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マティルデさんから情報収集
しおりを挟む「魔物襲撃? その時の討伐報酬でも欲しいの?」
「あーいえ、そう言うわけじゃないんです。……えっと……」
まごまごしても首を傾げてるマティルデさんには通じないか。
仕方ない、思い切って聞いてみる事にしよう。
「……魔物襲撃の直前、城内で騒動がありまして……」
「……聞いてるわ。どこかの貴族が女王陛下に剣を突き付けたってやつね。それがどうかしたの?」
どうやらマティルデさんには、姉さんが捕らえられたときの事は伝わっているらしい。
冒険者ギルドのマスターなんだから、それくらいの事は知っていても不思議じゃないか。
「えっと、その時……その貴族が連れていた私兵が、冒険者だったらしいんです」
「成る程……その事ね。それなら私の所にも国から問い合わせが来ているわ。冒険者が謀反に加担したってね」
「そうなんですか」
問い合わせているというのは聞いていたけど、一応とぼけておく……変に顔に出て無ければ良いけど。
マティルデさんは顔をしかめながらも、冒険者が関わっているという事を考えているようだ。
「……これはあまり大っぴらに出来ない事なんだけど……リク君になら良いか。将来有望……今でも有望な英雄だからね」
「有望かどうかは自分ではあまり……」
「やっぱり謙遜するのねぇ、まぁ良いわ。それでね、その冒険者達なんだけど……全部この国の冒険者では無いの。全部隣の……帝国で活動していた冒険者ね」
「帝国で……」
「国からの問い合わせと、ギルドが調べた事……そして身元の確認をしたから間違いないわ」
帝国の冒険者が、というのは当然知っているけど、それに関してもとぼけて今知ったように反応しておく。
……ちょっと背中に嫌な汗が出て来た……やっぱり嘘を吐くのは苦手だ。
「それでね、できればあまり口外しないで欲しいんだけど……帝国のギルドは今、冒険者ギルド全体とあまり連絡を取り合っていないの」
「連絡を取り合っていない? でも、組織としては……」
「そうね、定期連絡なんかは一応来ているわ……それも遅れがちだけどね。その内容は当たり障りのない事ばかり……これは私個人の考えなんだけど……」
そう言って言葉を止め、同じ部屋にいた受付の女性に目配せをする。
受付の女性は、一度入り口を開けて外を確認、他にも誰かが聞いていないかを確認していた。
……もしかすると、あまり他の人には聞かれたくない事なのかもしれない。
「帝国にあるギルドの全てでは無いと思うけど、何かを隠しているように思うの。……いえ、隠しているというより何かを企てている……と考えているわ」
「企てている……それはどんな事なんですか?」
「そこまではまだわからないわ。でも、何か怪しい動きをしている事は間違いなさそうね……」
「……そうですか」
帝国側のギルドは独自に動いていて、何かを考えているらしい。
それが何かはわからないけど、マティルデさんからするとそう考える何かがあるのかもしれないね。
「まぁ……帝国でのギルドの扱いは良いとは言えないからね……」
「と言うと?」
ソフィーさんから聞いたように、帝国ではギルドはあまり重要な組織では無いらしい。
でも、扱いが悪いとはどんな事なのだろうか?
「帝国では、冒険者がこの国でやっている事……魔物の討伐なんかを率先して軍が行っているわ。当然、そこに暮らす人達は、依頼をするのにお金のいらない帝国の方を頼るようになるわよね?」
「そうですね」
帝国で、軍が魔物を討伐するようにお願いしても、冒険者へ依頼するのと違ってお金はかからないらしい。
国が率先してそういう事をやってくれるというのは、深く考えなければ良い事だと考えてしまう。
「もちろん、この国でも似たような事はあるんだけれどね。冒険者がすぐに対応できないような事態では、国の兵士が討伐にあたる事もあるわ。ヘルサルの時みたいに、協力体制になる事もあるし」
「帝国は違う、と?」
「そうなの。どんな状況でも協力体勢を築く事は無いし、冒険者の代わりに軍が対応するという事でも無いの。むしろ、軍が手一杯な時に冒険者が……という感じね」
「成る程」
どちらかというとこの国とは逆の仕組みになってる……のかな。
帝国の軍は強いらしいから、冒険者に仕事が回って来るのはあまりないんだろうと想像できる。
「そうなると、当然冒険者が冒険者として活動する事も難しくなるわ。依頼を定期的にこなす事もむずかしくなるからね。だから、帝国では冒険者になる人が他の国と比べると圧倒的に少ないの」
「それは……そうでしょうね」
仕事として冒険者をやるわけであって、遊びや道楽でなるわけじゃない。
お金を稼げないとなると、冒険者になる事を考える人が少なくなるのは当然だね。
「だから、規模として帝国の冒険者ギルドは小さいのだけど、それでも冒険者になろうとする人はいるは。問題はその大半ね」
「問題ってなんですか?」
「普通に生活をしようと考える人は冒険者になろうとしない。だけど、それ以外……普通の仕事に就けない人や、罪人なんかもいるわね……総じて、まともな人間じゃない事が多いわ」
「でも、罪人は冒険者になれないんじゃ?」
以前、俺が冒険者になる前に聞いた話しだと、犯罪者なんかの罪人は冒険者になることができないと聞いた。
どんな風にそれを調べるのかはわからないけど、世界に広がる冒険者ギルドなら、そういった情報を持ていてもおかしくないと思う。
でも、帝国にあるギルドは違うのだろうか?
「本来ならそうなんだけどね。帝国のギルドを運営している者達は、それでも冒険者を獲得するために黙認しているようなの。……はっきりとそうだと認めないけどね」
「それは……良いんでしょうか?」
「当然、よくは無いわね。そんな人間を使い続けていると、冒険者ギルド全体の信用に関わるわ。でも、そうでもしないと帝国のギルドは冒険者が確保できない状況なの」
そうでもしないと、冒険者ギルドとして運営がままならない……ってわけか。
帝国のギルドが隠しているのと、運営のためと見逃されている部分もあるのかもしれない。
「だから、帝国での冒険者と言えば、ならず者の集まりと認識されているわ。あまり他の国にいる冒険者は知らない事なんだけどね」
「知らないんですか?」
「冒険者に対して冷遇される国、というのは広く知られているけれど、罪人を冒険者にしてるなんて一部の人にしか知らされないわよ」
まぁ、そうか。
そんな話が有名で当たり前の話になってしまうと、冒険者ギルドの信用に関わるからね。
だから、ソフィーさんも帝国での冒険者があまり良い待遇じゃない事は知っていても、ならず者達が……というのは知らないのかもしれない。
「ならず者の集団と見られている冒険者ギルドは、帝国ではあまり歓迎されていないわね。経緯をしれば当然なんだけど、軍が代わりをしてくれるし……さらに冒険者に対して風当たりがきつくなるって悪循環になってるのよ」
「成る程……マティルデさんの話が本当なら……今回の城での騒ぎは……」
「帝国側の冒険者は喜んで参加した者が多い可能性があるわね。日々稼げない冒険者稼業……その中で大口の……言い方は悪いけど、大口の依頼となれば、飛びついて当然ね」
元が罪人という事なら、バルテルの私兵のようになって国に反旗を翻す……という事も抵抗が無く依頼を受けた要因なのかもしれない。
全くないとは言わないけど、犯罪を犯した事の無い人よりかは抵抗が少ない人は多いはずだと思った。
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