神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

文字の大きさ
54 / 1,955

リクの強度とエルサのモフモフ強度

しおりを挟む

 ヤンさんやクラウスさん達との話しを終えて数日、ようやく街の人達が集まる事が少なくなってきた。
 それでも街を歩いてたら声を掛けられることが多いけどね。
 冒険者ギルドに行って依頼書を見てみたり、ヤンさんと話したりするための獅子亭からの往復だけで少し疲れるくらい声を掛けられた……。
 そういえば、初めてヘルサル冒険者ギルドのギルドマスターと会った。
 どこかマックスさんを彷彿とさせる豪快なおじさんだと思ってたら、巨漢を窮屈そうに折り曲げて街を守った事に対する感謝の土下座をされた時には驚いたよ。
 俺がドラゴンを従えてると思ってて、やたらと恐縮してたのが印象に残った。
 ……建物の奥から出て来た時は豪快にヤンさんの背中を叩きながら大きな声で笑ってたのになぁ、俺を見た途端土下座って……センテの街も含め、冒険者を死なせなかった事がギルドとしては喜ばしい事とは言ってたけど。
 そんな事もありつつ、中々冒険者依頼を探しても見つからなくて少し困ってた。
 どうやらギルド側は、俺に合わせた依頼をしたいらしく、低ランクの依頼で誰も受けてなさそうなのを選ぼうとすると受付の人やヤンさんに止められた。
 冒険者らしいというか、選り好みせず色々やってみたいんだけどなぁ。
 まあ、その分獅子亭の手伝いが出来るからマックスさん達に恩返し出来て良い事もあるんだけどね。
 そうそう、魔物調査での経過報告みたいなものなんだけど、ヘルサル周辺の魔物達は通常の数や種類に戻って来てるみたい。
 一部以前はいたのに今は全く見ない魔物もいるらしいけど、ゴブリン達に狩られてしまったせいだと言われた。
 やっぱりヤンさんも言ってた通り、魔物の姿が少なくなったのはゴブリンの軍勢がヘルサルに来ていたからという事で決着がついた。
 ヘルサルの街が平穏を取り戻したようで、嬉しい。
 ……今度ギルドに行ったらランクだとか俺用だとか考えずにヤンさんを説得して依頼を受けようかな?


 今日も目ぼしい依頼が無く、時間が余ったので獅子亭の手伝いをした後の夜、寝る前に風呂へ入ろうと風呂場へとやって来た。
 この世界での風呂は元居た日本の風呂とは少し違う。
 当たり前だけど、水道というものがないので、井戸や川から汲んできた水、それか魔法で出した水を各家や店で溜めておくというのが基本。
 一日の生活や店の業務で使った水の余りを使ってお風呂にするんだけど、人が1人~2人程入れる木で出来た風呂桶のような物に水を溜め、魔法や薪で火を使って温めてお湯にする。
 前の世界にいた時、どこかで見た薪風呂のような感じが近いかな。
 ただ、お湯に浸かるって習慣がないので、獅子亭に来てすぐの頃お湯の中に入ったら怒られた。
 風呂桶の下部分が火を使って水を温める構造上、金属になってるから危ないんだそうだ。
 習慣が無いから底面に板を沈めて入るという事もしないそう。
 確かにお湯に浸かった時足が熱かった……まだ温度が低かったから火傷せずに済んだけど……。
 火傷しなかった理由が、この世界に来てお風呂に入れると喜んで、熱くなってないほぼ水風呂のような中に入ったからというのは良い事なのか悪い事なのか……。
 ともあれお風呂というのは、お風呂場で温めたお湯を使って体を流して洗うだけの場所。
 ……いつか浸かれる風呂を作りたいよね、元とはいえ日本人として。


 一人で風呂に入り、体を洗い終わって出ようとした時、入り口のドアが叩かれた。

「リクー私も入るのだわー。洗ってなのだわー」

 ノックと言うにはガンガン叩かれてるドアを開いてエルサを中に入れる。

「モニカさんと入らなかったのか?」
「モニカは一度入ると長いのだわ。一緒に入ったらこっちが冷えるのだわ。風邪引くのだわ」
「ドラゴンって風邪引くのか?」
「さあ? なのだわ」

 風邪という知識は俺の記憶からだろうが、ドラゴンが風邪引いたらどうなるんだろう……?
 大きい姿の時に風邪を引いて、くしゃみや咳で人が吹き飛ぶ想像が浮かんだ。
 モニカさんというより、女性がお風呂に入ったら時間がかかるというのはこの世界でもほぼ当たり前らしい。
 たしかにエルサのモフモフモサモサの毛が濡れたままだと冷えてしまうのはわかる。

