神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

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リクは小さい調節が苦手

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「小さい火なのに、何だか物悲しいわね……」
「灯火が消える瞬間……考えさせられるものがあるな」
「火も儚いものなのね……」
「小さく弾けてあっさり消える……か」

 地面に落ちた火を見て、今までと違った気分になったようだ。
 物悲しく切ない……でも何故だか見つめたくなる……それが線香花火だと思う、というのは俺の持論だ。

「……ん?」
「どうかしましたか、ヒルダさん?」
「いえ、何やら臭いが……」
「臭いですか? えっと……」
「どうかしたの、りっくん。ヒルダも?」

 近くで見ていたヒルダさんが、何かに気付いたように声を上げる。
 臭いがと言っていたから、俺も鼻で探ってみる事にする。
 俺達の様子が気になった姉さんが、近づきながら声をかけて来る。
 けど、それに答える間もなく、異変に気付いた。

「なんだか、焦げ臭い?」
「はい。何やら燃えているような……?」
「ちょっ、ちょっとりっくん!」
「どうしたの、姉さん? 急に焦り始めて……」
「どうしたのじゃないわよ! 足元、足元を見て!」
「え? ……うぉ!」

 焦った姉さんに言われて地面を見てみると、そこから黒い煙と燃え広がろうとしている火があった。
 これ、もしかしてさっき落ちた線香花火の残り火……?
 落ちて消えたものだと思っていたけど、くすぶり続けて少しずつ火が燃えていたみたいだ。
 ……土の地面を燃やして広がろうとしてるって、もしかしての俺の魔力のせい……かな?

「水、水を早く!」
「……城が燃えるのはさすがにね」
「私達も協力した方が良さそうだ」
「行くわよ、アルネ」
「わかってる」

 地面を見て声を上げた俺……それを見て、離れていた皆もこちらへと向かって来る。
 火がまだ大きくないうちに、用意していた桶に入ってる水で消化するべきだろう。

「よい、しょ!」
「……重いわね……ソフィー、手伝って!」
「わかった。よ……っと」
「こっちも一つ持つわよ!」
「あぁ。ふぬ……」

 近づいて来た皆は、それぞれモニカさんとソフィー、フィリーナとアルネの二人組に別れて桶を一つずつ持つ。
 俺も、自分で使った魔法で火事にするわけにはいかないから、頑張って一人で一つの桶を持った。
 人が入れるくらいの大きさの桶に、並々と水が入ってるから、さすがに重いなぁ……。

 ジュー……。

「……消えないわね」
「勢いは弱まってるようだがな……」
「どうするの? またしばらくすると火が広がり始めるわよ!?」
「魔力が固まって、ただの水だと消えそうにないな。これには、魔力を込めた魔法を使うのが一番だ。水の魔法は得意では無いのだが……仕方ない。アクアボール! フィリーナ、お前もだ」
「わかったわ、アクアボール!」

 皆で大量の水をかけたにも関わらず、地面にある火は勢いを弱めただけでまだ消えない。
 アルネが言うには、魔力が関係しているみたいだけど……。
 エルフの二人が水の球を作り出し、次々と火に向かって放つ。
 少しずつ火の勢いが弱くなって来たな……。

「簡単な水を作り出す魔法なら、私にも使えるわ。アクアボール!」
「こんな時、私の槍があれば役に立てたんだがな……今は持って来ていない……」

 モニカさんが魔法を使うのを見ながら、ソフィーが呟く。
 ソフィーの槍は、氷の魔法を使える魔法具だから、こういう時役に立つ事ができるのだろうけど、あいにくと今は持っていない。
 アルネ、フィリーナ、モニカさん達三人が、それぞれ水の魔法を使うのを見て、俺も魔法で協力しようと考える。

