神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

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異様な雰囲気を纏う男

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「あぁ、それとだな……私達の事を賊だと勘違いしているようだがな? 私はヴェンツェル、この国の軍で将軍の地位についている者だ。まぁ、いわゆる正規軍……とでも言えばいいのか?」
「なんでそこで俺に聞くんですか? というより、他に賊軍とか非正規の軍とかあるんですか?」
「いや、冒険者とかもいるからな……ならず者の中には、冒険者になって勝手に兵士の真似事をした挙句、国の兵士と騙る者もいたりするからなぁ。大体低ランクですぐに捕まえるが……」
「な……な……」
「冒険者の中にも、そういう人間がいるというのは、何となく聞いていますけど……軍の真似事なんかもするんですね……ともかく……この人は本当にこの国の軍所属で、一番偉い人ですよ? そんな人が、陛下が研究を命令している場所に踏み込んだりするはずがないでしょう。それこそ、こちらは陛下から直接頼まれていますからね。あ、あと、一緒になだれ込んだ人達も国の兵士達です。さらに言えば、地上の建物は周囲を百人以上の兵士さんで固めて逃げられなくしてありますし、他に脱出路があったとしても、兵士さん達が探しているので、見つかるのも時間の問題でしょうね」
「本来は私の仕事だと思っていたのだが……リク殿も結構相手を追い詰めるのだな……」

 失礼な……俺は相手を追い詰めるつもりはなく、ただ事実を言っているだけなのに。
 それに、姉さんが魔物の命をもてあそんだり、国に住む人達が被害を被るような事を命令するわけがないから、嘘を言っている男性に対してちょっとイラッと来ただけだ。
 姉さんがそんあ命令をしない事は、弟だった俺が一番……かどうかはともかく、よく知っているからね。

「そんな……将軍だと……? いやしかし、あれは確かに陛下から賜った書簡だったはず。私は、嘘は言っていないはずなのだ……」
「何やらブツブツ言い始めたぞ?」
「よく聞こえませんが……とにかく陛下と言って怯まないどころか、正規の軍が来て絶望でもしたのかもしれませんね。とにかく、捕まえましょうか」
「そうだな……っ!?」
「ヴェンツェルさん、どうかしまし……んっ!?」

 こちらも証明する物を出したわけじゃないが、俺やヴェンツェルさんの言い分を信じたのか、俯いてブツブツ言い始めた男性。
 さっきまで叫んでいた威勢がすっかりなくなってしまったけど、おかげで抵抗されずに捕まえられそうだから、楽になったと思うべきかな。
 ちなみに、周囲に固まっている他の研究者達も、同じように俯いて意気消沈していた……俺達が正規軍ではなく、本当に賊か何かが襲撃してきたとでも考えていたのかもしれない。
 ともあれ、さっさと捕まえて取り調べをするなり、施設そのものを調べるなりした方がいいだろうと、ヴェンツェルさんと一緒に頷いた瞬間、急にハッとなって顔の向きを変えた。
 どうしたのかなと首を傾げつつ、俺もそちらを向いて気付いた……研究者達とは別の場所、部屋の右側の方から異様な気配を醸し出す人物がそこに立っていたからだ。

「何者だ!?」
「ふむ……俺の気配に気付いたか。これだけ近付けばそれも当然かもしれないが……まさか、正規の軍だったとはな。いや、たかが賊如きが、オーガを退けてここまで来られるはずもない。だが、オーガの爆発を抑えていたのはどういう事なのか、少々興味がある」

 その人物は、目元まで隠れるようなフード付きのローブを身に着けており、声から男性だという事以外はよくわからない。
 ただ、異様な気配というのが、ローブから滲み出ているものが目で見えるからなのは確かなようだ。
 あれ、多分魔力だな……確か、この世界の人間の魔力は、あんなに可視化されるように密度が濃くなる事はほとんどないはずだけど……薄く広く、全身を覆っている。
 ベールのようになっている魔力が滲み出ているために、異様な気配になっているんだろうけど、探査魔法を使っていなかったから気付くのが遅れたようだ。
 俺より先にヴェンツェルさんが気付いたのは、その滲み出る魔力だけでなく、人間の気配そのものに気付いたのもあるのかもしれない……俺、そういうのはよくわからないから。

「貴様は一体……? その身に纏っているのは、魔力なのか?」
「ほぉ、一目見てこれが魔力とわかるのか。先程言っていた、将軍というのは本当かもしれんな。だが、それはそれで国に悟られたという事か……面倒な」
「何者なのかと聞いている!!」
「わざわざ俺が、その問いに答える必要はないな。とにかく、こいつらを捕まえられたら困るんでな。回収させてもらうだけだ。だがその前に……一つだけ教えてくれ。オーガの爆発を無効化してここまで来たのだろう? その方法だ。奴らが爆発すれば、この地下室も無事では済まなかい程度には、威力があったはずなのだが……その影響は見られない。これはどうしてだ?」
「……お前が何者かも答えないのに、その問いに答える必要はないと思うのだが?」
「ふむ……それも道理か。俺が何者かを明かす事はできないが、その名だけでも魂に刻み付けておけ……私の名は……」
「ツヴァイ様! れ、例の陛下から賜った書簡を……書簡をお見せください! あれがあれば、私達が陛下より命令を賜った者達だとわかるはずです!」
「「「……」」」

 異様な気配を出している男が、居丈高な口調でヴェンツェルさんの叫びには答えず、自分の興味を示す質問をする。
 少し間をおいて、威圧するだけじゃ駄目だと判断したんだろう、ゆっくりと首を振ってオーガの爆発を無力化した方法には答えられないと拒否をした。
 まぁ、無効化というか、正確には結界の中に閉じ込めて衝撃を外に出さなかっただけなんだけど、音も振動も遮ってくれるから、その場を直接見たわけじゃなければ無効化したと思うか。
 それはともかく、折角勿体つけて恰好良く名乗ろうとしたところで、先程まで叫んでいた研究者の男性が遮った。

 研究者の男性としては、味方が来てくれてありがたいと思ったんだろうけど、今はローブの男が名乗る場面だったのに……なんかもう色々台無しだ。
 せっかく新しい敵が現れて、俺もヴェンツェルさんも雰囲気を出していたのに……ほら、ローブの男まで黙っちゃったじゃないか……これじゃ、情報を引き出す事はできないかな? まぁ、捕まえてから聞き出せばいいか。

「……ん、んんっ! 俺の名はツヴァイ! さるお方から二の称号を与えられた者だ!」
「猿のお方?」
「猿ではない、さるお方だ! 偉いお方という事だ! まったく、これくらいの事も知らんとは、低俗な者達め……」
「リク殿、私もどうかと思うぞ?」

 そこまで言わなくても……ヴェンツェルさんまで呆れた様子だし……。
 なんとなく、研究者の男性のせいで真面目な雰囲気が吹っ飛んでしまったから、ボケておかないといけないかなと思っただけなのに。
 ローブの男は確かに魔力を纏っていて、人間だとしたら凄い魔力量なんだろうけど、それだけで脅威には感じない……多分、ルジナウムで戦ったキュクロップスやキマイラの方が強いと思うから――。

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