「じゃあ、頭からお湯掛けるぞ」
「目を瞑るのだわー」

 ザバーっと頭からお湯を掛けて全身を流す。
 風呂場に置いてあるエルサ用のブラシを持ち、毛並みに沿ってブラッシングする。
 時たまお湯で流しつつ、ブラシで絡まった毛や埃等を洗い落としつつ丁寧にブラシをかける。

「はー、リクのブラッシングは気持ち良いのだわー」

 そりゃこのモフモフを綺麗にして素晴らしい癒しを維持するためだからな、丁寧にもなる。
 自分の体を洗うより丁寧にブラッシングしてるけど、モフモフのためだから苦もない。
 毛がフワフワな犬とか特にそうだけど、濡れたらぺちゃっとなっていつも見てる姿より凄い痩せたように見えるけど、エルサも似たような感じになってた。
 ブラシでフワフワに戻してはお湯で汚れを洗い流してを繰り返す。
 その最中、そういえばと思い出し今更ながらの疑問をエルサに聞いた。

「そういえばエルサ、俺の体の強度がドラゴン並みになったとか言ってたけど、それってどのくらいなんだ?」
「んーとだわ。ドラゴンというより私ってこの自慢のモフモフがあるのだわ?」
「そうだな」
「この毛が私にとって鎧代わりなのだわ。剣や矢なんかはこの毛が守って通す事は無いのだわ」
「へー、こんなにフワフワモフモフな毛がそんな効果を……」
「それになのだわ。毛に魔力を通すと鉄より硬くなるのだわ。生半可な剣で切ろうと思っても、剣が折れるのだわ」
「鉄より硬く……それって刺さりそうだな……」
「木や鉄くらいなら刺さるのだわ。私が毛に魔力を通して突進するのが一番破壊力があるのだわ。……でもあんまりやりたくないのだわ……」
「刺さるくらいか……何であんまりやりたくないんだ?」
「……昔、鉄の塊に頭から突進して突き刺したら……」

 そこまで言ってエルサは少し言い淀んだ。
 どうしたんだろう? 突き刺した後何かあったのかな。

「突き刺したら、どうなったんだ?」

 俺が続きを促すように聞くと、エルサが恥ずかしそうに言った。

「……その……抜けなくなったのだわ」
「……は?」
「だから……鉄の塊から体が抜けなくなったのだわ!」
「……」

 えっと……鉄に刺さるくらいの硬さになったエルサが突進。
 鉄の塊に頭を突き刺したまではいいけど、その後鉄に頭が埋もれて抜けなくなった、と。

「……くっ……ははははははは」
「やっぱり笑われたのだわ!」
「そりゃ笑うだろう! ははははは」

 頭の中で、エルサが頭だけ何かの鉄塊に突っ込んで、体をジタバタさせて抜けない絵が浮かんだ。
 これは笑わずにはいられないだろう。

「……笑い過ぎなのだわ! 早くブラッシングするのだわ!」

 笑い過ぎてブラシを使う手が止まってた。

「はは、すまんすまん」
「……もうリクにこんな話はしないのだわ」
「悪かったって。でもエルサは長生きなんだろう? 今まで見て来たものを教えてくれると嬉しいな」
「……教えるとリクは嬉しいのだわ?」
「ああ、人間は寿命が短いからな。ドラゴンのように長生きをして色々見た事を聞くのは楽しい事だと思うんだ」
「そうなのだわ? ならまたそのうち昔の事を話すのだわ。それにしても人間は不便なのだわ」
「まあな。飛べもしないしドラゴンのように強い体でもない。でも、それも楽しい事でもあるんだよ」
「楽しいのだわ?」
「なんて言うか……伝えるのは難しいんだけど。寿命が短い、体が弱いとかドラゴンと比べると人間はちっぽけだけど、だからこそその中での楽しみってのもあるんだよ、きっとな」
「不思議なのだわ」
「そうだな」
「人間も面白いかもしれないのだわ」
「そうだな。けどドラゴンだって楽しそうだぞ」

 偉そうな事を語ったけど、俺もまだ20年生きてない人間だからな。
 色々分かったような口ぶりで話しても、まだまだだ。
 エルサに語った事を少し恥ずかしく思いながら、話しが逸れたと元の話しに戻した。


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。  主に5大国家から成り立つ大陸である。  この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。  この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。 かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。 ※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!) ※1話当たり、1200~2000文字前後です。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・

Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・ 転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。 そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。 <script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...