「えっと、拳サイズの水の球……」
「リクさん?」

 俺が小さく呟きながら、魔法のイメージをしていると、疑問に思ったモニカさんが声をかけて来るが、今は魔法のイメージに集中した。

「弱まって来ているぞ。もう少しだ」
「この調子よ、さぁモニカも一緒に」
「……わかったわ」

 三人が協力して水の魔法で火の勢いを弱めている間に、イメージを固めた俺。

「よし、アクアボール!」
「え?」
「ちょっとリク?」
「何を……」

 急に魔法を発動した俺に、魔法を使っていた三人が戸惑う。
 魔法名は、他の皆が使っているのと同じもの。
 水の球を作り出すだけだし、イメージしやすかったからね。

「できた……これを火に……わぷ!」
「ちょっとま……ぶくぶく」
「リクなに……ぶは!」
「これは……ぐぅ!」
「水が……ぶっ!」
「……皆大丈夫ー?」
「水浸しですね……火は消えたようですが……」

 手をかざした先に出来上がった水の球を、ゆっくり火に近付けて触れさせる。
 その途端、水の球から大量の水が周囲にまき散らされ、近くにいた俺達全員頭から水を被ってしまった。
 地面もそうだけど、皆ずぶ濡れだ。
 火が広がってるのが判明してすぐ、姉さんを連れて俺達から離れたヒルダさん。
 二人が遠くから声をかけて来るのが聞こえた。

「はぁ……リクさん……失敗を何とかしようという気持ちはわかるけど……」
「リクの魔法は、見た目が小さくても、何かおかしいな」
「こんなに大量の水を発生させるなんて、エルフでもできないわよ?」
「やはり、リクは他とは違うな……これだけの魔法を軽々と使うとは……」
「りっくん、ちょっとやり過ぎよ……」
「皆様、ずぶ濡れですね」
「えーと……火事になったらいけないからと思って……ごめんなさい」

 水を被った皆と、近づいて来た姉さんのジト目を受けながら、俺は謝るしかできない。
 咄嗟に火を消そうとしたから、魔力調整が上手くできていなかったようだ。
 ……そもそも、線香花火の時点で込める魔力量を間違っていたようだしなぁ。

「皆様、すぐに大浴場へ。今準備させております」
「ありがとうございます、ヒルダさん」
「濡れたままではな。ありがたく入るとしよう」
「大浴場にまた入れるのは嬉しいけど、理由がこれじゃねぇ……」
「まぁ、仕方あるまい」
「ごめんなさい、皆……ヒルダさんも……」

 ヒルダさんは、すぐに人を呼んで大浴場の準備をお願いしたらしい。
 水に濡れたままだと、風邪を引いてしまうかもしれないからね。
 寒いわけじゃないけど、濡れてると体温を奪うから、大浴場でしっかり温まらないと。

「では皆様、こちらへ」
「お手数をおかけしま……ん?」
「りっくんはこっちよ?」
「えっと、姉さん?」
「これだけの事をして、皆と一緒に大浴場に入れると思ってるの?」
「……すみません」

 ヒルダさんに付いて行こうとした俺を、姉さんに襟首を捕まえて止められる。
 顔は笑ってるんだけど、引き攣ってる様子から、しばらく説教があるんだろうなぁ……と覚悟をして、大浴場へと向かう皆を見送った。


「まったくりっくんは……!」
「はい……」

 部屋に戻って来て、一応とばかりにタオルで濡れた部分を拭きながら、姉さんの説教を聞く。
 今回は、失敗しないつもりでやったのに、失敗したから、俺も反省しないと……。
 小さい火と水だったから良かったものの、これが大きな爆発とかだったら、城にも被害がでてただろうし。

「どうしたのだわ?」
「エルサちゃん……りっくんがね?」

 説教をする姉さんの声で、ベッドでユノと寝ていたエルサが起き出した。
 俺達の様子を不思議に思って首を傾げてる。
 そのエルサに対し、姉さんは愚痴を言うかのように説明した。
 ……俺が悪いからなぁ、仕方ないよね。


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