195 / 1,955
ヴェンツェルさんとの手合わせ開始
しおりを挟む「マックス、マリー。二人は特に若い兵士達に訓練を付けてくれないか? 経験豊富な二人からの方がためになるだろう」
「わかった」
「私は厳しく行くけど、それでも良いのかしら?」
「あぁ。ここにいる兵士達は訓練で甘える事はしないだろう。しっかり鍛えてやってくれ」
「わかったわ」
「……母さんの訓練……私は、フィリーナと一緒にいようかな……」
「あら、モニカはこっちなのね」
マックスさんとマリーさんは、新人の育成にあたるようだ。
確かにヴェンツェルさんの言う通り、経験豊富な二人が新人を鍛えるのは良い事だと思う。
手加減せずに厳しく訓練させる様子のマリーさんを見て、モニカさんがそこから逃れるように動く。
まぁ、モニカさんは少し前に散々特訓させられてたからね、その事を思い出したんだろう。
「さて、皆が訓練に移る前に……こちらだな……」
「……そう、ですね」
「私は離れておくのだわ。暑苦しいのは嫌なのだわー」
皆が訓練に移る前、本来の目的のためにヴェンツェルさんが俺に向き直る。
エルサは、マックスさんとのやり取りも含めて、暑苦しい事を嫌うようで、俺の頭から離れて訓練場の端まで飛んで行った。
兵士達は、俺とヴェンツェルさんが向かい合う事よりも、ふわふわ飛んでるモフモフ……もといドラゴンを見て驚いている。
初めて見る人もいるだろうから、当然か。
「では、これより私とリク殿の手合わせを始める。場所を開けよ!」
「「「はっ!」」」
ヴェンツェルさんが声を上げると、一斉に訓練場の中央を開けるように動く兵士達。
どうやら、俺とヴェンツェルさんの手合わせは、皆に見せる方針のようだ。
「さて、これだけの兵士が見ているのだから、見本になるようにしなければいかんな。手加減は無用だぞ、リク殿」
「はい。……剣は木剣ですか?」
「刃引きした剣もあるが……どちらでも好きな方を選んでくれ」
「わかりました……それなら……すみません、あれを使っても良いですか?」
「はっ、どうぞお使い下さい」
見本になれるように戦えるかはわからないけど、俺に出来る事をしよう。
手合わせの剣は当然真剣じゃない。
俺が持ってる剣を使ったら、ヴェンツェルさんを剣ごと切り裂いてしまう可能性もあるからね。
刃引きした剣を使おうかとも思ったけど、俺は木剣にする事にした。
近くにいた兵士さんに声をかけて、訓練場の隅に置いてある木剣の中で、ひと際大きい物を持って来てもらう
「ほう、その木剣か……中々に扱いづらそうだが……?」
「このくらいがちょうど良いですね。大きさは……まぁ仕方ないでしょう」
軽く2、3度片手で木剣を振って見せる。
俺が軽々と振った事に、周りで見ている兵士達がどよめいてるけど……それも仕方ないか。
俺が使うと決めた木剣……ヴェンツェルさんより大きいもんな……。
ちらりと見たモニカさん達、俺の仲間達は兵士さん達とは違って驚いて無かった……むしろあきれ顔だ……何故……?
