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アマリーラさんからの提案
しおりを挟むすっぽ抜けて空を舞う、巨大なモグラ……ヒミズデマモグに戸惑いながらも、それでも槍を握って肉薄するアマリーラさん。
リネルトさんは……飛びのいた反動で、剣を繰り出す事はできなさそうだ。
なら、俺も参加しないと。
「はぁ!」
「せいやぁ!」
「JYAAAA!!」
落ちて来るヒミズデマモグに対し、先程と同じように胴体へと剣を振る。
アマリーラさんは、足下が沈む程の踏み込みで槍を突き出した……小柄なのに想像以上の一撃だと思う。
だけど、二人の武器がヒミズデマモグに当っても、やはり体毛に阻まれて有効な一撃にはならない……いや、アマリーラさんの槍は、少し深めに刺さっているから、体毛の奥には届いているのかもしれない。
それでも、怪我らしい怪我すら負わせることはできず、目の前でヒミズデマモグの体が通り過ぎ、再び地中へと凄い速さで逃げて行った。
「くっ、また逃した! 申し訳ありません、リク様……」
「いえ、あの体毛は厄介なので仕方ないですよ。……けど、次は必ず仕留めます」
「ですが、私の槍も一点への攻撃ではそれなりのつもりだったのですけど、通用しませんでしたし、その剣では……」
悔しそうにするアマリーラさんは、槍が体に届かなかった事を謝って来る。
でも、硬い体毛を抜けたら今度は柔らかい体毛に受け止められて、分厚いせいで中々体に届かないのだから仕方ない。
ただ、もう加減する必要はなさそうだし、次こそは大丈夫だ。
すっぽ抜けたりしないようにするのが、一番気を付けないといけないけどね。
「リク様~、凄く力があるのですね~。あの巨体を引っ張り出すなんて~」
「ははは、まぁ。でも、ヒミズデマモグが飛び出そうとしていたからってのもありますよ」
さすがに、地中に潜ろうとしていたり、抵抗されていたらあれ程簡単には引きずり出せなかっただろう。
巨体なだけあって重さもあるし……細いのに意外と触角が丈夫だった事には驚いたけども。
「……リク様、次は私に任せて下さいませんか?」
「アマリーラさん?」
次こそは気を付けて……と考えていたら、アマリーラさんからの提案。
もしかして、任せるっていうのはさっき俺が触角を捕まえて、引きずり出した事だろうか?
「先程はリク様の行動に驚きはしましたが……力に頼った戦いなら、私の得意とするところです。リネルトには速度で負けますが、力では誰にも負けない自信があります!」
「お~、アマリーラさん、リク様にも負けないって自信満々です~」
「あ、いや、ちがっ! り、リク様、決してそのような事は……! ただ、力にはそれなりに自信があるというだけで、リク様には敵うとは……」
「あはは、大丈夫ですよ。わかりました。それじゃあ次はアマリーラさんに任せます。俺ももう少し早く、ヒミズデマモグの反応がわかるように頑張りますね」
「は、はい! 必ず、リク様の期待に応えられるよう、全力を尽くします!」
意気込んで頷くアマリーラさん……リネルトさんに茶化されはしたけど、その表情からは確かに自信が窺える。
大柄なリネルトさんが身軽な動きを武器にして、小柄なアマリーラさんが力を武器にとは、中々ちぐはぐな気がするけど、人は見た目に寄らないって事なんだろう。
ましてや、獣人の二人だから、人間より見た目によらない身体能力でもおかしくはない、のかな? 詳しく知らないし、なんとなくだけど。
「でも、危ないと感じたらすぐに避けて下さいね? 引っ張り出すって事は、ヒミズデマモグが地中から飛び出すのに口を開けているはずですから」
「リク様からそう言われて光栄です! ですが、多少の危険は承知のうえです、お任せください!」
「いや、えっと……はぁ、まぁいいか」
目の前で怪我とかして欲しくないから、できるだけ危険な事は避けて欲しかったんだけど……むしろ俺が気遣った事で逆にやる気を増してしまった。
魔物と戦っているんだから、そんな事ばかり言ってちゃいけないんだろうけど……もし危ないようなら、結界を張ってあげればなんとかなると思う。
「それじゃ、ヒミズデマモグを発見したら教えます。アマリーラさんとリネルトさんは一応、目視での確認をお願いします」
「はっ! いつでも動けるよう準備しておきます」
「了解しました~」
引っ張り出すのはアマリーラさんに任せるとして、まずはできるだけ早く地表に近付いたヒミズデマモグを見つけなければいけない。
少しでも早く見つけられれば、それだけアマリーラさんが動く猶予もできるから。
探知魔法を使い、ヒミズデマモグの反応を探って集中。
アマリーラさんは、姿勢を低く……どころか槍を持っていない右手を地面に付き、細長い尻尾をピンと伸ばしてお尻を上げて、左手に持つ槍は背中に……ちょっといびつなクラウチングスタートみたいだ。
耳を忙しなく動かして、顔も同じくキョロキョロさせているから、言われた通り周囲の警戒をしてくれているんだろう。
まぁ、独特の臨戦態勢だろうし、地面に近い場所から見た方が地中から出て来る、ヒミズデマモグの触角を見つけやすいかもしれないね。
リネルトさんは鞘に納めた剣の柄を握って、いつでも抜けるようにしている……間延びした返事だったけど、こちらもこちらでやる気のようだ。
「……うーん」
「出て、来ませんね」
俺に引っ張り出されたのが影響したのか、しばらくヒミズデマモグの反応がない。
傷を負わせたわけじゃないけど、逃げたとか……?
いや、さっきの事があって警戒しているんだと思う……思いたい。
ここまで来て逃がしたとなったら、悔しい。
「逃がしたくは、ないなぁ……」
ここで逃したら、別の場所で別の人を襲うかもしれない。
新しい農地の近くで、せっかく結界を張ってこれから多くの人が頑張ろうって時に、魔物による被害を出すのは嫌だ。
「リク、どうせなら逃げられないようにするのだわ」
「エルサ? でも、どうやって……相手は地中にいるんだぞ? どれだけ深くを潜行しているのかわからないけど、さすがに結界で覆うなんて事もできないし……」
警戒して、ジリジリと焦れていたら、頭にくっ付いているエルサが簡単な事のように言って来る。
ただ、地中の中だからその方法が難しい。
地上だと、周囲を結界で覆ってやれば逃げられなくなるけど、さすがに地中だと土に遮られて結界を張れない。
穴が掘ってあれば別だけど……ヒミズデマモグの堀った穴は、さすがに見えないからわからないし。
「土を固めた事があったのだわ。あれを使うのだわ。掘るなんて事ができないように、カッチカチにしてやるのだわ」
「……成る程、ヒミズデマモグでもほれない硬い土を作って、そこから出られないようにするのか。でも、さすがに数メートルくらいだろうし、それより深く潜られたら……」
「多分大丈夫なのだわ。あれにそんな事を考える知恵はないのだわ。きっと、掘れない出られないとわかれば、逃げる気をなくすのだわー」
「うーん、いまいち確信が得られないけど……逃げられるよしマシか。やってみるよ」
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