744 / 1,955
捕まえた男の取り調べに参加
しおりを挟む翌朝、朝食後に周囲を見回りつつ、拘束した人達を見張っている兵士さん達を労ったり、地下施設調査の進捗を聞いたりしているうちに、日が高くなって来た頃、昨日ヴェンツェルさんと一緒に男を追いかけていた兵士さんが駆け寄り、報告される。
「リク様、昨日の男が意識を取り戻しました。魔法を使っていたと言われた男は昨夜目覚めたので、既にこちらで調べを進めていますが……いかがいたしますか?」
「そうですね……ヴェンツェルさんやマルクスさんはなんと?」
「リク様がよろしければ、ツヴァイの時のように取り調べに参加してもらうように、との事です」
ふむ……魔法を使っていた方の男は、兵士さんの中に紛れ込んでいたわけではないので、大した事は聞けそうにない。
なので、昨日の食後に起きたと報告を受けたけど、そちらの取り調べは任せていたんだけど……もう一人の男の方はどうするかな? ヴェンツェルさん達は俺が取り調べに参加して欲しいと考えていそうだなぁ……よし。
「わかりました、その男の所へ案内して下さい。俺も取り調べに参加します。――あ、モニカさん。俺はちょっと取り調べに参加して来るので、こっちは任せるよ?」
「わかったわ。エルサちゃんの事は任せてー」
「了解しました。では、こちらです……」
取り調べに参加する事にして、兵士さんに案内をお願いするとともに、一緒にいたエルサを抱いているモニカさんに言って、その場を離れる。
今、モニカさん達はソフィーやフィリーナも含めて、なぜかフィネさんの斧を投げるためにはという講義を受けている最中だった。
自分が普段使っていない武器だから、興味があるんだろうけど……エルサを抱いていながら料理に使用している、包丁代わりの大型ナイフを持っているモニカさんが、ちょっとだけ怖い。
フィネさんから習って、そのナイフを投げるようになったりしなければいいなぁ……なんて考えながら、兵士さんに連れられて建物へ向かった。
ちなみにフィリーナは魔法だけでなく弓を使った事があるらしく、何かを飛ばすという事に慣れているのもあって興味があるようだ。
ソフィーの方は戦いの手段として、相手の意表を突くにはと考えているようだから、剣を使う以外にもナイフを投げたりなどの戦闘法の一つとして学んでいるみたいだね……相変わらず熱心だなぁ。
「ヴェンツェル様、リク様をお連れ致しました」
「おぉ、リク殿。来てくれたか」
「ヴェンツェルさん。今日はヴェンツェルさんが取り調べなんですね?」
「マルクスは兵士達に指示を出すので忙しいからな。それに、リク殿が捕まえたとはいえ、私も追いかけた身だ。部下に紛れ込んでいた、という者でもあるから話は聞いておかないとな」
建物の中、昨日ツヴァイを相手に話をした部屋の前で、ヴェンツェルさんが待っていた。
逃げた男の取り調べは、昨日と同じこの部屋でやるんだろう……ツヴァイは別の部屋に運ばれたか、厳重に見張りを付けて王都へ連行する準備中といったところかな。
取り調べとか不慣れな俺だから、マルクスさんがいない代わりにヴェンツェルさんがいてくれるなら、ありがたい。
マルクスさんと違って、拳を使って情報を聞き出そうとしそうな気もするけど……なんて考えていたら、ヴェンツェルさんが眉根を寄せて難しい顔、どうしたんだろう?
「……リク殿に来てもらったが、実際はそこまで注意して話を聞く程でもなさそうなのが、少々惜しいな。いざとなれば、私の拳を唸らせようとしていたのだが……」
あ、やっぱり拳を使って、とかは考えていたんですね。
握り締めたヴェンツェルさんの拳は、確かに人間の手なんだけど、金属の籠手を着けているのもあって、殴られたら痛いじゃ済まなさそうな気配を感じて、苦笑い。
俺の身長程はある大剣を振り回していたからなぁ……そんな力で殴られたら、籠手なんてなくても骨が折れるくらいはしそう……実際に突入した時に武装した人間を殴り飛ばして鈍い音とかしてたから。
「まぁ、使わないに越したことはありませんよね。という事は?」
「昨日、リク殿にやられたのが堪えたのか、それとも観念しただけなのか……とにかく知っている事は話す、という構えのようだな」
それはまた……ワイバーンの鎧を着て勝ち誇っていた昨日とは、随分な変わりようだね。
まぁ、鎧は俺とモニカさんで脱がしたし、頼る物がないので抵抗しても無駄だとかんがえたのかもしれない。
「あ、そういえば……口の中に毒を仕込まれていたりは?」
「ツヴァイと同じだな。意識を失っている間に調べたが、同じように仕込まれていた。もちろん、既に取り除いてある」
「それなら、話している途中で……なんて事にもならないので安心ですね」
取り除く方法は、聞かない。
だって、奥歯を噛みしめたら毒が滲み出るなんて、歯そのものに仕込まれているだろうし、それを大した器具もないここで取り除くなんて……考えられる方法は多くないから。
……あまり考えたくないね。
「とにかく、ツヴァイからは得られなかった情報を持っているかもしれないからな」
「そうですね。とりあえず話を聞いてみましょう」
ヴェンツェルさんと頷き合って、部屋の中に入る。
昨日のツヴァイがそうだったように、顔には複数の魔法具が着けられていて魔法を使う事はできず、声を出せなくなっている。
さらに、椅子に座らされて縛られて、逃げないように重い物に繋がれたうえで兵士さんに見張られている……ツヴァイとほぼ変わらない状況だ。
違う事と言えば、上半身が裸になっているくらいだ……って、なんで裸なんだろう? 男だから、視線に困るとかそういう事はないけど。
「服の中に、武器を仕込んでいる可能性もあるからな。念のために調べた。ツヴァイの方は調べて服を着せたが、今回は服を着せる前にリクが来たからな」
「あー、そういう……」
部屋の中で拘束されている男を見た俺の表情から、何を考えたのか察したヴェンツェルさんが説明してくれた。
まぁ、服の中に武器を仕込んだりっていう、暗器っていうだっけ? そういった物を仕込んでいる可能性を考慮して、脱がして調べるくらいはしてもおかしくないか。
これが女性相手だったら、色々と危険な方向に話が転びそうだったけど、相手が男だから問題は……多分ない。
うん、ないって事にしておこう……なんて、兵士さん達が喋る事ができるように、魔法具を外しているのを見ながら思考の彼方へ放り出す。
「お、お前は……! ひっ! こっちに近付くな化け物!」
「化け物とはひどいなぁ……」
「リク殿、話しは聞いたが……何をしたんだ?」
「昨日話した通り、みぞおちを殴ったくらいですけど。あ、剣に剣をぶつけて折りましたね」
「……通常、武器破壊は重量の違う武器で狙うか、盾を使ってやるものだが……リク殿の剣なら可能か。しかしまぁ、一番の理由は殴った事だろうな。ワイバーンの鎧相手に、素手で殴って拳が無事なんて、私でも不可能だ」
「えぇ……そういうものですか……?」
0
あなたにおすすめの小説
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!
胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。
主に5大国家から成り立つ大陸である。
この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。
この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。
かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。
※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!)
※1話当たり、1200~2000文字前後です。
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜
難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」
高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。
だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや——
「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」
「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」
剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める!
魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」
魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」
神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」
次々と編み出される新技術に、世界は驚愕!
やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め——
「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」
最強の頭脳戦が今、幕を開ける——!
これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語!
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる