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神も性格や考え方は千差万別

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 半透明だから失礼かもしれないけど、幽霊みたいな感じかなぁって思っていたんだけど、ユノをしっかりと抱き締めていたから、触れらえる事を少しだけ疑問に感じた。
 幽霊じゃないけど魔物でも、ゴーストとかは魔法は当たるけど物理的な剣を当てたりはできないから、それと似たような感じかなとも。
 けど、魔力だとか顕現したとか……よくわからないけど、ちゃんと存在しているから触れられるって事らしい。
 ユノに教えられたとこで、ようやく俺に視線を向けたアルセイス様が、ポーズをとるようにしながら俺に近付く。

 攫ったというのは人聞きが悪いし、そんな事をした覚えがないので否定しながらも、視線を逸らしながら触れるのは遠慮しておいた。
 アルセイス様、肌は緑色だけど体は女性っぽいし、なんというか……何も着ていないようにも見えるからね。
 一応、魔力なのかなんなのか、薄いベールのようなものが体を覆っており、アルセイス様自身が半透明な事もあって裸を見ているという程ではないけども。

「結構初心なのねぇ? ユノ様を攫ったから、それなりに女好きなのかと思ったけど……英雄色を好む、みたいな?」
「色を好んだ覚えはありませんし、節操のない事をしようとも思っていません。それに、そもそも俺はユノを攫ったりなんて……」
「そうなの。リクが攫ったんじゃないの。私が自分からリクについて行ったの!」
「……お菓子をあげて、こっちへ来い見たいな感じかしら? 駄目よーユノ様、知らない男にお菓子で釣られてついて行ったら―」
「子共扱いしないの! 私は子供じゃないの、お菓子なんかでは釣られないの!」
「……お菓子や食べ物には、すぐ飛びつくのだわ」
「エルサ、思ってても今は言わない方がいいと思うぞ?」

 失礼な、というより濡れ衣を着せられている気がするので、ユノを攫ったというのはしっかり否定しておく……ついでに、色を好んでいるわけではない事も。
 ユノも俺を庇うように、攫ったわけじゃないと否定してくれるが、アルセイス様から見れば知らない男にホイホイついて行った子供、のように見えるのかもしれない。
 ……からかっているだけかな?
 子供扱いに憤慨するユノに、ポツリと小さくエルサが俺の頭にくっ付いたまま漏らしたけど、今は止めておいた方がいいと注意しておいた。
 変に拗れてユノが本気で怒ったら、大変だからな。

「あらあらごめんなさいねー。どうにも今のユノ様の姿に考えが引きずられてしまって……そうよねー、ユノ様私より年上だものねー。ちゃんと、熟女として扱わないといけなかったわねー」
「私はおばさんじゃないのー!」

 アルセイス様、完全にユノをからかうモードに入っているっぽい……久しぶりにあった事と、ユノがムキになるので面白いんだろう。
 というか、神様にも年齢ってあったんだなぁ……まぁ、先に神様として生まれたとかがあるからかもしれないけど。
 年齢という概念があるのに少し驚いた。

「もう、私の事はいいから、本題に入るの! ちゃんとリクを連れて来たの!」
「そうねー、これ以上からかうとユノ様を怒らせそうだし、そうなったら私なんて軽く消し飛びそうだしねー」
「……アルセイス様は、このような性格をなされていたのですね……」

 楽しそうに話しているアルセイス様を見ながら、アルネが再びショックを受けている様子。
 おそらく、今までエルフが厳粛に祀っていた神様が、ユノをからかったり、喋り方が軽かったりと想像と違ったためだろう。
 まぁ、祀る側は想像しかできない以上、実際とは違っても仕方のない事なんだろうけど。

「あらー? 私は別にエルフ達に根暗な性格だって、伝えていないはずだけどー? こういうの、結構あるのよねー。仕方ない事だけど……神だからって、厳格だとか厳かな存在ってわけでもないのよー」
「まぁ、ユノも神様らしい性格じゃないですからね……」
「そ、そうなのか……そうだな、確かにどういった雰囲気だったり性格だったりというのは、こちら側が勝手に想像していた事だ。伝わっている伝承だけで判断しているにすぎんか……」
「そうそう、そうなのよー。どうしても直接じゃないと伝わらない部分なのよねー。もう少し、神が世界に働きかけられるようになったり、干渉できれば違うんだろうけど、こればっかりはしかったないかしらねー」
「神が自由に世界へ干渉できるようになったら、もっと混沌とした世界ができてしまうの。だから仕方ないの。私だって、自由に干渉できないから、今こうなっているの。楽しいけど……」

 ユノを例えに出すと、納得してくれたアルネ。
 まぁ、完全に子供っぽい行動や性格をしているように見えるし、神様だって千差万別というか絶対に厳格で真面目な性格をしていなければいけない、という決まりはない。
 あるのは、祀る側の先入観のようなものばかりだろう。
 日本だって、八百万の神々というくらい沢山の神様がいると信じられていたりするが、それだって全てが真面目な神様ばかりじゃない。

 日本神話とか、それこそ人間と似たような性格や行動をする神様も沢山いるからね。
 まぁ、あれは人間側が解釈しやすいような内容だったり、勝手な想像がほとんどなんだろうけど……例えば偉人と言われる人だって、こういう人柄だったと伝えられてはいても、実際に会ってみないと本当の人柄がわからなかったりもする。
 結局、あの人はこうだ、この人はあぁだ、という考えに意味はあまりないのかもしれない。
 って、色々と余計な事を考えてしまったけど、今はこんな事を考えている場合じゃなかった。

「神様も、世界に干渉するに決まりがあったりするんですか?」
「もちろん、神にだって色々な考えがあるからねー。それこそ、人間はいらないという神もいれば、生き物すらいらないという神もいるわ。極端な神だと、世界そのものがいらないと言う神だってね。逆に、エルフを創った私のように、生き物を慈しんで世界を見守るのが好きと言う神だっているのよ」
「だから神がそれぞれ自由に干渉し始めたら、反発し合って混沌になるの。そしてそれを好きだって言う神もいるの。だから、神にはそれぞれ干渉力があって、それを越える事はできないようになっているの」

 人間やエルフだってそうだが、それぞれに違う考えを持っているからこそ、反発しあったり違う方向性になったりするって事か。
 世界そのものが滅茶苦茶にならないよう、神々が自由に干渉してしまわないように、制約のようなものがあるらしい。

「創造神であるユノ様だって、直接干渉する権限は限られているからねー」
「え、創造神?」
「そう呼ばれていた事もあるの」
「まぁ、今はその創造神の中身というかなんというか、部分的に切り離されて、その力はほとんど失っているようだけどねー。……だから、かわいらしい姿なのかしら?」
「今の姿は、リクの好みなの!」
「ちょっとユノ、それは変な誤解が……」
「やっぱりそうなのねー。そういう目的でユノ様を攫ったのねー?」
「いえいえいえいえ、違いますから。変な目的とか好みとかじゃないですから! 初めて会った時のユノが、今の姿だっただけで……!」


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