「はっはっは! その木剣をそんなに軽々と振るう者がいるとはな! これは楽しい手合わせになりそうだ!」
「楽しいかどうかは別として、頑張りますよ」
俺がこの巨大な木剣を選んだ理由は、先日の魔物との戦いがある。
切れ味は抜群だったけど、今まで使ってた剣と重量も大きさも違ったから、少しだけ違和感があったんだ。
だから、その違和感を少しでも無くすために、近い重さの剣で訓練した方が良いとの考えで選んだ。
大きさに関しては……大きい剣を振るのも楽しそうという、すごい適当な考えだ。
ヴェンツェルさんが昨日腰に下げていた大剣を見て、豪快に大きな剣を振る事に興味を持った
「その木剣は、筋力を鍛えるための物で、打ち合うために作られていないんだがな……」
「そうなんですか?」
「さすがはリク殿と言ったところか……これなら私も全力でやれるな!」
「……ヴェンツェルさんの武器はそれですか」
二人の兵士がヴェンツェルさんに近付いて、これから使う剣を渡す。
その剣は刃引きされた物で、俺の身長より少し短いくらいの大きさで、相当な重量があることがわかる。
それを二人の兵士がそれぞれ一振り……計二振りヴェンツェルさんに渡した。
「ふんっ! やはり、これがしっくり来るな……」
二振りの剣をそれぞれ片手で持ち、右手、左手と連続して振るヴェンツェルさん。
筋肉が盛り上がっている様子が、少し離れた俺の場所からでもわかる。
大柄なマックスさんは、片手剣と盾を使うのに対し、ヴェンツェルさんの方はその大きな体と筋肉をそのまま生かす戦い方のようだ。
皺の刻まれた顔は、40代は過ぎてるであろう事は簡単に予想出来るけど、40代過ぎた人が大剣を片手で振り回す姿はちょっと現実離れしてる。
さすがは国のトップで将軍になるだけ、という事なのかもしれない……まぁ、俺も人の事は言えないだろうけどね……。
「それじゃあ、俺が合図をしよう」
ヴェンツェルさんと二人、訓練場の中央で向かい合い構えを取る。
それを見ていた周囲の人たちの中から、マックスさんが進み出てくれた。
「お願いします」
「頼む」
俺とヴェンツェルさん、お互いがお互いから目を離さないようにしながら頷く。
ヴェンツェルさんは二振りの大剣を持った腕を、胸のあたりで交差させる構え。
俺は大きな木剣を両手で持ちながら、正眼の構えを取る。
……ヴェンツェルさんやマックスさんのように経験豊富じゃない俺は、自分なりの構えというのをまだよくわかっていない。
だから、とりあえず手合わせに見合うように正眼の構えにしてるだけだ。
魔物と戦う時はいつも、構えとか気にせず力任せに剣を振ってるだけだからね。
「準備は良いようだな……」
マックスさんが俺達二人を見ているのがわかる。
訓練場がにわかに緊張感で満たされていく感じだ。
唾を飲み込む音が聞こえた気がしたけど、それは兵士達だったのか、それともモニカさん達の誰かなのか……。
「それでは……始め!」
「ふっ!」
「うぉ!?」
そんな事を考えている間にも、マックスさんの合図で始まる手合わせ。
初めの言葉と同時に、弾かれたように飛び込んでくるヴェンツェルさん。
そのスピードは、速度で手数で相手を翻弄するヤンさんよりも早い!
「今のを受け止めるか! さすがだな!」
「さすがに驚きましたけどね……っと!」
真っ直ぐ突進して来たヴェンツェルさんは、交差している腕を上げ、同時に振り下ろす。
俺の体でちょうどエックスになるように振られた大剣を、俺は大きな木剣で受け止め、真っ直ぐ押して弾き返す。
……正直、速過ぎて剣で受け止めるしか出来なかったんだよね……大きな木剣という事もあるけど、剣を振り上げる暇も無かった。
ヴェンツェルさんは、俺が剣を受け止めた事に驚きつつも、両手を広げ、体を回転させつつの連続攻撃。
右回転だから、斬撃は右からしか来ないので助かるけど、右手の剣を防いだ直後に左手の剣が襲い掛かって来るので、息を吐く暇もない。
「ふっ! はっ!」
「くっ!」
呼気を吐き、ヴェンツェルさんによって繰り返し襲って来る剣を防ぐ。
片手づつという事と、連続攻撃だからか、最初の一撃よりは重さは無い。
だけど、その筋力と剣の重さは俺に反撃をさせるつもりはないように思える。
……このままだと、押し切られるな……。
21
あなたにおすすめの小説
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる