゴブリンに対処するだけで精一杯だった。
 運良くリクさんや父さん達と同じ部隊になれたけど、足手まといになっちゃいけない。
 この部隊は精鋭部隊らしくて、一番激しく戦闘をする予定らしい。
 あれ? 逆に運が悪かったのかしら?


 余裕も無くただゴブリン達を槍で倒す事だけを考えた。
 1匹1匹は大したことはないんだけど、数が多いから倒しても倒してもきりがないわ。
 たまにだけど、こちらの槍を受け止めるゴブリンもいたから厄介だったし。
 どれくらい戦ってるのか分からなくなって来た……疲れで動きが鈍って来てるのがはっきりとわかるわ。
 でも、誰かに助けてもらうわけにはいかない。
 皆必死なはずなんだ。
 私達の街を、リクさんといられる獅子亭を守らなきゃいけない。
 ゴブリンの血飛沫が舞う戦場で、私は気力だけで戦い続けた。


 父さんに刺さってる矢を見た。
 私が気付いたのは偶然だった。
 ようやく交代の部隊が出てくれると思った時、視界の隅で弓矢を引き絞るゴブリンが見えた。
 私はリクさんに向かって叫んだけど、私が動こうにも疲れて動けない。
 このままじゃリクさんは……!
 最悪の事態になるのを防いだのは父さんだ。
 リクさんを庇って肩に矢が刺さってる。
 私の心を占めていたのは父さんが怪我をした事じゃなく、リクさんを狙ったゴブリンへの怒りだけだった。
 父さん、ごめんね。
 怒りの矛先を向けるゴブリンは既に母さんに倒されてたから、怒りは行き場を失ってしまったわ。


 俯いたリクさんを心配して近づこうとした時、リクさんから尋常じゃない魔力はあふれ出したわ。
 これだけの魔力がある人なんて実在するのかしら、少し現実感の乏しい光景だった。
 リクさんは私達に逃げろと言って、魔力を放出してた。
 私は父さんを支えながら門へと向かったけど、悔しかった。
 あんな魔力を放つリクさんに対して恐怖心は全くなかったけど、そんなリクさんを支えてあげられない自分に対して悔しくて仕方が無かった。
 置いて行かれたような気さえしていたわ。


 門では私達の呼びかけに答えずその場に留まる人達がいたけど、それはエルサちゃんが大きくなって全部解決。
 エルサちゃんには乗せてもらった事があるけど、あれよりさらに大きくなれたんだね、ドラゴンって凄いなあ。


 私達は獅子亭に駆け込んで父さんの治療をしようとしたわ。
 その時、今の季節ではあり得ない程の熱が街全体を包んだ。
 私は外に出て西を窺った、見えたのは白い柱。
 あれは何なのかしら。
 綺麗で触れてはいけないものだと思うのだけど、どこか優しい色合いだなと思った。
 全身が汗ばむ程の熱気が辺りを包んでいるけど、私に恐怖心だとかは全く無かった。
 西に見える白い柱も、ここまで来てる熱の中にもリクさんの魔力が感じられたから。
 むしろリクさんの優しい魔力に包まれてるような気がして、少し心地良かった。
 

 あれからすぐ、リクさんが倒れているのを発見されて獅子亭に運び込まれた。
 リクさんはただ寝てるだけらしい。
 私は少しだけ取り乱したけど、すぐに落ち着いた。
 何となく……リクさんは必ず起きてくれるってわかったから。
 数日もするとリクさんの寝顔を見るのが少しだけ楽しみになった。
 けど、やっぱりリクさんの淹れたお茶を飲んだり、話して笑ってるリクさんを見たいな。


 私は寝てるリクさんの顔を覗き込んでいた。
 あのゴブリン達の襲撃から1週間以上経ってる。
 そろそろ起きてもいいんじゃない?


 寝顔を見ていると、リクさんがうっすらと目を開けて、ようやく起きたのに気付いた。
 
「リクさん、おはよう。……随分寝てたけど、よく眠れたかしら?」

 私は目を覚ましたリクさんを見て泣きそうになるのを堪えながら、笑顔でリクさんに挨拶をした。


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