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お手伝いと事情説明
しおりを挟む「さぁさぁ、もうすぐ店を開けるんだから、皆動いた動いた!」
「わかったわ!」
「仕方ないな。よろしく頼むぞ、モニカ、リク!」
「はい! ――あ、カテリーネさん、手伝います!」
「助かるわぁ。やる事が多くってねぇ」
「私もやるのー!」
両手を打ち合わせて、パンパンと音を鳴らしながら、マリーさんが動くように促す。
それに急かされるように、俺やモニカさん、ユノが動き始めた。
まずは、掃除をしているカテリーネさんを手伝って、開店の準備だ!
そうして、俺達はしばらく、久々に獅子亭お昼の戦場へと赴いた……。
「はぁ……久々だと、やっぱりちょっときついね……」
「そうね。ずっとやって来た事なのに、しばらくやっていないと思ったよりも動けないものね。客が増えてたのもあるけど」
「二人共、冒険者の依頼はしっかりやれてるのか? 前より鈍ってたように見えたぞ?」
お昼の営業も終わり、夕方までの準備時間の合間に、モニカさんと椅子に座って一息つく。
久々の獅子亭は、以前よりも賑わっていた事もあり、大変だった。
手伝いをしてた頃から、間が空いたからというのも大きいかもしれない。
モニカさんの方も、同じ感想のようだ。
マックスさんが、椅子に座って休憩している俺達を見ながら、声をかけて来る。
冒険者の依頼と、獅子亭の手伝いは違う物だと思うけど、マックスさんの中では似たような物なのかもしれない。
依頼かぁ……しっかりやってる……と思うけどなぁ。
「ちゃんとやってるわよ。それより、以前よりも人が増えたみたいだけど……何かあったの?」
「新しい料理ができたからな。それが人を呼んでいるんだろう」
「新しい料理ですか? 確かに見た覚えのない物がありましたけど……」
厨房から店内へ料理を運ぶ配膳係をしていたから、どんな料理がよく頼まれていたのかよくわかる。
その中で、以前とは違う、見覚えのない料理があった。
キューと他の野菜に淡白そうな肉に、ドレッシングをかけてあるサラダ。
唐辛子とキューをごま油っぽい物と和えてある、ピリ辛キューと呼ばれてる物なんかだ。
キューメインにばかり使われているのが気になったけど、ほとんどの人が頼んでいたので、よく覚えてる。
運ぶたびに、エルサが頭にくっ付きながら「キューが消費されて行くのだわ……」とか、悲しそうに呟いてたけど……。
ちなみに、久々に会った常連さん達も頼んでた。
サラダは女性が頼む場合が多く、ピリ辛キューは、お酒と一緒に頼む男性が多かった。
昼なのにお酒……と思わなくもないけど、ちょっとした自分へのご褒美のように、嬉しそうに食べる人が多かったから、いいのかな?
お酒の量も多くなかったし。
あと、常連さん達は、モニカさんだけでなく、ちゃんと俺の事も覚えてくれていたようで、気さくに声をかけてくれたのは嬉しかったね……お酒臭い人もいたけど。
「最近始めたんだ。なんでも、ヘルサルだけでなく、センテや他の場所でもキューを食べるのが流行っているらしくてな? それで、キューを使った料理を……という訳だ。幸い、ここはセンテに近いから野菜の仕入れは楽だしな」
「そうなのね。……リクさん、これって?」
「うん、やっぱりそうだと思う。もうヘルサルやセンテの方まで広がってたんだ……」
「ん、どうしたの二人共。顔を寄せ合って? ……もしかして、めでたい報告?」
「な、なんだと!?」
マックスさんに新しい料理を始めた理由を聞いて、モニカさんと話す。
ヘルサルやセンテで、キューを食べる人が多くなったのって、あの噂が原因なんだと思う。
椅子に座って、モニカさんと確認し合うように話していると、奥から戻って来たマリーさんが、俺達を見て妙な事を言った。
めでたい報告って……何の事だろう?
マックスさんは、それに大きく反応して座ってた椅子から思わず立ち上がってるけど……。
「違うわよ、母さん。それは……まだまだ先になりそうだわ……はぁ」
「そう……まぁ、頑張りなさい」
「そ、そうなのか……うむ、安心だ……」
「?」
モニカさんが否定し、溜め息を吐くと、マリーさんは応援するように言葉をかける。
そんな様子に、マックスさんは安心したように椅子へと座り直した。
三人共、何を話してるんだろう?
「それはともかく、お昼ができたわよ。今日はルディの担当ね。モニカやリクが持って帰って来た、城で作られた物も一緒に食べなさい」
「ありがとうございます」
「あ、じゃあ他の皆も呼んで来るわね」
「お昼なのー!」
「ほら、エルサちゃんはいつものように、キューでしょ?」
「……頂くのだわ」
大きな声で話しながら、マリーさんが次々と厨房から料理を運んでくる。
今日はルディさんが作ってくれたようで、運ばれる料理は以前からの獅子亭煮込みや、新しく作られたサラダもあった。
ヒルダさんが持たせてくれた、昼食用の料理以外にも、数種類の料理が次々と運ばれてくる。
ルディさんも、頑張って色々作れるようになってるみたいだね。
ソフィーとフィリーナを呼びに行ったモニカさんを見送り、入れ違いでマリーさんがエルサにキューの積まれたお皿を持って来た。
いつものエルサなら、すぐにでも飛びつくんだけど、今日はゆっくりとテーブルに降りて、キューを前に神妙にしている。
「……どうしたんだ? 以前ならすぐに飛びついてたはずだが……?」
「そうね。エルサちゃん、どうしたの? 体調でも悪いのかい?」
「そんな事はないのだわ。でも……キューが……」
「あー、えっと……ここに戻って来た理由にも繋がるんですけど……とりあえず皆が揃うまで待ちましょう」
「ふむ、そうか?」
「わかったわ」
エルサに元気がないのは、キューの事が気になって仕方がないからだろう。
マックスさんとマリーさんが気にしてる様子だけど、理由を説明するのは、ヘルサルに戻って来た理由に関係するから、皆が集まってからの方はいいと思う。
仲良く洗い物をしている、ルディさんやカテリーネさんにも、説明しておきたいしね。
それに、自分の噂が原因何て事、モニカさん達がいない時に一人で説明したくないしなぁ……。
「成る程な、そういう事か」
「キューが不足ねぇ……」
「確かに、ヘルサルでも今までよりも、多くの人が食べるようになっていますね」
「キューが美容にいいからだと思ってたわ……」
「はぁ……至福……」
「美味しかったの!」
「これは癖になる美味しさね!」
皆が集まり、昼食を頂きながら、ヘルサルへ戻って来た理由を説明。
キューの増産の事や、王都とその周辺でキューが多く食べられ始めた事とその理由。
さらには、噂が広まって行っている事で、この先もっとキューが不足する可能性がある事等々。
理由を聞いたマックスさん達は、納得いった様子で頷いているけど、いまいちキューが不足していってる事に実感はないようだ。
センテが近いから、王都へ運ぶキューが減るくらいで、ヘルサルで買うキューにはまだ影響は出ていないんだろうと思う。
ちなみに、久しぶりに獅子亭の料理を食べた皆は、事情の説明をしながらも、満足そうに息を吐いてる。
ソフィーは恍惚の表情だし、ユノは満面の笑み。
フィリーナは初めて食べる獅子亭の料理に興奮気味で、もちろん俺やモニカさんも、久々の味に大満足だった。
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