715 / 1,955
特徴のある種族
しおりを挟む「耳が長い……もしかして……」
「どうしたのだ、リク殿? その者の前で急に止まったりして……?」
「いえ……ヴェンツェルさん、これはどう見ますか?」
「これ……? ふむ、これは確かに驚くか。見慣れているとはいいがたいが、リク殿と出会ってからは、見慣れている節もあるな……」
研究者たちの拘束が終わったのか、うつ伏せに倒れているツヴァイを見て止まっている俺に近付いて来るヴェンツェルさん。
俺が泊まった理由を示すように、ヴェンツェルさんにもツヴァイの耳を見せると、納得しながらも難しい表情。
ツヴァイの耳は、人間とは明らかに違って長く、先が尖っている……最近ではアルネやフィリーナがいる事もあって、見慣れた感のあるエルフ特有の耳をしていた。
アテトリア王国は人間が多い国なので、見慣れない物でもあるけど、フィリーナ達が一緒にいてくれるおかげて、最近では見慣れてしまって珍しく感じなくなった耳。
最初の頃は、お互いあまり口にしなかったけど、やはり見慣れない長い耳に視線が行く事もあったけど、今ではもう意識しなくなった。
失礼かなと思っても、やっぱり見てしまうんだよなぁ……まぁ、物珍しそうな視線をしたり、失礼のないようには意識していたから、フィリーナ達もあまり気にしなかったようだけど。
「やっぱり、エルフ……ですよね?」
「だろうな。それ以外に、この特徴のある耳を持つ種族はおらん。まぁ、獣人なら人間とは違う耳を持っているだろうが……それとも違うしな。他にエルフの特徴に近く、人間と同じ形をしている体を持つ魔物、というのも聞いた事がない」
「やっぱり……じゃあ、このツヴァイという人は……」
「まぁ、先程の凄まじい魔力を見ても、エルフである事は間違いないだろう。あの魔力は通常の人間では見る事ができない……リク殿を除いてな? それでも、リク殿からすると、矮小な魔力だったようだが……」
「いやぁ……矮小とまでは言いませんけどね。でも、ルジナウムで強力な魔物と戦っていたら、あれくらいじゃ動じなくなりましたよ?」
俺はあんな、これ見よがしに滲み出た魔力を可視化させたりはいていないけど、エルサ曰く魔力は漏れ出ているらしいから、あまり大きく変わらないのかもしれない。
それはともかく、ルジナウムで戦ったキュクロップスやキマイラの事を考えると、ツヴァイがそれほど強く思えなかったというのは本当だ。
向こうは魔物だから、魔力量に関してはよくわからないけど、ツヴァイの方が単純に魔力は多かったのかもしれない……でも、肉体的な強さでは明らかにキマイラとかの方が強いからね。
……エルフといえど、体の一部を切り落とされても動きが鈍らないなんて事はないだろう。
まぁ、使っていた魔法は強力だったから、最初の予想とは違って単独でキマイラを倒すくらいはできたかもしれない……キュクロップスは大きさが違い過ぎて難しいかも? 氷の槍も熱線も、五メートルを越える巨体からすると小さいから、爆発の威力次第かなと思う。
とは言っても、集団で襲って来るAランクの魔物を相手にはできないだろうし、勢いよく炸裂する魔法なんて、味方に影響を及ぼす可能性も高いからね。
結局、魔物の集団を相手にした時の事を考えたら、脅威とは一切思えなかったというのが事実だ。
それでも、オーガを大量に使ってとかだったら、周囲に被害を及ぼさないように戦う事は不可能だっただろうから……ツヴァイ側に備えをさせずに突入したのは、正解だったのかもしれない。
「……キマイラや、キュクロップスが大量にいたのだったな。それに比べればというところか。そんな経験したいとは思わんが。――おい、お前達は知っていたのか、この者がエルフだという事を?」
「い、いいいえ! ツヴァイ様……いえ、ツヴァイはいつもローブを纏って、顔もほとんど隠している事が多かったので……エルフを見た事はないので、ずっと人間だと思っておりました……」
「隠していたという事か。まぁ、なんにせよ捕まえて情報を引き出すべきだな」
ヴェンツェルさんの問いに、首を横に振って否定する研究者達。
隠していたから知らなかったのは仕方ないにしても、そんなよくわからない怪しい相手の持って来た書簡なんかを信じないで欲しいと思うのは、俺だけだろうか?
まぁ、可視化するほどの魔力を持っているから、国の要職に就いていると信じ込ませやすかったとかもあるのかな? その辺りは、ヴェンツェルさん達が聞き出すのに任せよう。
事情聴取とか、俺の仕事じゃないし、やった事もないからできないだろうからね。
「あ、ヴェンツェルさん。布かなにか、ありますか? 端切れでもいいんですけど……」
「布? いや、さすがに持ってはいないな。あの者達を拘束するのにも、着ていた服を利用させてもらったくらいだ」
戦闘になる事がわかりきっている場所へ突入するのに、余計な物は持っていないか……仕方ない。
それじゃ、ちょっと失礼して……。
「ひっ! な、何を……!」
「慌てなくても、攻撃したりはしませんよ……っと、これで良し」
「リク殿、何をしているのだ?」
俺が近付いて来た事で、研究者さん達は怯えていたけど……何もしないから安心して下さいねー。
声をかけながら、ヴェンツェルさんが使わず捨てられた白衣を拾って一部を破り、適当な大きさの布にする。
破った布を持って立ち上がり、ツヴァイの元へ近寄る俺に問いかけるヴェンツェルさん。
仰向けに倒れているから、顔が下か……ひっくり返してっと……!
「よっと……えぇと、鉱山にいた男の事なんですけど、そいつ、拘束して運び出そうとする際に、ソフィーが協力してくれる人を呼びに行ったんです。でも、その間に気が付いたらしく、口に仕込んでいた毒を自分で飲み込んで……」
「自害した……か。成る程、だから布を噛ませるのだな」
「はい。話を聞くにしても、死なれちゃいけませんからね。プライドが高そうだったので、自分で……とする人かどうかわかりませんが、念のため」
ツヴァイの体をひっくり返し、仰向けにしながらヴェンツェルさん説明。
イオスのように口の中に毒を仕込んでいたりしたらいけないし、あるかどうかを調べるにしても、この場ではできないからね。
とりあえず、エルフらしい端正な顔の口に布を突っ込み、さらに長めの白衣の端切れを使って猿ぐつわのようにして、仕込み毒を使わせないようにする。
やり過ぎると息ができなくなるかもしれないから、口を閉じて歯を食いしばれないように調節して……と……これで大丈夫だろう。
口の中に仕込んだ毒なんて、大体奥歯を噛みしめたり、歯を噛み合わせたら毒が出るようにしてあるとかだろうし、強く噛めないようにしておけばいいかなと思う。
最初から口に含んでいたりとかだったら、喋っている時に飲み込んでしまう可能性もあるから、そんなところかな。
ちなみにツヴァイの顔や体は、所々酷い火傷を負っていたけど、焼けただれているという風でもなく息もしているようだから命に別状はなさそうだ。
フレイムスピリットのフレイちゃん、任せた甲斐があって俺よりも絶妙な力加減をしてくれていた――。
10
あなたにおすすめの小説
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!
胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。
主に5大国家から成り立つ大陸である。
この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。
この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。
かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。
※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!)
※1話当たり、1200~2000文字前後です。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる